常設展示室: Permanent Collection

著者 :
  • 新潮社
3.72
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本棚登録 : 2408
感想 : 266
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317548

作品紹介・あらすじ

パリ、NY、東京。世界のどこかに、あなたが出会うべき絵がきっとある。その絵は、いつでもあなたを待っている。人生の岐路に立つ人たちが辿り着いた世界各地の美術館。巡り会う、運命を変える一枚とは――。故郷から遠く離れたNYで憧れの職に就いた美青は、ピカソの画集に夢中になる弱視の少女と出会うが……(「群青 The Color of Life」)ほか。アート小説の第一人者が描く、極上の6篇。

感想・レビュー・書評

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  • マハさんのアート小説は、やはり大好きです。読み終わると涙したお話でも爽快感があり無性に美術館に行きたくなります。短編集ですが、画家本人ではなくアートに関わる側のお話。
    『群青』と『道』が特に好きです。道は、話の先が読めたけど涙が止まりませんでした。よかったぁ。

    • yuka♡さん
      はじめまして。コメントありがとうございます♪
      道は、涙が止まりませんでしたね〜。
      早くコロナが終息してまた美術館巡りもしたいなぁ。
      でも、意...
      はじめまして。コメントありがとうございます♪
      道は、涙が止まりませんでしたね〜。
      早くコロナが終息してまた美術館巡りもしたいなぁ。
      でも、意外に引きこもって本を読んでいるのも大好きなんです♡
      また、オススメの本があったら教えてくださいねー!
      2021/09/19
    • yyさん
      yuka♡ さん

      たくさんの いいね とフォローをありがとうございます。
      私も、yuka♡ さんと同じです。
      家でゆっくり本を読む...
      yuka♡ さん

      たくさんの いいね とフォローをありがとうございます。
      私も、yuka♡ さんと同じです。
      家でゆっくり本を読む時間、最高ですよね☆彡

      中山七里さん、私も好きです。
      これからもよろしくお願いします。
      2021/09/19
    • yuka♡さん
      yyさんの本棚を見て思いました!七里さんも好きですね!?
      よろしくお願いします♡
      yyさんの本棚を見て思いました!七里さんも好きですね!?
      よろしくお願いします♡
      2021/09/19
  • 「ゴッホ展 特別展示」、「ルーブル美術館展」、「尾形光琳展」などなど、気になる特別展示があれば美術館に足を運ぶものの常設している展示室目当てに美術館に行ったことは、今のところない……。
    それでもチケット半券に常設展示室の入場券が付いていれば、行ってみる。だが、特別展を観た興奮が冷めていない状態なので、趣がガラッと変わる展開に興奮がついてこない。今、ほんの少し前まで頭の中が、特別展のアート、アーティストでいっぱいになっている、それに特別展のような華やかさいがなく、静かに鑑賞する環境に戸惑っていることも私にとっては一因のように思う。
     
    お気に入りの美術館なら、常設展示室の展示品もそこそこ記憶している。そのため特別展示で時間がない時や、感動していっぱい、いっぱいの時などは『まぁ、また今度来た時にみようかなぁ』と思って、スキップしてしまう。
    もちろん、常設展示室にも好きなアーティストの作品もいくつか展示されているので、チケット半券で楽しむ価値はあると思っている。
    例えば、国立西洋美術館にはモネの『舟遊び』、ゴッホの『ばら』があるし、京都国立近代美術館にはマティスの『鏡の前の青いドレス』など好きな作品もあり、この作品だけでも見る価値はあるはずなのだが、ただ、実際のところ、『いつでも行ける』、『いつでも見れる』という安心感に負けてしまっているというところだ。

     特別展示ではたいてい人の頭を見に行ったのではないかと思うほど、たくさんの人が集まり、列を作って、順番に鑑賞する。もう少し見ていたいと思っても後ろの人に気を使いながらで、落ち着いて見れないときもあり。そう、わかってはいるのだが、『この時しかみれない!』と思うとそちらを優先してしまう。

