- Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103318521
作品紹介・あらすじ
しぶとく生きよ! 諦めることを最も嫌った幕臣、大鳥圭介の知られざる生涯! 「負けてたまるか」大政奉還の江戸城で独り気を吐く男がいた。貪欲な学究精神で、彗星のごとく歩兵奉行に上り詰めた大鳥圭介である。わずか四尺九寸(一四九センチ)の短軀にみなぎる反骨の気概と仏式軍学の圧倒的知識。実戦未経験ながら江戸から五稜郭まで幾度も窮地を切り抜け、土方歳三や榎本武揚にも信頼された指揮官を描く。
感想・レビュー・書評
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戊辰戦争、箱館戦争を戦い抜いた、大鳥圭介の物語。
武士の義が一番だった世の中で、
こんなに柔軟で、身分なども念頭になく
未来の国のことを考えていた人が龍馬の他にもいたなんて…。
私の中の、見つけた感がハンパないです。
もっと保身ばかりの、考えがグラグラな人だと思ってましたから。
この伊東潤さんの大鳥圭介像にゾッコンです。
幕府軍の敗戦、他の物語でも、何だかあまりにも
あっけない感じがしていましたが、
こんな色々が重なって、不運な方不運な方に
どんどん行ってしまっていたんですね。
それを言い訳にしない、大鳥圭介。
人のせいにもせず、逃げる者も恨まない。
どんな場面でも諦めずにとことん考え込むこの姿勢。
…この頃仕事で、無理無理、出来ないを連発していた私。
深く反省です。諦めなければどこかに突破口がと
敗戦敗戦でも諦めない大鳥さんに教えられた気がします。
しばらく、「たまるか、たまるか」を
口癖にしていこうと思う一冊です。
どんな幕末の物語を読んでも、土方さんは格好良い。
でもこの物語の大鳥さんは脇の土方さんより
男らしく感じました。
この物語を読んでから、五稜郭に行けばよかったです。
土方さんの写真に「イケメンだ~~」と
ミーハー気分で見学したのは不謹慎でした。
こんなに多くの、こんなに思いの詰まった場所。
改めてまた訪れてみたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
死んでたまるか 諦めない大鳥圭介の覚悟
2015/4/8付日本経済新聞 夕刊
大鳥圭介といえば、『燃えよ剣』(司馬遼太郎)では、実戦経験がないにもかかわらず、仏式幕軍の将校にまで登りつめたことを鼻にかけ、土方歳三のことを「あれは剣術屋だよ」と見下す、敵役的存在。本書はその大鳥を主人公とした初の長篇(へん)。
2人のどちらが格好良く描かれているかといえば、それは土方の方で、しかしながら、そこには作者の周到な計算がある。
決してブレない土方は、苦悶(くもん)しつつも官軍と戦う大鳥を映し出す鏡であり、やがてその鏡に映っている大鳥の像は、次第に土方を脇へと追いやり、実像として(ヽヽヽヽヽ)の主役の座を勝ち取っていく。
両者の違いは、滅びの美学=死地を求める土方と、決して諦めない=敗北を喫しても生を続ける覚悟を決めた大鳥との差異だ。
先日、東日本大震災4周年のニュースで、母親を見捨てざるを得なかった女生徒が、犠牲者たちの祭壇の前で、自分の心情を朗読するのを見て、涙が止まらなかった。そして同時に、思わずこれだ、と本書の大鳥を思わずにいられなかった。生き残る側を引き受け、負の力を正に転換した時、見えてくるのは何か。堂々たる傑作である。
(縄田一男) -
久々に涙させられた作品だった。大鳥圭介が土方歳三から「お前たちは生き延びろ」と言われるシーンは圧巻だった。通勤電車で計らずも落涙…
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「死んでたまるか」の感想文
(1)私は今まで 幕末から維新にかけての物語をいくつか読んできました。
特に 西郷隆盛とか大久保利通に関する 薩摩の偉人の話を戊辰戦争とか 西南戦争を舞台に薩摩からの見方での小説を読んできたわけです。
(2)この「死んでたまるか」 は伊東潤先生が書かれた小説です。
日本初の金属活字を作るなど 貪欲な学究精神で彗星のごとく歩兵奉行に上り詰めた大鳥圭介を 主人公にした 東北、箱舘戊辰戦争に関する物語です。
