手のひらの楽園

著者 :
  • 新潮社
3.81
  • (19)
  • (52)
  • (29)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 336
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103038344

作品紹介・あらすじ

勉強できなくても、お金がなくても、大丈夫! 『校閲ガール』著者が描く、最高にハッピーな青春小説。美容科・看護科・調理科など職業に関する学科が揃う「働くための高校」で、お母さんを癒すためエステティシャンを目指す二年生の友麻。家が貧乏で肝心の母は行方不明でも楽しい学園生活を満喫中! 世間の価値観に縛られず、自分のやり方で幸せを探す彼女がたどりついた場所とは――。しあわせになれるヒント満載の青春長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 家庭の事情を抱えた島育ちの高校生。
    寮生活の中で成長していきます。

    友麻は、長崎の高校の寮に入り、エステティシャンを目指しています。
    島では村人がみな知り合いで家族のようでしたが、母一人子一人で、高校入学後にその母親が失踪。生きてはいるようなのですが事情はまったくわからない。
    個性的な寮生たちもそれぞれにちょっとした事情があったり、ぶつかりあったり、仲良くなったり。
    おおらかだが、ちょっとズレている?友麻。

    「人との距離の取り方がわからない」と思っているのが何度も出てきますが、あまりこういう言葉を使いそうにないキャラなので、何となくもやもや。
    謎を抱えた状態のまま、どんどん高校生活は進んでいくので、色々な思いを言葉にしきれないでいる、状況でしょうか。
    子供の自分は皆に可愛がられて育ったが、母は酷な扱いを受けていたことに初めて気づく…それも自分を生んだから、という衝撃の事実。
    行方がわかった母親の発言もどうなのかなあ…

    後半は急展開で、友麻も急成長。
    都合よすぎる気がしないでもないところでまた、もやっと(笑)
    でもこれぐらいの年齢で急成長することは実際、ありえますね。
    入り組んだ状況を知り、理解するに至ったとき、それが起きたのかな。
    しかし、コピーで「最高にハッピーな高校生活」みたいな表現になっているのには、さっき気づいて驚きました。いや全然そうは思ってなかった…
    幼さと若さが混じり合い、いろいろなレベルのことが起きてくるのが、とんでもない設定でも、何となくリアルでもあるかな~ぐらい。
    人との距離の取り方がわからなかったのに、いい友達ができて良かったね!とは思いました(笑)

  • ★3.5

    私はこの手で、どこまでいけるのかな―。
    夕陽ノ丘高校「エステ科」2年園部友麻の毎日は、なんだかとっても波乱万丈。
    美容科・看護科・調理科など職業に関わる学科が揃う「仕事を学ぶための高校」で、
    疲れたお母さんを癒すためエステティシャンを目指す友麻。
    実家が離島で寮暮らし、家は貧乏で、肝心のお母さんは行方不明でも、
    楽しい学園生活を満喫中!
    世間の価値観に振り回されず、素の自分のままで問題にぶつかっていく彼女がたどりついた場所とは―。


    表紙のイラストがザ・青春でちょっと躊躇った…(笑)
    でも大好きな宮木さんの本だから読んでみようと借りました。

    長崎に近い小さな島で生まれ育った友麻。
    父親はいなくて貧乏なので奨学金を貰って高校の寮で暮らしている。
    母親も友麻が高校の寮に入った後、島を出て失踪してしまう。
    それでも友麻は、明るく天真爛漫だ。
    前半では、そんな友麻のエステシャン科という学校での授業や
    寮での生活等が丁寧に描かれていた。
    読み易いけど…んー宮木さんらしくない感じ。
    高校生活が遠くなった私は少し退屈に感じながら読み進めていた。
    しかし、夏休みに島に帰省した時に(叔母一家の家)
    発電所で働いている本土からきている青年から
    実は父親が生きている事、そして自分はその人の知り合いだと聞かされ、
    友麻のなかに、様々な感情が渦巻き、
    島の人達に愛されて大切に育てられたと信じて過ごした15年間に
    疑問を抱き、悩み考え…物語に引き込まれて行った。
    大人達も決して思っていたような大人ではなく、
    子供の様な欠落がある事に気付いた。
    悩みながらも、友麻はしっかりと島の大人達と対峙した。
    大人のそうするしかなかったんだという言葉…そうなのかもしれないが
    そうじゃないんじゃないか…他の道もあったんじゃないか…。
    友麻に罪はないと可愛がってはくれたが、母緒に対しては村八分だったのでは…。
    閉鎖的な島の良い面と悪い面が入り混じってたなぁ。

    友麻の真っすぐさがとっても眩しい。
    のびのびと天真爛漫に育ったのは島の人達のお陰でもあるんだよなぁ…

  • 長崎の離島出身の友麻が看護科や調理科、パティシエ科と普通科のない高校のエステ科2年に進級し、寮に戻る所から始まる一年間の物語。エステ科の授業風景や寮での生活、学園祭等のイベント。その中で起きる友達とのいざこざや初めての彼氏が出来た事で浮かんでくる恋への戸惑いと青春学園物好きとしてはど真ん中だ。島出身らしくおおらかな友麻だが父は死んだと聞かされ母は高校入学直後に失踪と結構な境遇のせいか何処か心が固くなっているが、両親の現在と隠された様々な真実が知らされる事によって心が思い切り乱されながらも真っ直ぐ開いていく過程が爽やかでまた良かった。しかしやはり島の生活の面倒臭さこの上なし。絶対移住出来ないわ…。

