モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103036739

作品紹介・あらすじ

「息子は校長に殺された!」たった一人のモンスターが学校を崩壊させた。不登校の高一男子が、久々の登校を目前に自殺した。かねてから学校の責任を追及していた母親は、校長を殺人罪で刑事告訴する。人権派弁護士、県会議員、マスコミも加勢しての執拗な追及に崩壊寸前まで追い込まれる高校。だが教師たちは真実を求め、ついに反撃に転じた――。どの学校にも起こり得る悪夢を描ききった戦慄のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 虚しい…。

    最終的に誰もがハッピーにならない結末に心の底から虚しさを覚えた。

    たった一人の人間に多くの人が翻弄されるが、最後にバレー部の保護者や生徒たちが反撃して裁判で勝利したのがせめてもの救いか。

  • これは お母さんも怖いけど そもそも 片方の話を中心に広げる メディアが怖いと 思いました。

    この件では 叩かれたのが 複数だから その仲間で耐えられたけれど 一人だったら 辛くて死にたくなってしまったでしょう。

    モンスターマザーと呼ばれた この母親も
    もしかしたら 早期に正面から 向き合ってくれた人がいれば こうならず 息子さんが 自殺に追い込まれる事もなかったでしょうけれど 本当に残念ですね。

    こういう事件が二度と起こらない事を祈ります

  • この母親は言わずもがな(最早この母親を「モンスター」と称するのも違うような気がする)、彼女を擁護する立場に立つ弁護士や記者の見境の無い軽率さに腸が煮えくり返ると同時に心底ゾッとする。居た堪れない。

  • 壮絶でありかつ面白いノンフィクション。関わる人間をことごとく地獄に突き落とす、まさに生ける災厄のような、モンペというよりはサイコパスの実録暴走記だった。

    事件自体もいたましいのだが、人権派弁護士や有名ルポライターや雑誌が、適当な取材だけで情報発信し、事態を深刻化させているのが色々な意味で救われない。

    「いじめ被害者を守る正義の味方」という単純な物語に流された面もあるだろうし、目の前で切々と訴える人が悪意を持って嘘をついているとは中々思えないものなので、彼らもサイコパスの被害者のひとりとも言える。それでも、それぞれに他人の人生を潰すくらいの力があるのだから、この対応は無責任すぎる。

    テレビ局については、あらかじめ製作しておいたシナリオにそって映像編集する話は有名なので驚きはなかった。やはり、ワイドショーとSNSの炎上は似ているもんだなと思っただけ。どっちも真実より感情を優先する傾向があるなと。

    そして、サイコパスの虚言にコントロールされて赤の他人を憎む人たち。愚かだがそもそも憎しみという感情には元から正当性など必要ないとも言える。皆、そいつが悪人だから憎むのだと考えているが、実は逆で、攻撃したいから悪役を必要としているのだ。そう考えると、サイコパスの扇動は単なるきっかけにすぎず、問題の根本は一種の依存にあるのではないか。

    これを国家レベルで適応すれば全体主義となるのだろう。国民をいじめて鬱憤を貯まらせた上で攻撃のターゲットを作れば、快感だけでなく恐怖心もいっしょに叩き込めるから大衆操作が楽になる。快感と恐怖ほど依存症と親和的なコンビネーションもない。サイコパスに操作されて戦ってしまった“人権派”弁護士のように、攻撃に依存する人たちは支配されやすい人たちでもあるわけだ。感情は不思議だ。いつもかるく論理を超えてくる。

    なんにせよSNSで日々「義憤」ごっこしがちな昨今は特に沁みる本だった。

    それにしても、「困った人」ってのはストレスがたまらないせいか、無駄に生命力が強くて行動力もあるし長生きだなと改めて思った。その無尽蔵なパワーを自他を幸せにするために使ったら、人からも愛されるし、もっとましな人生にもなるだろうに、攻撃や暴力以外のやり方を知らないから始末に終えない。

    どう考えても専門家の治療やサポートが必要な状態なのに、一見まともなせいでつながるべき所に繋がることもできないのが不幸だった。おかげで周りは焼け野原。問題ある人を放置するせいで失われる税金はいかほどか。

    例え人格障害が治らないものだったとしても、他の障害のように具体的なサポート体制を作ることはできないものだろうか。それが多様性を受け入れることであり本当の社会的包摂だろう。サイコパスが透明化され野放しにされてしまう精神医療・福祉システムの問題も感じる事件だった。

    それでもまだ日本が法治国家で良かったと思える結末で読後感は良かった。安心して眠れる。あと、モンペ保険が存在するのはちょっと笑った。

  • この母のモンスターぶりは、想像をはるか絶する。何か事件が起きると、マスコミ報道が正しいと思い、勝手な意見を言い合ったりするけど、それってとても危険な事なんだなと改めて感じた。また事件後しばらくはマスコミも取り上げるけど、報道されなくなると事件のことすら忘れてしまう傾向にある。そんな時に初めと真逆な判決が下されても、世の中の人には最初の印象があたかも真実であるかのように思われてしまう。この事件では、バレー部の仲間達が本当の意味で被害者であり、心に負った傷を思うと、やるせない気持ちでいっぱいになった。

