花に埋もれる

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319658

作品紹介・あらすじ

恋が、私の身体を変えていく――ベストアルバム的短編集、ここに誕生! 彼氏よりソファの肌触りを愛する女性。身体から出た美しい石を交わし合う恋人たち。憧れ、執着、およそ恋に似た感情が幻想を呼び起こし、世界の色さえ変容させる――イギリスの老舗文芸誌「GRANTA」に掲載された「ふるえる」から、単行本初収録となるR-18文学賞受賞作までを網羅。著者の原点にして頂点の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 人に薦められて、彩瀬さん初読み。
    第158回と第166回の2回直木賞候補になったというが、この短編集に関しては独特の世界観があって、どちらかというと芥川賞っぽいな、と。

    「ベストアルバム的短編集」ってあまりピンとこない表現だけど、素晴らしい作品をとり揃えた短編集ということなんだろう。
    確かに、収録された6編は全編捨て駒なし。息つく間もないほど濃密だ。

    最初の2編はジャブ。でもパンチが思いの外重くて焦っていたところ、3編目「マイ・マイマイ」で目にも止まらぬ速さのストレートが飛んできていきなりダウンさせられた。
    そのあとは4連続ダウンでもう立てません。
    なす術もなくノックアウトです。

    とくに「ふるえる」と「花を眩む」が好きだな。
    恋心を「石」で表したり、花はがんみたいに人の寿命を短くしていくものだったり。
    奇抜な発想のようだけど、すごく的を射ているというか、「ああそうだよね」としっくりきてしまうところが素晴らしい。

    ソファー、靴、カタツムリ、石、花と人。
    フィット感。安らぎと艶かしさ。

    すごい才能だわ。
    彩瀬さんの他の作品も読んでみたい。

    ♫Save Me/Aimee Mann(1999)

  • 彩瀬まるさん ベストアルバム的短編集とのこと
    ストーリーの中に メタファー的(だと思うのだけど)モノや身体変容を独特に差し込んでいる
    多少不思議系でもある
    この短編集集は、ベストと言われるだけあり
    モノと人、ストーリーがとてもしっくり

    「なめらかなくぼみ」 小説新潮2021
    選りすぐったソファの肌触りを愛する女
    …というより 自分の愛でるモノを尊重してくれるパートナーが良いんだよね

    「二十三センチの祝福」 文芸あねもね2011
    同じアパートに住む女の傷んだ靴を直す男
    安く傷んだ靴は彼女そのもの
    都会で傷つき疲れた女性を優しく送る大人の男

    「マイ、マイマイ」 オール読み物2018
    大学生同士のそれっぽい恋
    好きだったような気がする男の子
    いろんな側面を見切ったらさよならでも良いらしい

    「ふるえる」 文藝2022
    イギリス文芸誌「GRANTA」掲載
    誰かを愛しく思うと体内にできる石
    石の幻想的な存在と 石について語る登場人物の現実的な言動が相まって面白い
    あくまで恋愛は現実にある

    「マグノリアの夫」 小説新潮2022
    マグノリアは木蓮
    世界的音楽家のカクシゴの夫
    演劇に生きるが裏切られた父親への憧憬と固執
    感動的な木蓮の役を演じたあと 木蓮そのものとなる
    かなり勇気ある設定だけど 木蓮がその生態で語ってくる これが一番好き

    「花に眩む」 小説新潮2010
    第9回 女による女のためのR-18文学賞 読者賞受賞作
    これは この受賞作の中でも異質ですよね
    わかるようなさっぱりのような
    身体に植物が生えるという(全員ね、家族によって植物が決まる)世界観
    それが何を著そうとしてるのかわからんかった
    まあ次行きます

    • 1Q84O1さん
      おびさんがいいねしてくれるから確認したら、私は彩瀬さんと相性悪いみたいです…w
      あまり読んでませんが…(^.^;
      おびさんがいいねしてくれるから確認したら、私は彩瀬さんと相性悪いみたいです…w
      あまり読んでませんが…(^.^;
      2024/05/10
    • おびのりさん
      悪そうだよね
      でも私も今三冊目で苦しい
      純文学なんだろうね
      モノが喋り始めたら無理になった
      悪そうだよね
      でも私も今三冊目で苦しい
      純文学なんだろうね
      モノが喋り始めたら無理になった
      2024/05/11
    • 1Q84O1さん
      他にも読んでみたいのがあったと思いますが、2冊目を読んだとこで一度やめたんでしょうね…
      そこから手にとってないみたいです…w
      他にも読んでみたいのがあったと思いますが、2冊目を読んだとこで一度やめたんでしょうね…
      そこから手にとってないみたいです…w
      2024/05/11
  •  彩瀬まるさんの最新作であるこちらを読んでみました。ベストアルバム的短編集ということで、6編のそれぞれ独立した内容になっています。

