- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103198314
作品紹介・あらすじ
想いは人知れず、この世の終わりまで滾り立つ-。死んでもいいと海を漂う茉莉香に、虚空を彷徨う大鷲が語りかける。熱く狂おしい兄の想いを、お前はなかったことにできるのか?かつて二百年前の奄美にも、許されぬ愛を望んだ兄妹がいた…。苛酷な階級社会で奴隷に生まれた少年は、やがて愛することを知り、運命に抗うことを決意する。第21回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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この作品が、日本ファンタジーノベル大賞受賞作だということを、読み終わった後に知ったが、内容には、すごく生々しいものを感じました。
奴隷のような身分制度がある、「フィエクサ」と「サネン」の物語(たぶん江戸時代)は、やはり読んでいて辛いものを感じたが、それでも自分の信念や生き方を貫いた様は、矛盾していたり、我が儘に見えたりもするが、きっちりと厳格な神とは対照的に、曖昧で平気で考え方が変わったりする、狡さのようなものも感じられるが、それだからこそ、より人間らしく感じられ、私には汚くも美しく見えた。
ただ、その話に影響される「茉莉香」の物語が、やや突拍子で現実感が薄く、ちょっとフィエクサのエピソードと上手くリンクしてないかなと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遠田潤子さんデビュー作。
当然、私も本作を初めて読んで、出会った。
ファンタジーノベル⁉︎………とんでもない。
でも、この作品が出されたら、脇に置くことはできなかったでしょう。
あまりにも前に読了したので、細かいことは書けないけれど、とにかく衝撃的な力で、読書を中断しても頭の中がぐるぐるとこの作品世界に塗り潰され、苦しいままで最後まで読まされた。
読み始めると離れられない、この人の作品の魅力がはっきり刻まれた。 -
戦後、1953年まで奄美大島はアメリカだった。
このことはほとんどの人が知らない。
戦後ですらそうなのだから、近世の奄美の歴史なんてなおさら。
薩摩藩の支配下の元、ヤンチュという債務奴隷によって砂糖黍は作られ、
黒砂糖は、薩摩藩の財源となり、江戸幕府が恐れるまでの力を持った。
島のヤンチュたちの生活は悲惨で、毒のあるソテツの実を食べなければならないほど。
と知識として知っていた奄美の歴史が、物語として動きだす。
はじまりは、現代の奄美の海。
漂うカヤックの上、世界の終わりを待つ鷲が、死にかけた茉莉香に200年前の島の兄妹の話を語る。
血の繋がらない兄妹の悲しい恋愛、とありがちな物語だが、「言葉」に囚われる山の神や兄・フェイクサの夢中になる「碁」、妹・サネンの憧れる奄美の女性の刺青(針突:ハヅキ)という小道具で飽きさせない。
とっちらかりそうになりながらきれいにまとまる。
ヤンチュの女ミヤソが七夕夜、短冊に願いごとを書いてもらおうとして、
「…どうしよう、願いごとなんて、なんにも思いつかないよ」と言い、その夜、天の川の下で首を吊る場面の切なさ。
自分のルーツである奄美大島の物語を読めたのは嬉しい。 -
ファンタジーはちょっと苦手かなと思いながら読み始めましたが、予想以上に面白くあっという間に読んでしまいました。物悲しい話でしたがあらためて日本の歴史に目を向けることが出来ました。
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2022年5月17日
予想外のおもしろさ。
フィエクサとサネン
茉莉花と兄
兄を慕う気持ちがフィエクサを招いたのかもしれない。
まるで奴隷のヤンチュ
ヤンチュの子のヒザ
普通の人も簡単に身を持ち崩しヤンチュになる奄美大島。
砂糖黍の仕事は過酷だ。
神の宿る山、魂マブリがさすらう海
自然の中にこの世とあの世が混在している。
兄妹愛は哀しい。惹かれ合い男女の愛になっていく。自分の意思でどうこうできるものでなくなってしまう。
その愛は犠牲ではなく、真実と悟り、また生きようと茉莉花は決心できる。 -
禁断の恋物語、ではないですよね。もっと深い愛情。
鳥さんの話は、凄くせつないし、やるせない。この雰囲気好きです
その合間合間に出て来る、漂流している女の子の話がちょっと。どうせなら、こちらももっと書き込んでもらっても良かったかな。