どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103294214

作品紹介・あらすじ

産業用でも、人工知能を持つ自立型でもない。異能のロボット学者が目指したのは、限りなく人間に近い「ジェミノイド」。そして、人間のミニマルデザインから生まれた最新型「テレノイド」、「エルフォイド」まで-。人型ロボット=アンドロイドを通して人間の本質に迫る全く新しい試み。

感想・レビュー・書評

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  • 特に面白かったのは石黒先生がずっと同じ服を着ているというのと、アンドロイドに寄せて美容整形をされたという話。
    自分をよく知るのは所詮他人というあたりや、人間は人間を最も認識しやすくできているというのも興味深かった。
    アンドロイド演劇の場面はなんだかしみじみ想像出来てしまって、感動しました。

  • 完全なるアンドロイド、すなわち「人」を創るとはどういうことか、実際に「人創り」に取り組む石黒氏ならではの示唆に富む一冊。

    技術的・学術的な難しい話はあまりなく、「人間らしさとは?」という哲学書に近い。発展途上の研究だからこそ、研究過程の気づきが追体験でき、自分の実体験に置き換えて考えると非常に説得力がある。人はどこに人間らしさを感じるのか、「自分」を演じるのは自分よりむしろ他人のほうが上手など、実際に「人」を創ろうとした彼だからこそ気づき得た本質が描かれている。

    完璧に近づくほど微妙な差異が違和感を生み出す「不気味の谷」や、完璧すぎると「人間らしさが失われる」など、差別の根源や不完全を補完する想像力という人間の本質にあっさり触れている点は天才的な洞察力だ。

    とはいえ堅苦しい本ではなく、(筆者は至って真剣なのだが)全体的にユーモアが溢れていて、特に理想的な自分であるアンドロイドを時間が経って逆に意識する話は面白い。勢い余って整形までしている(笑)。

    石黒氏はCNN「世界を変える8人の天才」の一人に選ばれているが、なぜ選ばれたかがよく分かる。是非石黒氏とお会いしてみたいと思わせる一冊だ。(本当は石黒氏よりジェミノイドFのほうと会ってみたい・・・)

  • もし自分と全く同じ姿形の人間がいたら‥‥。
    そう考えたことは、一度ならずみんな必ずあるはず!?
    それをアンドロイドで挑戦しようとしたのがこの一冊。それを通して人間の本質に迫ろうとした全く新しい試み。

  •  ロボット研究を通り越して石黒浩研究になりつつあります。「石黒浩」カテゴリも新たに作りました。

     それはともかく、この本は石黒氏が自分で書いてらっしゃる。ご本人の顔の彫りの深さに比して、なんとなくふわふわした文体という印象を受けました。
     素人が読めない難解な文体ではないので、ゴーストライターを使う必要はなさそうに思えますが、やっぱりお忙しいからなのでしょうかね。

     あと、この本にはジェミノイドFのモデルになったかたの情報や感想が結構あって、それでなにをしようというわけでもないけど参考になりました。
     石黒先生はなんといってもちょっと変わってらっしゃるから。やっぱり普通の方の感想も聞きたいです。

     ジェミノイドシリーズはシリコンという素材のせいか、メイクのひと(ハリウッドで特殊メイクをされてた方なのだそうです)の技術的な癖なのかわからないけど、実物に上品さが加わっている気がします。それが演出のしかたによっては神々しさにつながっていくのかなと考えます。

     ためしにほかのメイクさんに造顔をお願いして、同じ効果が出るかどうか実験してもらいたいなと思います。

     攻殻機動隊シリーズでもあったけど、やっぱり「造顔師」の腕って大事なんじゃないかな。
    石黒先生の顔を整形したほうが安い早いという議論もわかりますけど、何年かおきに変化していく先生の顔をアンドロイドに映したほうが、研究としては興味深かったんじゃないでしょうか。

  • マッドサイエンティスト ロボット学者 石黒浩は、
    自分と同じアンドロイド(ヒトモドキ;人造人間)を作り、
    自分とは何かを 考察していく。
    それは、ロボットを作るという技術論ではなく、
    自分と同じものが存在することで、自分とは何か?
    を客観的に見ることができるようになる。
    そして、老いていかないアンドロイドに、
    どう立ち向かうのか?
    結果として、5年前に作った自分の状態に戻ろうと
    筋力トレーニングをして、美容整形まで受けて、
    5年前の自分よりも、若返ろうとする。

    自分とは何か?自分とはどうあるべきか?
    自分とどう付き合うのか?
    その関係性を改めて捉えることで、
    ロボット学の文化や哲学まで考察することになる。

    モデルFと同じ アンドロイドを作り、
    そして、どのような服を着せ、
    その中で 美しいとはどういうことかを考察する。
    平均的な顔では、人間らしく見えない。
    そして、そのアンドロイドは、演劇に出演し、
    詩を朗読する。そこには、透明感のある人間が、生まれた。