    つまりは、私は人の心理としてありがちな『限定』、『今しか』などという言葉に弱い性格である。アートを理解しているのではなくて、アートを見て自分は教養があると酔いしれているだけ、いわゆる自己満足だけなのだと、ミーハーな性格なのだ。それは本作の主人公の思いと自分の気持ちを比較した後、尚更感じたところであった。
     
    本作『常設展示室』は、6編からなる短編集。
    それぞれにテーマがあるが全て、主人公は、女性で、テーマの絵画にまつわる人生模様が紡まれている。

    何気ない、ふとした時に今まで気になっていた心の溝を絵画にまつわる思いが蓋をする。埋めるのではなくて、蓋をするそんなイメージをもった。
     
    『群青  The Color of Life』
    主人公・美青は、日本を離れニューヨークでキュレーターとして働く。訪れた眼科でピカソの絵に夢中になる1人の少女と出会う。

    ピカソの〈盲人の食事〉のメッセージは美青と少女の未来への励まし。そしてこの絵によって少女の未来の一か所に微かな光が差し込んでいる絵を私は頭の中で描いた。
     
    『デルフトの眺望 A View of Delft』
    主人公・七月生(なづき)は、現代アートを扱う大手キャラリーの営業部長。介護付高齢者住宅〈あじさいの家〉に入居している父を
    ななおに代わって弟・七生(ナナオ)が世話をしている。

    オランダのマウリッツハイス美術館に所蔵されているフェルメールの〈デルフトの眺望〉。画面の手前と奥の遠近強調のためにくもを使って、手前は雲の影で近景を奥は日が当たって明るくこの暗明により奥行きが感じられる。

    このポストカードがなづなとナナオの絆を再び繋ぐ予感をにおわせる。
    
『マドンナ Madonna』
    なづきの部下・橘あおいは、年をとった母親になかなか優しくできずに戸惑う。ラファエロの〈大公の聖母〉を見て母との約束を思い出す。

    パラティーナ美術館所蔵のラファエロの〈大公の聖母〉。何年か前にフェレンツェに行った際に見た。あまりにも美しすぎる。
    あおいが聖母を見て母を思い出したので、私自身も今後、聖母を見て自分の母を思い出してしまうだろうと思った。子供にとっては母親こそが聖母なのかもしれない。

    『薔薇色の人生 La Vie en Rose』
    とある県のパスポート受付窓口で勤務する柏原多恵子と御手洗由智の出会い。

    国立西洋美術館のフィンセント・ファン・ゴッホ〈ばら〉。パスポート受付に飾られている色紙が色を放った瞬間だと思った。
    まぁ、多恵子には申し訳ないけど、見ず知らずの人を安易に信頼しすぎかも…

    『豪奢 Luxe』
    主人公・下倉紗季はフランスでIT企業家で紗季の不倫相手・谷地哲郎の到着を待っていたが、急な仕事で来れなくなる。

    オルセー美術館所蔵のアンリ・マティス〈豪奢〉。

    作品の好き、嫌いではなくて、購入する作品だから、金銭的な価値に留まり、愛着やメンタル的な価値は感じないのだろう。紗季にとっての価値のあるものが不倫相手なのだろうかと、避難してしまった。

    『道 La Strada』
    美術評論家として活躍する主人公・貴田翠が審査官として参加した美術賞で、ある作品に不思議な感覚を持つ。

    「道」と聞いて、思い出すのは、やはり京都国立近代美術館の東山魁夷のあおの『道』。いつ見ても、真っ直ぐな道の先にある風景を想像してしまう。生誕110年の時の図録を開けて、しばらく眺めていた。

    常設展示室の作品を鑑賞できる余裕を持って、美術館を訪れたい。また、常設展示室の作品を鑑賞できる目を持ちたい。

  • まず、本のカバーが素敵。
    図書館で、お目当ての原田マハの本が貸し出されていることを知って、
    ちょっとがっかり。
    でも、カバーに魅了されてこの本を借りることにしました。
    読んでから、もう一度 表紙をゆっくり眺めました。 
    「あっ!」 フェルメールの『デルフトの眺望』! 
    ということは、この絵の反対側には、
    あの『真珠の耳飾りの少女』が飾られていたにちがいありません。