  • タイトル通りモンスターな母親の話で、怖いのは勿論この母親なのだが、大手マスコミ報道が如何にいい加減かという事
    煽るだけ煽って責任は一切取らない。

    当事者にならないと分からないのでは遅い
    守るべきは子供達

  • 同じ作者の「でっちあげ」と同様に良い意味でリアリティーが無い。これがフィクションだったら、加害者の母親や弁護士のような浮世離れした社会人がここまで発言力を持っているのは不自然だと言われるだろうし、マスメディアがこれほど無責任なのも誇張しすぎと言われるだろう。
    これが事実なのだからインパクトも凄い。いや、自分が生きている社会がこれほど情緒に左右される現実が怖いとすら感じる。

    以下のステップでエスカレートする様はコメディーのようでもある。

    ================
    認知の歪んだ母親の嘘

    公的機関のスキャンダルが大好きなマスメディアが間違った情報を拡大

    認知の歪んだ社会派弁護士が母親の嘘に法的な根拠づけ
    ================

    社会的地位のある議員や記者、弁護士のような大人たちが一人のモンスターマザーの嘘に踊らされるのだ。渦中にいた当事者にとっては真実と確信できたのかもしれないが、客観的に本書を読むとこの狂騒曲に興じた人々の心理状態が不思議でならない。
    事実は小説より奇なり、である。

  • もうこんな人、恐怖でしかない。
    気になってネットとかいろいろ見たけど
    母親擁護側の論理はとにかくイジメダメ
    という思考停止一方的論理で、
    こう決めつけられたら単純すぎるが故に
    学校や生徒側は辛かったと思う。
    当時の二ちゃんとか見ると、
    掲示板で母親擁護意見書いてるのが
    母親らしき人と同じログだけど別名とか
    いろいろ上がってるし、住人も
    テレビに出た母親に異常性感じる人が大多数だった。
    そういう意味ではかなりこのルポは真実に
    近いと思うし、
    これで学校、生徒側関係者の汚名が
    少しでもそそがれたらなと思う。
    死んじゃった子はかわいそう…
    マスメディアの姿勢のひどさは、
    テレビ、新聞雑誌とも身近でしょっちゅう
    見聞きしている。
    報道する側が決めた視点でしか視聴者は
    物事を見れない。
    もちろんこのルポが完全なる真実かは当事者でもないしわからないけれど
    少なくとも私の経験と知識からは
    一番妥当な意見に思えた。

  • 真実は誰にも分からない。
    こういったルポを読む時、いつも感じる。

    長野で高校生がいじめを苦に自殺した。が、この本は、自殺の原因はいじめではなく、その少年の母親にあると語る。
    母親は確かに人格障害だったのかもしれない。こういう類の人間を私も実際知っている。批判されるとキレて相手がひれ伏すまで執拗に攻撃する、狡猾で2面性を持ち、法には触れないギリギリのやり方でターゲットを貶める。
    学校でのいじめを、学校側が隠蔽することがあまりにも続いているため、被害者側(母親も含めて)のほうに落ち度があったという仮説は、受け入れにくい土壌がある。
    それでも、こういう母親は実際にいるのだ。

    〈お母さんがねたので死にます〉

    少年が最後に書いた遺書である。
    これが実は「ねたので」ではなく、「やだので」ではないかと言われている。

    こちらに来て確かに「やだかった」とか「やだから」という言い方を良く聞く。
    母親がやだから死ぬ、なんて、あまりじゃないか。

    数は少ないが少年はSOSを出していた。
    人権センターや周りの友達、教師でも近所の人でも実の父親でもいい。
    誰か救えなかったのか。
    少年をこの母親から引き離してあげられなかったのか。

    だから「親子断絶防止法案」などは危険なのだ。
    親から離さなければいけない子どもは現実にいるのだから。

  • まさしくモンスターとしか呼びようのない母親。恐ろしい限りです。
    しかし一般社会にはこういう人、案外いるものです。この母親も「人格障害」と診断されたことがあるとのことですが、だいたい急に切れたり叫びだしたりワケのわからないクレームや難癖をつけてくる人は人格障害だなと思います。

    できることならこういう人は避けて暮らしたいですが、関わってしまったらどう対処したらよいのでしょうね。
    こんな母親の子供に生まれたがゆえに命まで断たれることになろうとは本当に不憫です。

    しかし母親の側からしかこのような一件を見られない人からすると、母親の側の弁護士のようになってしまうのでしょうね。立場が変われば、そして視野が狭ければ自分をも追い詰めかねない事態に巻き込まれるというのも自己責任かもしれませんが、また大変恐ろしいことです。

    裁判になればたとえ勝訴したとしても事件当初からは相当の年数も経過し、人々の記憶の中には当初に報道された真実ともゴシップともつかないものが色濃く事実として残されてしまう…その傷跡の大きさを思うと言葉を喪います。
    裁判に時間がかかりすぎるのは真実追求のためにやむを得ない面もありますが、でも喪われた名誉を取り戻せないまま暮らしていかねばならないとしたらあまりにも残された人たちも辛すぎます。この辺りは制度としてどうにか改善できないものなのでしょうか。…

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著者プロフィール

専門誌・編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。以後、様々な雑誌、webメディアへの寄稿を続けてきた。学校での「教師によるいじめ」として全国報道もされた事件の取材を通して、他メディアによる報道が、実際はモンスターぺアレントの言い分をうのみにした「でっちあげ」だったことを発見。冤罪を解明した過程をまとめた『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』で、2007年に「新潮ドキュメント賞」を受賞。他に『モンスターマザー 「長野・丸子実業高校【いじめ自殺】でっちあげ事件」』では、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞・作品賞を受賞。他、『暗殺国家ロシア:消されたジャーナリストを追う』(以上新潮社)、『スターリン 家族の肖像』(文芸春秋)などがある。

「2021年 『ポリコレの正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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