    そして、すべて削ぎ落とした人間ロボットとは?
    ミニマム人間アンドロイドは、抱くと言う行為で
    存在価値を増す。
    2014年の出来事なので、さらに進化していることだろう。

  • 今年の2月に所属する研究室で、私たち修士1年生は「2017年のホンモノ/ニセモノ」というテーマで公開講座を開催しました。ヴァーチャルリアリティ等技術の発達により、私たちはホンモノから得る際と同じような感覚を、テクノロジーによって再現されたモノから得ることが可能になりました。例えば、専用のゴーグルをかければ、あたかも古代遺跡の中にいるように感じられる、などです。その際、遺跡にいるように思っている感覚はホンモノと言えるのか、それともニセモノでしかないのか、その疑問が今回の公開講座の出発点でした。
    公開講座の開催準備をするにあたり、私がテクノロジーと、ホンモノ/ニセモノの関係について勉強しようと思って手に取ったのがこの本です。
    著者である、大阪大学の石黒浩教授をご存知でしょうか。自身とそっくりのアンドロイド、「ジェミノイド」を開発した方です。本書では、石黒教授がジェミノイドを開発し、実際に使用する過程で得られた体験がたくさん書かれています。読んでいて、テクノロジーによって「ホンモノの人間」と定義できる範囲は今後さらに広がるのではないかと思いました。
    本書の内容で特に興味深かったのが、ジェミノイドを遠隔操作しているうちに、ジェミノイドがあたかも自身の本当の身体であるかのように錯覚してしまったという経験です。自身のホンモノの身体は触れられていないにもかかわらず、遠隔地にいるジェミノイドに触れられると、実際に触れられたような感覚がするというのです。まさにテクノロジーによって、生身の身体以外も、「ホンモノ」の自分の身体のように感じているということですよね。
    また、その他にも、ジェミノイドの方が現在の自身よりも若くてスマートに見えるために、ダイエットや整形によってホンモノの自分の方がジェミノイドに合わせてしまった体験も書かれており、ジェミノイドがアイデンティティにも影響を与えるような存在であることがわかります。
    現在、石黒教授は、「ホンモノの人間」のような複雑さや多様性を表現することができるアンドロイドを生み出そうとしています。それは一体どのような要素を必要とするのでしょうか。今後の石黒教授の研究も楽しみです。

    文責:アオイ(人文社会研究科 文化資源学研究専攻所属)

    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=2002977289

  • 「アンドロイド」(人間類似型ロボット)、「サロゲート」(外部の機器を脳に直接つなぎ操作する)。アンドロイドの可能性はロボット工学にとどまらず、認知科学や脳科学や哲学とも深く結び付き、「人間とは何か?」さらには「自分とは何か?」という深い問いにつながっていくはずである。
    さらに最終的には皮膚の触感も大切な要素である。とあるがそこまで必要かなぁ?○○産業がよだれを垂らして喜びそうな研究である

  • ロボットだけれども
    会話は人が担当する
    そんなロボットの未来が語られた本

    大きな携帯としてロボットを用いるアイデア
    不気味の谷の話
    ロボットと恋愛できるかという話

    新しいアイデアに満ち溢れた本
    いずれ著者のイメージする未来が来ると予感させる

  • 見た目が人にそっくりなアンドロイド:ジェミノイドを作った石黒先生の本です。
    技術的なことはあまり書かれていないのが残念ですが、研究を進めるなかで「人間とはなにか?」「自分とはなにか?」について、著者の発見、考察が述べられていて、とても興味深い内容でした。

  • 石黒先生のアンドロイド自体は前からよく見かけるなと思っていたのですが、実際どんな研究をなさっているのか知らなかったので手に取りました。
    外見上精巧に見えることばかりを追及していくのではなく、人間らしさを追求する。それによってアンドロイドと相対する人間またアンドロイドを操作する人間がどういった感情を抱くのか。近未来にはこういった経験が増えていくのだろうか、とわくわくと不思議な思いで読みました。
    ヒトのミニマルデザイン、テレノイドの話も面白かったです。人間を人間たらしめているものは何なのか、これからも面白い発見がたくさん生まれそうで楽しみです。

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著者プロフィール

石黒 浩
ロボット学者、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(栄誉教授)。1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(工学博士)後、京都大学大学院情報学研究科助教授、大阪大学大学院工学研究科教授を経て、2009年より現職。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。オーフス大学(デンマーク)名誉博士。遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞、2015年文部科学大臣表彰及びシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞、2020年立石賞受賞。『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』(講談社現代新書)、『どうすれば「人」 を創れるか アンドロイドになった私』(新潮文庫)、『ロボットと人間 人とは何か』(岩波新書)など著書多数。

「2022年 『ロボット学者が語る「いのち」と「こころ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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