    6枚の絵にまつわる物語、それぞれが独立した短編になっています。
    どの物語も洒落ていて、『池に投げ込まれた小石のように
    ポチャリと小さなしぶきを上げて心の底に沈みます(マハさんの記述引用)』。
    そのうちの半分、三つの物語が家族にまつわるちょっと切ない物語。
    そして、6話すべてが爽やかなストーリー。

    読んでいる間も読んだ後も、豊かな時の中にいられて幸せです。

  • 記憶の中に、あるいは心の中に一枚の「絵画」がある人たちを主人公に据えた短編集です

    短編集ってなかなかどれもこれも面白かった!ということは少ないのでどうしても全体的な評価は低くなる傾向にありますよね

    自分は本作は題名が良かったな〜と思いました
    『常設展示室』
    初めはきっとその人の心や記憶を『常設展示室』と捉えてるのではないのかなと感じました
    そこにある一枚の絵、常に展示してありますがいつもいつも見に行くわけではありません
    逆に常に展示してあるからこそ普段は特別展のほうに目が行ってしまい、振り返ることも少ない、でもいつもそこにあってふとした瞬間に思い出し改めて見返してほっとしたり、初心に戻ったり、新たな旅立ちの契機になったり

    そしてはたと思い当たりました
    もしかすると心の中にある「絵」って自分の親や兄弟、子どもや近しい人のことなんじゃないか、『常設展示室』とはまさに「家族」のことなんじゃないかと
    いつもそこにあって普段は省みることもすくなくても、忘れていた大切ななにかを思い出させてくれる存在
    『常設展示室』すなわち「家族」

    そんなことを思いました

  • 原田さんの美術愛が感じられる短編集。
    出てくる絵画は実在するその美術館で実際に常設展示されている作品だった。(どんな絵か調べながら読んだ)

    よくわからないけど、見てたら元気になるような絵、私もそんな作品を見つけたいな。

    それにしても…主人公の周りには、なんだか自分勝手な人が多いなぁ。笑

    “この世でもっとも贅沢なこと。それは、豪華なものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだ。” (p.146)

    「全部捨てた。そうしたら、道が見えてきた。この絵を見ていると、そんなふうに感じます」(p.179)

    私も、脱ぎ捨てる勇気を持ちたい。
    最後の「道」の話がやはり良かった。東山魁夷の作品、実際に見てみたい。

    • アールグレイさん
      こんにちは♪
      お久しぶりです。

      この本はお正月に帰省した弟に買わせた本の中の一冊。
      さっさと息子が先に読んでしまいました。
      (`¢´)
      !...
      こんにちは♪
      お久しぶりです。

      この本はお正月に帰省した弟に買わせた本の中の一冊。
      さっさと息子が先に読んでしまいました。
      (`¢´)
      !!それより、先ほど見つけてしまいました!今月末海外引越って言うのは何ですか?
      衣都さんは私の本棚の参考になっているのです。
      (ノД`)理由を教えて頂けないでしょうか?
      忙しいかとは思いますが、寂しいです。
      (。。)ペコリ

