肖像彫刻家

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133650

作品紹介・あらすじ

53歳♂バツイチの元芸術家。それでも人生は続く――“人生100年時代”の極上人間ドラマ! 人が生きてきた時間を封じ込める――それが、肖像彫刻。芸術の道を諦めて、八ヶ岳山麓で職人彫刻家として再出発した正道。しかし彼の作品には、文字通り魂が宿ってしまうのだった。亡き両親、高名な学者、最愛の恋人……周囲の思惑そっちのけで、銅像たちが語り始めたホンネとは。人間の愚かさと愛しさが胸に迫る人生賛歌。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!!
    正道の誠意や芸術に対する熱意を込めて、魂の宿る肖像を作る工程が、読んでるだけで映像を見てるみたいにすごく想像できた。依頼主の人物像とか、依頼してきた背景とかもそれぞれで、良かった!
    芳川夫婦や、姉の薫、冨澤とか最後に出てくる元妻厚子、そのほかにも出てくる人たちの温かい空気が文面からモワモワ出てきて、、、正道の行き方が綴られてるお話でもあって、なんか考えることも多々ありました!!温かいお話でした

  • 肖像彫刻家の主人公が作った銅像達に魂が宿って語りだす~という紹介から、スラップスティック的なものを期待して読み始めたせいか、いまいち乗り切れず。ずっと、中途半端な感じが付きまとい。。。。
    初・篠田節子。多分、文体もどこか合わないのでしょうね。
    世間的にはとても評判の良い作品なのですが。

  • 新刊が出ていたのに気づかなかった。乳がん手術の最中に校正をしていた本だ。

    50代半ば、彫刻家の高山正道。抽象彫刻が若い頃展覧会で入賞するもその後生活の糧はかせげず、妻子も去り、イタリアでローマン肖像彫刻を学ぶも芽は出ず帰国して今はアルプスの麓に住む。仕事を得るにはまず試作をと、レオニダスとニケの彫像を作ってアトリエの前に置くと、大家の老人が買ってくれた。が・・・老人の思わぬ利用法はなんと・・ この情景が本の表紙になっている。

    その後、寺のご本尊を作ると、その本尊から霊が現れ、見かねた姉が死んだ父母の像を作らせると彫像同士が反目し合い、亡き妻の像を注文した夫が外国旅行をしようとすると彫像の顔がきつくなり、と正道の作る彫像には霊魂が出るという噂がネットで広がり、ある有名建築家の思い出の女性の彫像をつくることに。これがもとで正道の道も開けてゆく。

    生活の糧と芸術、ふっきれたところで折り合いをつけた主人公はきまじめだ。きついが要所でさりげなく面倒を見る姉、美大の同級生、気のいい大家、いい具合に周りとうまくやりながら、なんとか明るい未来が開けてくる。うまくゆきすぎかもしれないが、こういう希望に向けた道が広がったらいいね、とほっとする作品。

    金に窮窮とする寺、息子夫婦と住んでいても墓参りには連れて行ってもらえない90代後半の大家の叔父伯母を車で墓参りに連れてゆく正道、でも息子夫婦にはそちらにはそちらの都合もあるわけで、と目配りをする篠田氏。そんな現代の状況もさりげなく織り込んである。
    母を看取った姉には「あのとき死んでくれなかったら、私が先に逝っちゃうか、殺しちゃうかしてたかもね」と言わせている。ぼけた母は姉が目を離したすきに食べた大福を喉に詰まらせて死んだ(死んでくれた?)のだ。

    2019.3.20 発行 図書館

  • 一流の芸術家に届かなかった五十路の彫刻家、高山正道がイタリアから帰国して、一人八ヶ岳連峰を望む農村に住み、肖像彫刻家として新しい生活を始める。
    そこで周りの人達と触れ合いながら、生き生きとした日々が始まる…というありきたりな設定は、やはりこの作家には当てはまらなかった。
    正道が製作するたびに、なんだか不思議でおかしくて、ちょっと怖い出来事が起きていく。
    とぼけた魅力のあるお話で、楽しく読めました。

  • 肖像彫刻に魂が入って、喋ったり、動いてしまう話。
    印象に残った文章
    ⒈ 自分の両親を看取られちゃうと、男は一生、頭が上がらない。
    ⒉ 自分が活躍できるフィールドで生きていくのが人間は一番、幸せだから。
    ⒊ 墓石を眺めながらの宴会が始まる。

