緋の河

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (534ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277255

作品紹介・あらすじ

男として生まれた。でも、あのおねえさんみたいな、きれいな女の人になりたいな――。蔑みの視線も、親も先生も、誰に何を言われても関係ない。「どうせなるのなら、この世にないものにおなりよ」。その言葉が、生きる糧になった。カルーセル麻紀さんのことを、いつか絶対に書きたかった、という熱い思いが物語から溢れ出る。

感想・レビュー・書評

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  • カルーセル麻紀を初めてTVで観たのはいつだったか
    子供心になんて綺麗な女の人だと思ったのを覚えています。
    今まで語られなかった彼女の人生を想像で書く
    虚構に宿る真実を見てみたくて小説を書く
    同じ釧路出身の作家・桜木紫乃のカルーセル麻紀へのリスペクトが作品から伝わってきました。

    差別や偏見が当たり前の時代に生きてきた彼女の
    幼少期からTV出演が決まった時期までが書かれています。

    過去で、美しく、孤独で、切なく、劇的で、潔く、笑えて、泣ける、ザッツ・エンターテインメント‼︎
    帯の煽り文句に嘘はなかった。


    • おびのりさん
      11PMだったかもしれない。初めて見たのは。
      11PMだったかもしれない。初めて見たのは。
      2023/03/18
    • みんみんさん
      あ…バレた?
      11PM観てる子供だったの( ̄▽ ̄)
      あとウィークエンダーね笑笑
      あ…バレた?
      11PM観てる子供だったの( ̄▽ ̄)
      あとウィークエンダーね笑笑
      2023/03/18
    • おびのりさん
      好奇心旺盛だったのよ、きっと。
      好奇心旺盛だったのよ、きっと。
      2023/03/18

  • 分厚くて、こりゃ挫折するやつだって思ってたけど
    読むのに時間はかかったが、のめり込み面白かった

    読み終わって、ちょっと自分の話し方が作中のカルーセル麻紀さんのようになってないか?って思ってしまった

    カルーセル麻紀さんの子供の頃の話しだが
    お母さんとお姉ちゃんがいたから、ゲイとして生きてこれたのかな?
    お父さんとお兄ちゃんは、その時代なら当たり前なのか?っていうくらいの典型的な殿様気質の亭主関白って感じだし
    どこまでが実話なのかは、分からないが
    お母さんの弟が、ゲイだったようで
    婿養子に迎えられたときに
    女の人と結婚するのが苦痛で自殺してしまった
    そんな弟がいたから、お母さんは自分の息子がゲイ気質と気付いても生きていてくれればいいって息子を認めて素敵なお母さんだと思う
    今でこそ、多様性の時代だか昔は世間的に大変だったと思うし

    カルーセル麻紀さん、これからTVで見る時は
    ちょっと今までと違った見方で見るかな?
    生き様がカッコいい

    釧路から誰にも話さず家出して、高校辞めてススキノで働くってすごい…
    連れ戻され、今度はお姉ちゃんとお母さんには伝えてススキノで働く
    うん、すごい行動力

  • 秀男から真子への一冊。

    カルーセル麻紀さんがモデルの物語に終始心は奪われ続けた。

    "この世にないものになる"これほど強い想いが押し寄せる言葉は初めてだ。

    秀男から真子へ…いばらだらけの道で、秀男にとって幼少時にいただいたその言葉がどれだけのお守りだったことか。

    いつだって前を向き続ける強さの裏側にある微量の弱さは母と姉への拭いきれない罪悪感。

    ぽつりと垣間見える時が何度も胸を打つ。

    母から贈られた言葉。
    お守りの言葉がまた一つ増えた真子がさらに輝きを纏う。

    口紅、河…人生岐路に色と決意を添える"緋"の絡め方も素晴らしい。

  • 秀男は小さい時から綺麗な女性になりたいと思っていた。夏祭りに着れる着物、化粧に心をときめかせていた。家族や世間の目もありながらも、秀男は高校・家を飛び出して、自分の夢へと突き進む。
    桜木さんと同郷のカルーセル麻紀さんをモデルとしているようです。
    その人がその人であること。周りから批判を浴びながらも、自分が自分であることを愛し、その道を生きる、貫く力、非常に熱かった。この世にないものになる、決めてからにはなってゆく。痛みを引き換えにしても欲しいものがある。神様を許すのがわたしらの生きる道か。そんな風に女の道を書き上げるのはやはり桜木さんか。それと釧路の街についての描写も物語にはなくてはならないものね。しびれた一冊だ。自分も自分を徹底的に好きにならなきゃね。自分自身の生き方を問う物語でもあった。
    続編があるようですので、期待です。モデルのカルーセルさんもまだご存命ですからね。

  • 見えないはずの風景が言葉で語られ、見も知らずの人々の表出すらされない心の内に光が当てられ形になる。

    桜木さんの卓越した細やかな心理描写に酔いしれた1冊。言葉の醍醐味が心地よい。

    桜木さんと同郷のカルーセル麻紀さんの生きざまに着想を得て描かれた1冊。

    平成令和版ジェンダー観となると、どうにも「正義」という鉈が跋扈し、唯一無二の正しさが他のすべてを排除してしまうため正直なところ苦手。

    だが桜木さんが描く昭和の地方の男女観は断じない。価値判断を極力排して、そこに在る人々のそれぞれの想い、視点、判断、選択を丁寧に掬い取る。痺れる。

    地方、それも北国特有の諦念や虚しさ。
    世を儚み、固定化されて弾力性を全く失ってしまった家族観やその中での役割が轍となり、自分の意思で生きることがなにより困難な人々。