    ソファをこよなく愛する女性、身体から出た石を交換することで愛を交わす恋人たち…どこか、歪んでしまっているけれどそこには純粋な愛がある…それがこの作品のテーマなんだと感じました。「なめらかなくぼみ」と「二十三センチの祝福」はよかったのだけども、そのあとの作品が…この世界観、キライじゃないけど…私の読解力と想像力が追いつきませんでした。修業が足りないのかしら(;・∀・)あくまで個人的な感想です。

    • かなさん
      1Q84O1さん、こんばんは!
      私も子供が小さいときは
      夏休みってなんであるんだろ??
      もう~早く終わってぇ…(ノД`)・゜・。
      そ...
      1Q84O1さん、こんばんは!
      私も子供が小さいときは
      夏休みってなんであるんだろ??
      もう~早く終わってぇ…(ノД`)・゜・。
      そう思ってました…!!

      が、今子供たちが大きくなってみると、
      騒がしい夏休みが、懐かしくなりますよ!
      子供たちと夏休みを一緒に楽しめるのは、
      子供が小さいうちだけだったと実感しますよ。
      1Q84O1さん、子供たちと一緒に過ごせる夏休み、
      楽しみましょう!
      読書は、夏休み明けてからでも、ネ(*^-^*)
      2023/08/12
    • 1Q84O1さん
      かなさん、子育ての先輩にそう言われると説得力があります!
      確かに、子供が小さいうちだけですよね…
      子供たちがまだ一緒に遊んでくれるうちは楽し...
      かなさん、子育ての先輩にそう言われると説得力があります!
      確かに、子供が小さいうちだけですよね…
      子供たちがまだ一緒に遊んでくれるうちは楽しみます(*^▽^*)
      けど、子供たちよ!朝は少し静かに、パパをもう少し寝かて〜w
      2023/08/12
    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます!
      思わずヨシタケシンスケさんの
      「ふまんがあります」を思い出しました(^O^)/
      パパ、頑張って...
      1Q84O1さん、おはようございます!
      思わずヨシタケシンスケさんの
      「ふまんがあります」を思い出しました(^O^)/
      パパ、頑張って!!
      2023/08/13
  • とても不思議で艶かしい世界観だった。
    人も花も草も、全てがこの地球上で同じ時に生を受けた同じ"生き物"。
    生きとし生けるものは、最終的には土に還るのみ。
    彩瀬さんの創造の世界は何故かいつも説得力があって、自分の肌にも花の芽が出てくるのではないか、とつい腕を見てしまいそうになる。

    地球上で生きていくことは楽しいことばかりでなく、辛いことも多い。
    「忘れたということは、それほど覚えておきたいことでもなかったのかもしれない」
    そんな風にやり過ごしていければ。最後はみんな土へ還るのだから、と思うと不思議と妙な安心感も生まれる。

    芳香の強い花々に埋もれて息苦しくなるような短編集。安らかな眠りを誘うのは、やはりもっと柔らかでほのかな香りのものがいい。
    今の私にはちょっと刺激が強すぎたみたい。酔ってしまいそうだ。

  • 村上春樹、平野啓一郎に次ぐ快挙! イギリスの老舗文芸誌「GRANTA」に掲載された短編を含む、彩瀬まるの最新作『花に埋もれる』が3月に発売決定|株式会社新潮社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000843.000047877.html

    彩瀬まる 『花に埋もれる』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/331965/

  • 艶っぽく、ちょっと怖さも感じるような短編集。
    かなり不思議な世界観だったけど、気がつけば引きこまれていた。
    「二十三センチの祝福」「マグノリアの夫」が好みだった。

  • だんだんと不思議な世界が強くなってくる短編集。少し切ない感じ、でも優しく穏やかな気持ちになる。これまで読んだ彩瀬まるさんの本は現実的な話が多かったので、こういう不思議な感じのも読めて嬉しかった。

    • ゆーき本さん
      ひとみんさん はじめまして*ˊᵕˋ*
      彩瀬まるさん 好きです!
      妖しく不思議な話がお好きでしたら
      「くちなし」と「朝が来るまでそばにいる」も...
      ひとみんさん はじめまして*ˊᵕˋ*
      彩瀬まるさん 好きです!
      妖しく不思議な話がお好きでしたら
      「くちなし」と「朝が来るまでそばにいる」も
      オススメです(* ˊᵕˋ )ノ
      2023/10/20
    • ひとみんさん
      ゆーき本さん、はじめまして!
      オススメありがとうございます。
      不思議な雰囲気が気に入ったのでオススメとても嬉しいです!読んでみます。
      ゆーき本さん、はじめまして!
      オススメありがとうございます。
      不思議な雰囲気が気に入ったのでオススメとても嬉しいです!読んでみます。
      2023/10/20
  • 艶かしくて妖しくて、でも哀しくて。読むほどに絡め取られていくような、沼にゆっくり沈められていくような彩瀬ワールド、今回もしっかり堪能いたしました。
    「二十三センチの祝福」は約十年振りの再読。アンソロジー初出のこの短編が、初めて読んだ彩瀬作品であった。読者を優しく切なく包み込む、独特のしっとり感。最近の短編と比べると初々しいなと感じるものの、久し振りに初読時の「この人何者!?」という感想を思い出し、あれ以来ずっとファンとして作品をコンスタントに読み続けていられていることのありがたさを噛みしめている。
    今回一番好きなのは「マグノリアの夫」。植物モチーフ・官能・ファンタジー。彩瀬さんがこれまで描いてきたテーマで紡いだ、哀しく美しいラブストーリーだ。
    「ふるえる」はイギリスの老舗文芸誌に掲載…すごいなぁ。海外の読者もどんどん魅了していって欲しい。