わずか149cm の短い 体にみなぎる武士の反骨とフランス式 軍学の圧倒的知識で実戦未経験ながら 陣頭指揮をとり、幕末最後の激戦を戦い抜き、怒り、笑い、涙する 快男児を描くまさに、 熱血歴史長編で、面白すぎて、2週間で読み切りました。自分はこの方については、ほとんど予備知識がなかったです。
(3)この本は、帯にあるように「諦めることを最も嫌った男 」
主人公が言動で示している通り、人間は諦める、無理とか思うと、思考停止になるということに大感動です。自分も少しでも、参考にしていきたいと思った。
(4)榎本武揚、新選組の土方歳三との関係を細かく描写しています。
もともと、榎本武揚 とか 土方歳三の名前は知っていましたが、 彼らは戊辰戦争の東北の場面で出番が多い人だとわかり、意外でした。特に 東北の会津戦争、さらには函館戦争について色々と知識を得ることができました。
特に 函館戦争の時に、 榎本武揚 が蝦夷帝国を作るという野望に燃えて突き進んでいくわけですが、それは立派なことであったと思います。しかし、この頃になると戦争を何のためにしているのかということが、主人公を始め幕軍幹部にも、戦っている戦闘員にもわからなくなってきたのではないかと推察します。
(5)戦争はあってはならないと思います。
徳川幕府に恩顧のある人たちが、徳川慶喜が上野で謹慎してるにもかかわらず、自分たちは北に向かって官軍部隊と戦争をやって、ほぼほぼ負け戦で終わってしまう。本当に悲しいことだと思います。やはり 戦争はあってはならないと思います。
(6)幕末・明治維新に対する感情の変化
自分は今まで 薩摩や 西郷隆盛 などから見た幕末と明治維新、 戊辰戦争は官軍が正しく 西郷隆盛が正しいという身びいきな見方をしていました。
しかし、 やはり 薩摩など官軍も江戸の薩摩藩邸焼き討ち事件 のように相手をそそのかせて相手がやったというような汚いやり方をしたり、色々と残虐なことをしていたと分かりました。現在のウクライナ紛争のロシアの偽旗作戦とか、あるいは日清戦争、日露戦争、その後の 満州事変 、上海事変における日本軍のトリガーによる中国 侵略などに通じるものがあるのかと思って愕然としています。
(7)2023夏にこの傑作本に出会えて幸福です。
とにかく、新たな発見や考え方の変化もあって、この本を読んで本当に良かったと思いました。
以上
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「何事も『無理だ、駄目だ』と思ってしまうと、人の思考はそこで止まる。頭を絞れば知恵などいくらでも湧き出てくるのだ」負け戦を続けた大鳥圭介だからこそ、説得力のある言葉だ。土方も相変わらず格好良い。函館の地で乱れ飛ぶ武士の矜恃。あまりにも愚直な彼らの様々な「幕引き」は、終演ではなく、始まりの準備にも思えるほどに美しい。伊藤潤さんは面白いや。
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さほど名前の知られていない大鳥圭介(兵庫県民の俺も知らなかった)を主人公とした戊辰戦争物語。あくまでもフィクションなんでしょうけど、実直で真っ直ぐな主人公の生き方には素直に感動します。これを読むと薩長の有名人達が悪者のように思えてくるから不思議です(笑。機会があれば、薩長側から見た戊辰戦争の物語を読んでみたい。
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20240121
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2019.6.5完了
幕末の話は好きではない。
新政府軍に比べて幕府側が弱すぎるからだが、幕府側の酷い状況に耐えられない。
最後まで読んだけど、五稜郭あたりの腹をくくったあたりからは読めたかな。 -
2018.02.11
最近、伊藤潤の明治初期の作品にはまってる。大島圭介を初めて知った。 -
水滸伝のように英傑がどんどん倒れていく敗走劇。幕末の歴史は嫌いだったがこれほど面白い戊辰戦争の小説なら楽しんで読める!