  • 主人公の彫刻家が創った肖像が夜な夜な動き出して話し始める件に、荒唐無稽で不自然な設定に少々無理があると苦笑いしてたのですが、然もありなんと考え直させられました。
    それは連休中に出会ったお祭りです。

    詳しくはもう一つのブログへ↓

    https://blog.goo.ne.jp/33bamboo/e/eaebbc6c9413f805eca683d30c61847f

  • いきなり両親の墓前で後頭部押さえつけられながら、土下座して号泣するシーンから始まってさ。うわ、きっついなぁ、という気がしたものだ。篠田節子の小説には、男の幻想を打ち砕く硬質なイメージがあるんだよね。本書もそんな感じかなぁと、ややおそるおそる読み始めたら、決して硬質な感じはない。むしろなんか、クスっと笑えるというか、おかしみのようなものがあって、どんどん物語に引き込まれていく。誰か殺されるとか、謎解きがあるというわけじゃないんだけど、ただ読んでいるのが楽しい。そして読み終わった後は、どこか胸の奥がほんわりあたたかくなって笑みを浮かべたくなるような。そんな本だったなぁ。

  • 面白かった。
    爆笑とかそういうものではないのだが、
    梅雨でどんよりと 心と体が重たいこの季節にはぴったりかもしれない。
    文章の醸し出す雰囲気は
    「ナミヤ雑貨店の奇蹟」とか「つくもがみ貸します」のような
    ちょっとファンタージーが入っていて、
    人間の業や想いがキーになって 話が進んでいく。
    (今作は ちょっと煩悩が強い依頼主が多いのだけど・・・・)

    芸大を出てそこそこ賞をとったものの
    食うに困り 嫁と息子に出ていかれた彫刻家の主人公 正直
    イタリアで修業を積んだものの 技術は手に入れたが
    パッと世に出ることはなく 日本に帰ってきた。
    そんな 正道の作る肖像彫刻は ちょっと訳ありばかり。
    本体の仏像を売ってしまって、ダミーを作らせる強欲住職や
    若い女に入れあげて亡くなった著名な学長の銅像などなど
    その像が・・・・・

    ちょっとツッコミを入れながら 雨の休日に読むのにお勧め。

  • 中々面白かった。
    今までに読んだ事のない発想の話で新鮮だった。
    私が今まで読んだ篠田節子さんの本のイメージとはちょっと違っていて、軽くコミカルな雰囲気で書かれた本で読みやすかった。

    主人公は売れない彫刻家の男性。
    彼は何年もイタリアで彫刻の修行をして日本に帰国、工房を立ち上げるも、仕事の依頼は来ない。
    暇をもてあまし作成した彫刻は近所の人にもらわれてー。
    その後、寺から開祖の像を造ってほしいと依頼が入る。
    その像を造る依頼の影にはある事情があってー。
    そして、その開祖の像が動くという噂が立つようになる。
    さらに、姉の依頼で造った両親の像も同じく、ケンカをするようになる。
    それが噂になり、依頼が入るようになるが、それらの像もしゃべったり、動いたりするようになってー。

    この本の1話目を読んで、短編小説だと思った。
    それくらい1話はそれだけで独立して成立している。
    それが読み進めるにつれて、カラーが変ってきたので、もしかしたらこの本はこういう内容にするはずじゃなかったのかも・・・と思った。

    読んでいて思ったのは、この国で芸術家として、それだけで食べていくのは容易じゃないという事。
    この主人公のように、自称彫刻家じゃない、ちゃんと基礎も下地も実力もある人ですら、有名でない内は厳しい。
    彫刻が動いたりするという奇怪な現象により、注目されるようになったけど、それがなかったらどうなってたかー。

    最後に、オチとして最初の話に登場した彫刻が出てくるかな?と思ったらそうじゃなくてちょっと肩すかしだった。

  • 高山正道は、親に反対されながらもイタリアで修行し帰国。一般には理解されにくい肖像を作るも、売れず、離婚。山梨に越して工房を開き、肖像の依頼を待っている。すると作成した像がまるで生きていると評判になる。しかし依頼は一筋縄ではいかないようなものばかり来るようになるという連作短編集。

    誰にでも薦められる大傑作というほどではないけれど、結構楽しんで読んだ。個人的には結構好み。

    肖像を作ってもらいたいと思う人の「やや歪んだ?」願望が面白い。寺がなぜ肖像を必要とするのか。あるいは裸の女性の像を男性が欲するのか。

    また、肖像を作る側の苦労や手法も興味深かった。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

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