      2022/01/16
    • アールグレイさん
      先ほどは失礼致しました。
      もし、人の心情に土足で入っているようでしたらお許し頂けますか。
      本はどこへ行っても、読めますよね!
      先ほどは失礼致しました。
      もし、人の心情に土足で入っているようでしたらお許し頂けますか。
      本はどこへ行っても、読めますよね!
      2022/01/16
    • 衣紅*海外在住さん
      ゆうママさん、お久しぶりです!
      そうなんです。
      あるブク友さんが名前欄に一言近況を載せていて、いいなと思ってわたしも付けてみました。笑
      「近...
      ゆうママさん、お久しぶりです!
      そうなんです。
      あるブク友さんが名前欄に一言近況を載せていて、いいなと思ってわたしも付けてみました。笑
      「近況」と書いたブックリストを少し前に作成していますので、よければそこも覗いてみてください☺︎ 文字数の関係で詳しく載せれていませんが。
      なので少しばたばたしています。読書とブクログはペースが落ちると思いますが引き続き続ける予定で、電子書籍デビューをすることになるかなぁと思います。
      お気遣いありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします(*^^*)
      2022/01/16
  • 「群青The Color of life」
    「デルフトの眺望A View of Delft」
    「マドンナMadonna」
    「薔薇色の人生La Vie en Rose」
    「豪奢Luxe」
    「道La Strada」
    の6作からなる短篇集。(「デルフトの眺望」と「マドンナ」は連作)
    どれも素敵なタイトルばかりなので、書き留めておきました。

    「デルフトの眺望」に出てきた画家フェルメールの回顧展が数年前、私の住んでいる市内であり、鑑賞にゆき、ポスターを一枚だけ買ったのを、今も部屋に飾ってあるので、すごく愛着を感じました。その絵は「デルフトの眺望」ではないのですが、検索してみると、「デルフトの眺望」も確かに鑑賞した記憶があり感激しました。
    原田マハさんのアート系の作品は最近読み始めたばかりですが、こういうことがあると嬉しいです。
    「デルフトの眺望」も買っておけばよかったと思うことしきりでした。
    今度、何か展覧会に行ったときは、カードなどは記念に多めに買っておこうと思いました。


    家の近所にある県立美術館にも常設展示室があるので、そのうちまた、散歩がてら足を運びたいと思いました。

    あと、「道」はやっぱり涙腺がゆるむ作品でした。

    • まことさん
      行きたくなります!
      カードもホント買っておけばよかったです。(^^♪
      「道」はマハさんの「異邦人」のラストを思い起こしました。
      行きたくなります!
      カードもホント買っておけばよかったです。(^^♪
      「道」はマハさんの「異邦人」のラストを思い起こしました。
      2019/06/06
  • 一枚の絵が運命を変える。
    その人にとってかけがえのない、たった一枚の絵。
    真っ直ぐ立ってじっと見つめる。
    その一枚から感じ取れるのは光、力、生、夢。
    見る者と絵との二人きりの至福のひととき。

    常設展示室とは、特に期限を設けずいつも見ることができる展示のことをいう。
    その絵が見たい、という意志さえあれば絵はいつでも見る者を待っていてくれる。
    そんな一枚に私も出逢いたくなる。
    美術館へは特別展には行くけれど、たまには常設展示室へも足を運んでみようかな。
    キュレーター・マハさんの、絵に対する愛を感じる短編集だった。
    特に『群青』『デルフトの眺望』『道』が好き。

    ほんとうの感動は作品を観終わったあとについてくる。たとえばその作品を観たのが美術館なら、そこを出て、食事をして、電車に乗り、帰宅し、眠る直前まで、観た人の一日を豊かにし続ける。それが名作というものだ。

    マハ先生の言葉を胸に。
    こんな感動を得られる絵に出逢ってみたい。

  • なんだろう、とても癒された。
    アートとそれぞれ短編の主人公を繋ぐ。どんな何気ない日常もアートと繋がることでドラマチックに変えてくれる原田マハさんの小説は元気をくれる。
    自分の人生も自分の捉え方次第で変わるのだと教えてくれる。
    明日への活力となり、癒しとなるお話をさまざまなアプローチから描く、想像力の深さに感服するとともに、その想像の世界に誘われる心地よさを感じて私はまたマハさんの本を読んでしまうんだと思う。

  • 絵を通じて人をつなぐ物語。
    短編集だから、少しの暇な時間でも気楽に読める。
    心の温まる話なので、ちょっとした気分転換になれる。
    起承転結が激しいわけではないけど、手にとって読んでみたくなるそんなショートストーリーが詰まってます。

  • 短編なので、これからとか、様々な展開を予想してしまい、物足りない。原田マハはやっぱり長編がいい。でも面白かった。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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