- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103331827
作品紹介・あらすじ
依存症、発達障害、認知症……この世に「完璧な脳」などあり得ない! 二児のパパになった脳研究者と、難病で死にかけた作家が再会。「病んでいるから愛おしい」因果な脳の不思議な魅力に迫る。なぜ認知症の老人は夫や妻の顔を忘れるのか? 最新科学は遺伝病を根絶できるのか? 天才の37%は発達障害、女性に多い「隠れ自閉スペクトラム症」など、「正常と異常」「健康と病気」の境界を問い直す、哲学する脳科学!
感想・レビュー・書評
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「正常とは何か?」という、ともすればタブーで偏見とも言われてしまう事柄に臆することなく踏み込んでいる。
人は誰でも数十種類の何らかの異常を抱えているらしい。
異常とは大多数の特徴を標準と定義した時に、それとは違うこと。
ならば、同じ「異常」を持った人達が集まれば正常になる?
他人とはちょっと違ういわゆる"個性"が正常から異常となる境界はどこ?
他人と違う部分に妙にこだわってしまう凝り性だと自覚している池谷先生:自閉スペクトラム症と診断された。
中村うさぎさんも同様。
こんな二人だから、あえて空気読まない発言(それ言っちゃう?)もあって面白い。
発達障害、注意欠如・多動性障害、アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症、認知症。
昔はなかった病名?がいろいろと出てくるし定義も変わってくる。
自閉症とアスペルガー症候群は「自閉スペクトラム症」にまとめられた。
医学的な解釈が変わると認定される者の数が増減する。「障害者は社会が作るもの」とも言える。
小中学生(ごく普通のクラス)の6.5%が支援が必要な発達障害であるらしい。
ならば大人たちも同じくらいの比率でそうなんだろう。
だが、それは一つの傾向にすぎない。
異常と決めつけてはいけない。
完璧な人間なんて一人もいないはずだから。
世の中には何の躊躇もなく他人を「異常者」呼ばわりする人々がいる。
そういう人達は、疑うこともなく自分は正常だと確信しているのでしょうね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2階開架書架:WL300/IKE:https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410164031
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性格や行動パターンを自他共に型にはめてみたいと思う人は多いと思うし、性格判断や占いの類が衰えないのはその証左であろう。しかし本書にもあるように境界は決めづらいものだし、自身も自閉スペクトラム症ではないかと思った。しかし差別や偏見につながることは減らさないといけない。正しい理解は必要である。二人の対談形式のシリーズはこれまでも読んでいて楽しいし、好奇心を満たしてくれる。2023.8.8
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やはりお二方の対談は面白いし勉強になります。
前作の「脳はこんなに悩ましい」に引き続き、認知に関する知見が広がる対談でした。 -
脳科学者の池谷先生と中村うさぎさんの対談本。「脳はこんなに悩ましい」の第2弾。目を惹く表紙のイラストは植田工さん(茂木健一郎さんのお弟子さんだったアーティスト)。
2人の知性と奇矯が光る。たくさん考えてきた2人だからこその芯をくった言葉に、「正常とは何か」について考えさせられる。
ドクターXの診断を受ける章がとてもよかった。 -
加齢に伴って抑制のタガが外れることで脳回路の興奮性が高まる
共感はとても原始的な行動原理
共感するときと自分が痛みを感じるときは前帯状皮質という脳部位が活性化する
オキシトシンは他者の気持ちへの共感を高める
オキシトシンに似た作用の物質はアルコール
右側の側頭頭長接合部を刺激すると手が動いたと錯覚する
目から直接入ってくる視覚情報は3%以下
統合失調症の人は自己モニタリング機能が壊れているせいで自分の考えが他人の言葉として聞こえる(夢を見ている状態と同じ)
認知症の人は感情が希薄になっていくが悪い感情だけは残りやすい
知能=人間が理解できないもの
生まれてから3歳までの間に生まれ持った神経細胞の7割を殺してしまう
退屈は人間にとって電気ショック以上の苦痛
動物の脳も抽象性に反応する
記憶障害が起きて特定の記憶が抜け落ちると残った情報に辻褄を合わせるように別な人を演じるようになる(人格とは記憶の連続の中に生じる)
認知症の人は時間という概念が消えている(過去の記憶と今起きていることの辻褄が合わなくなる)
記憶があって周りの変化に気付く
3%にあたる55の疾患に生まれた月と統計的な関係があることが分かった
統合失調症の人はトキソプラズマの抗体を持っている人が多い
直観力は大脳基底核が司っている
天才で健常だと考えられる人は6.5%
頭長間溝が委縮している人は数学音痴(全体の10%)
サヴァン症候群の場合、特定の機能が脳のほかの領域の機能を侵食している
麻酔薬はなぜ効くのか原理がよくわかっていない -
脳科学に興味を持ち、初めて手に取った一冊
対話形式で進行する本は目から鱗の脳の常識や機能について深く知ることになった
アルコールと脳の関係、普通の定義、障害、病気に関する脳の働きと周囲(一般世間)の認識、三位一体脳説を基にした動物脳と人間脳の違い などとても興味深いないようだった
終盤は自閉症スペクトルの話だけで作者同士が盛り上がる展開のため、私はあまり楽しめなかった
しかしこの本のそうした部分が筆者二人の特異性を示してると感じた -
面白かった。
自閉スペクトラム症についての記述が多い。
男女比は4:1だが表面上の数値でしかなく性染色体に集中してるわけではないので男女の差がそこまで大きくない可能性がある。
生まれた季節によって罹りやすい病気や寿命がある話は興味深い。 -
とにかく目から鱗!脳って面白い!
本書にて著者のお二人共に自閉スペクトラム症であることが医師から診断されることから「障害」ではなく類い稀ない「個性」だと思った。 -
自閉症スペクトラムの話が続いた後、ご両人も該当者だったというオチ。
私も思い当たる点が結構あって、限りなくそちらに近いと実感する。
ショックなような、ホッとするような。
このタイプの人は本質は何かにとことんこだわるらしい。
生きにくさは多数派の人のふりをして、社会性を養うことでかなりマシになるらしい。学習ね。
しかし昔読んだ、全く違う人の書いた本では、この特徴は単なる内向性ということで紹介されていたように思う。普通って何なのよ?