  • 人間だとか、恋だとか
    とても幻想的に描かれているのに
    胸に迫ってくるのは、リアルで飾り気のない
    人の心だ。
    自分の心や身体を持て余したり、コントロールできなくてもがいても
    花も人もいつかは枯れて、大地へと帰っていく。
    耽美的な世界を漂うように、ゆらりゆらりと物語を楽しみました。

  • 「骨を彩る」に続く彩瀬さん作品、2冊目の
    チャレンジ。
    骨を彩るを超えるほどではなかったけど、
    彩瀬さんの持つ独特の世界観がよく著されていたと思う。人間だけではなく、何か物質?、物?を使って巧みに感情を表現する…ということに長けている。

    たとえば、なめらかなくぼみ〜のアームソファ、
    ノワール。二十三センチの祝福〜は、靴。
    まるで、主人公のそばにいる立派な登場人物のような役割で、ちゃんと読者に共感を与えてくれる。
    ちょっと不思議な世界観もぴったりハマる。

    マイ、マイマイ、マグノリアの夫、花に眩む…
    後半の3つのお話が良かった。

    マイ、マイマイ〜
    友梨愛がお母さんに「お父さんを選んだ理由」を尋ねると、忘れちゃったとお母さんは答える。
    「なんでも忘れていくんだね」に対して、
    「そうよ。毎日なにかしら楽しくて、あんたと父さんが元気ならなんでもいいの」
    なかなかの名言!私もそう思う!と強く共感。

    マグノリアの夫〜
    しみじみと、閉じた人だと思う。思うこと、望むことすべて内側にしまい込む。どこかで破綻しそうなのに、なまじ器用なものだから、秘したまま日常生活を回せてしまう。
    郁人を表した表現、なんかすごくピッタリきた。
    閉じた人…うん、納得。すごいね、彩瀬さん。
    「すごくよくできた小説の…ああ、この一行はなにか降りてきている。光っている。多くの人に知られて残っていく。もちろん自分の内部にも爪痕を残す一行だって、即座にわかって身震いする、あの感じ。とても特別なものに立ち会っている、という喜び」
    編集者の早見さんの言葉だけど、これもわかる。
    読書の楽しみはそういうことだ。
    自分にぴったりとくる、一文に出会えた時、確かに光って見える、出会えた!という喜びを感じる。
    不倫を断罪する、陸に対し、早見さんは
    「人間に強固な一貫性や明快さを求める、一本気な方、内部に矛盾を溜めこまない方、残酷さの一種」と返す。これもまた真理だ。
    「畏怖は恋や性欲に結びつき、誤作動を起こす」
    美しいものに対する畏怖、存在するだろうな。
    ここもまた私はひとつの正解を言葉にしてもらったような気がした。
    花に眩む〜
    「私はしまのふわふわの髪を撫でて、寝息に甘えるようにして眠った。」
    これだけで、しまに対する気持ちがわかる。すごく上手い表現だと思う。その安心感や心地よさ、どこか自分にも覚えがある、そんな気持ちにさせてくれる。
    「手足を絡め、体のオウトツをひたりと重ねてしまと眠るのは、身体中の細胞をあたためた蜜で満たされるような陶酔があった」
    こんな感覚、あるよなあ。上手いなあ。あたためた蜜はかなり緩やかに満遍なく、身体中に行き渡り恍惚とするだろうなあ。ちょっと、エロチックかも…
    「行かないで、を言わないようにしたら「好きです」の同じ言葉しかでなかった。」
    泣けるように切ない思いが胸を掠める。すごくすごく良い表現で好き。
    このお話自体が、もともと切ない。人の体に植物がはびこり、いずれ植物へと戻り、人としての一生を終える…という設定。でも、こんな風に一生を終えるのも一つの選択肢としたら、良いのかもな、とも考えた。ちゃんと自分に自覚があること、自然に帰ると思えば、自分亡き後の世界もそんなに怖くないかもしれない。
    ラストの「くろぐろと湿った土へ片手を当てる。人の肌とおなじ温度だった。」
    この終わりはカッコいい。すごく良い。
    私も自分の生きる生活の場をよく掃除して、好きな景色には感謝して暮らしていきたい。
    道端の一本の花は、もしかしたら誰かの姿なのかもしれないのだから。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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