  • 特に期待もせず読んだが、なかなか良かった。
    ちょっと事情がある高校生の女の子が主人公。頭は良くない(とは言うものの勉強に意欲がなく、競争心もないため成績がぱっとしなかっただけで、本当に頭が悪いわけではない。)、自尊心もあまり高くない、家事家業をよく手伝い、動物や子どもに好かれる、ふつうの田舎のいい子である主人公を、読んでいるうちに好きになる。(今気づいたけど、ちょっと『彼女は頭が悪いから』の女の子に似ていて、エリートで自尊心も高い男と関わったために、とんでもない事をされてしまうあの女の子も、こういう環境にいたなら、もっとふさわしい男と知り合えたんじゃないかと思った。)
    会話のテンポもいいし、作者は神奈川生まれだとあるが、長崎のこと、これだけ自然に、取材だけで書けるとしたらすごいと思う。
    九州の田舎の、欲のない女の子たちのリアルな姿がよく描けている。
    主人公だけでなく、友達や周りの大人のそれぞれの事情も上手く書き込んであり、爽やかな読後感。特に、島の大人達が、こういう事情だと悪者にされがちだが、ちゃんと納得できる形で人間として善良に描かれているのも良かった。
    まあ、ドラマになりそうな内容ではあるが、いい小説だった。
    エステの良さについてもよく分かった。この主人公のようなエステティシャンなら、施術してほしいなあと思った。

  • 長崎県にある本土から15分の離島で生まれ育った友麻は、卒業後に自立するためにエステティック科のある高校に奨学生として進学し、寮で暮らしている。
    父親は物心ついたときからおらず、母親は友麻が高校に進学すると同時に失踪してしまった。

    悲惨といっていい境遇にも関わらず、友麻は明るく、むしろ痛みに鈍感になって生きている。

    物語に流れる空気は明るく、描かれる島は美しく、個性的な登場人物たちのやりとりはコミカルで、時折笑えるくらいなんだけれども、読んでいる途中で、なんだか泣きそうな気持ちになった。

    家庭にさまざまな事情を抱えていても、どれほど早く大人になろうとしても、庇護されるべき年齢であるがゆえに、自分の力だけでは生きて行けない少女たち。
    大人たちの一方的な配慮に肯う他なく、抗議はできても、本当に抗うことはできない。

    どんな境遇であっても、力いっぱい貪欲に日々を生きて楽しもうとする彼女たちの姿が、あまりにもきらきらしていて、若さってこういうことだ、と胸をうつ。

  • 同著者の「雨の塔」が好きだったので気になっていて読んでみました。住み込みの学園モノ、ってところが似ています。
    主人公の素朴で正直者な性格がよかった。淡々として大人びた感じもするけど恋愛というものがまだよくわからなかったりと年相応のピュアさが可愛らしくて、そのへんの描き方が上手でした。

  • 長崎。千葉。高校。寮。エステティック。
    家族。故郷。恋愛。母子家庭。
    波2019.8にて。

    長崎の高校のエステ科で勉強する友麻。
    エステに絡んで体のこと(皮膚、筋肉…)とかも出てくる。
    父いない母失踪と穏やかでないけど、本人淡々。
    それでいて悩みもして、真っ当で眩しい。
    学友たちもみんな各々でベタベタしてない。過ごしやすそう。
    そして気づいてみればどの家庭にもそれなりの事情。
    きついこと言われてもイジワルじゃないから恨まない。バカだからいじめ出来ないは目から鱗。座学はともかく実習はマジメのくだりで『ご近所物語』思い出した。

  • 校閲ガールが面白かったから宮木あや子先生の名前は覚えてました。
    気になって読んでみたら、やられたー。
    こんなお話も書ける方なんですね、知らなかった。
    校閲ガールとはちょっと違うけど、
    読みやすさは変わらずにあって
    読み進めるのが楽しかったです。

  • 高校の寮生活をしている友麻。
    お母さんが行方不明。
    17歳の女子高生の境遇としてはかなり厳しい。

    友麻がクールすぎるように最初思えたけれど、
    実際は表現の仕方がわからなかっただけなんだなと思った。

    友麻の母には全く共感しない、
    友麻が高校生になるときに
    すべてを打ち明けるべきだし
    母親のほうが子どもだと思った。

    それと、ちょっと西谷兄ウザイ。
    境遇の違いをもっと
    深く考えろ!と思うし
    実父もどうかと思うし

    ということで大人たちにはおいといて
    17歳の友麻は本当に偉いと思う、
    一生懸命だし
    幸せになってほしい。

    神戸にみんなで行った所は楽しかった。

  • どうすることもできないことに立ち向かうこともできずにそのままに。
    それも受け入れてるわけじゃなく、ただスルーするしかない、子どもの特性だよね、これって。
    どんどん慣れて痛みに強くなって感情が鈍くなる。
    最初ひょっとしたら苦手?と思った主人公だったけど、読み進むとだんだん島のことやら学校のこと、彼女のことがわかっていつの間にか陰ながら応援してるおばちゃんの気持ちになってる。
    寮生の子たちのいろいろも色々もあって読み応えも抜群、風がスッと吹き抜ける気持ちいい読後感。
    エステ受けてみたいし、五島列島に行ってみたいし。
    考え方の変化のあった作品。

全44件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮木あや子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×