    世間一般には「辛抱強い」「我慢のできる」と評価されるであろう「母親」「娘」の役割から逸脱を発想すらしない女性たちに私の実家の親族が思い出され、心がざらつく。

    一方で自らの人生を自らの意思で切り拓く主人公秀男。しかしその描き方は決して美談仕立てではない。
    貧困と寒さの中に肩を寄せ合いながら暮らす家族でありながら、心通い合わせることもなく、言葉にしない家族が「家族だから」己の役割に徹し、ともに暮らす。
    彼が痛みや哀しみ、寂しさの中で本当に欲していたのは、やはり「居場所」だったと描き過ぎない筆致に痺れる。

    秀男の大胆さと繊細さ。狡猾と甲斐性のない男への不如意の耽溺。計算高さと衝動性。
    ゲイバーの先人たちの強さと脆さ。頑固さと儚さ。
    こうした登場人物たちの心の複層性が卓越した言葉遣いで一人の人間の造作を現実に感じさせる。

    最終盤、秀男にとって離れたいのに戻ってしまう実家や家族の存在と、現実から逃げてしまう「強いはずの」男たち父親と長男の描き方に惚れる。対比される嫁のキャラクターも実家の在り様を際立たせている。

    桜木さんのデビュー当時の作品は人生への諦念、放棄を形にしたような「仕方がない」で尽くされる女性たちの生き方に私の実家を重ねてしまい、苦手だったが、最近の桜木さんの作品は奥深さが加味されていると感じられる。

    人生は、毎日のその都度の選択の連続。特に中盤から後半にかけて、自分の人生のハンドルを握ろうと必死にもがく人々が愛おしくて頁を閉じた。よい作品に出会えて満足でした。

  • 男として生まれた。でも、きれいな女の人になりたいなー。蔑みの視線ー。親も先生も、誰に何を言われても関係ない。「どうせなるのなら、この世にないものにおなりよ」その言葉が、糧になった。生まれたからには、自分の生きたいように、生きてやる。
    カルーセル麻紀さんがモデルとなっている。正直本を読むまでは、カルーセル麻紀さんにはデビューした当初からいい印象を抱いていなかった。ところが読んでいる間、彼女の生きる力に脱帽し励まされっぱなし。
    桜木さんの著書の中で一番共感が持てる作品となる。
    背景を知るってこんなに大事なのことなのか!

  • この小説はカルーセル麻紀さんがモデルと知り、これは読まなければ!と。しかも、「これまで語られなかった少女時代を想像で書かせてほしい」との著者の希望を、麻紀さんが快諾して書かれたものだそうだ。「思い出話ならば、麻紀さんが語った方が百倍面白い」「どんな赤裸々なインタビューでも語られなかったことを書かなければ、小説にならない」と言う桜木さんもすごいし、「あたしをとことん汚く書いて」と注文したという麻紀さんも、これまたすごい。

    差別や偏見に耐え続けた日々が語られるのだろうという予想は、あまりにも浅はかだった。もちろん、1942年北海道に生まれ、本名の「徹男」(小説では「秀男」)という名の響きからはかけ離れた子どもであった麻紀さんが、今とは比べものにならないほどの苦闘を強いられたことは想像に難くない。この小説でも、当然その苦しみは描かれている。

    しかし、圧倒的に胸に迫ってくるのは、どんなときでも自分を肯定し通そうとする「ヒデ坊」の強さであり、したたかさである。これはもう事実か虚構かということをこえて、カルーセル麻紀という人の芯にあるものが描かれているという、揺るぎない説得力がある。登場人物や出来事のほとんどは虚構だそうだが、どの人にもリアルな実感があって、特にヒデ坊の家族や友人の描き方にひきつけられた。終盤の、母とふたりでお風呂に入る場面が切なく、忘れがたい。

  • 初出2017〜19年北海道新聞ほか

    昭和40年代にゲイボーイから性転換してタレントになったカルーセル麻紀をモデルにしている。今ならLGBTは社会的に認知され、制度上の障害を除くことも進み始めているが、この当時はさぞ大変だったことだろう。

    釧路で生まれたかわいい容姿の秀男は、もっと綺麗になりたいと願うが、周囲からは「化け物」とさげすみいじめられる。その中で、理解者の友人を得て巧みに生きていくが、高校の教師から弾圧されて家出し、札幌のゲイバーで生き生きと働き、お姉さんたちから仕込まれるが、家に連れ戻される。

    世界のどこにもいない存在になろう、自分らしく生きようとする秀男は、芸と話術を磨き、札幌、東京、大阪と人気を集めていき、テレビタレントになるチャンスをつかむ。

    秀男のすさまじい覚悟、痛みを抱えながらの懸命な生き方がすがすがしく見える。桜木紫乃が他の作家に書かせたくないと思ったのがよくわかるあとがきを読むと喉の奥に塊が出来る。

  • 2019/06/27リクエスト
    やっぱり桜木紫乃の作品、好きです。
    多分、他の作家が同じようにカルーセル麻紀を描いても、このような仕上がりではないと思う。
    芸で稼ぐ、ゲイボーイ、全くいやらしくない、いい本でした。
    かなり重いので、通勤電車の中で読むには、向いてませんでした。

  • オカマだとかおんな男と差別されていたLGBTの人。その中の一人であった主人公がいかに自分に忠実に生きてきたかという物語だ。彼(彼女)の生き方と、親兄弟、友人、職場の人の生き方と対比させて描いている。例えば兄の自己中心的な生き方。姉の献身的な生き方。小学生時代の親友の運命論的な生き方、等々。お前ならどうすると問い詰めてくる。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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