貘の檻

著者 :
  • 新潮社
3.23
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本棚登録 : 1099
感想 : 183
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003366

作品紹介・あらすじ

真実は「悪夢」の中に隠されている――。幻惑の極致が待ち受ける道尾ミステリーの頂点! あの女が、私の眼前で死んだ。かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった女が、今になってなぜ……真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。はたして、誰が誰を殺したのか? 薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • なんていえばいいのだろう、このやるせなさを。
    誰かを強く思う、ということは、ほかの誰かを切り捨てるということなのか。
    誰かを大切に守り抜くためには、ほかの誰かを傷つけることも厭わない、それが人間というものの性なのか。

    読んでいるあいだ、ずっと土のにおいがしていた、それも湿った土のにおいが。
    都会の乾いた世界にはない、重くて湿度の高い「ヒトの思い」が土のにおいを運んでくるのだろうか。

    初期のころの道尾さんの作品を思い出させる物語で、好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、私はこの重苦しくて不思議でじわじわと心にのしかかってくる世界にたっぷりと浸らせていただきました。

    愛は善悪という基準でははかることができないものなのだ、とつくづく思った。

  • 事実が複雑に絡み合っていて混乱。道尾さんらしい気味の悪い世界は味わえた。

  • 「向日葵の咲かない夏」を彷彿とさせるような、ザ道尾
    作品で嬉しい。
    私は、いい話道尾作品よりこっちが好き。
    途中、幕間のように出てくる夢の話は、夢だけあって訳が分からないけど、それがまたこの本に怪しげな得体のしれない空気を漂わしている。
    人の思いが少しずつずれて、最終的に大きな誤解となり取り返しのつかない事に発展する。
    田舎の因習と方言。金田一耕助世界でした。

  • 少しずつたくさんの人が勘違いしたことにより、悲劇が重なる。ストーリーは楽しめたものの、途中で差し込まれる夢の中の描写が突然すぎて、これまでの描写と違いすぎてストーリーとどう絡んでいたのかがいまいち分かりにくかった。得るものはあまりなかったかな。他作品に期待。

  • 入り込むのに時間がかかりました。
    情景描写がさすが。
    長野県の寒村や、山にある穴堰が目に浮かびました。

    ちょっとした思い込みや誤解、
    言葉の足りなさが悲劇を生むという
    今までの道尾作品にもあるテーマでした。
    新しさはなかったかなぁ。

    あやねさん、いいキャラなのでまた出てきてほしい。

  • 先日NHK BSで八つ墓村を紹介していた番組で、コメンテーターとして出演していた道尾さんが、全く意識せずにこの作品を書いたのに影響を受けていたのでしょうかと言われていたので読んでみた。実際そう思って読むと八つ墓村を彷彿とさせるところが随所にあった。なかなか面白かった。

  • 道尾作品を全部読んでる訳じゃないけど、これは現時点でベストの出来では。
    父の事件で母と村を追われ、長じてからは悪夢に振り回され、離婚に自殺衝動にと散々な主人公には気の毒なだけど、過去の事件と現在の事件に絡め取られ、でも何気に父子の交流もあり、いい味出してる三ツ森が実は大黒幕だったり、地味にお母さんがスゴイ行動派だったり。
    まあ、三ツ森の描写や言動がどうも若過ぎて、半世代年上と感じにくいとか(こういうのは、君づけと敬語じゃ、片付かん〜)、そもそも美禰子の復讐する気が本気であるなら、絶対に父と兄に振り回される地元より、都会でやろ、という気はするが。

  • 『薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具仕立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う』という帯の謳い文句に偽りなし。ホラーっぽいが王道ミステリで読み応えは抜群。というか、もはや純文学の領域。
    方言がとても良い具合。傑作。

  • 暗めのミステリーです。
    ちょっと重かったけど続きが気になり一気読みでした。
    重いなと思いながら最後まで読んで、ほんと最後の最後に子供の温もりにやられました~。最後いいね!

  • 元妻に引き取られた息子との「最後の」日々を、主人公は生まれ故郷で過ごすことにした。そのひとつの端緒には、彼に縁の深い女性が目の前で死んだことがあった。悪夢に悩まされつつ故郷へ訪れた彼が遭遇する新たな事件と、過去の真実、そして夢の意味するものとは…。
    という物語、幻想味を大目に含みつつ、閉鎖性のある田舎の風情を丁寧に描きながら、幾重にも絡まった糸の隙間を慎重にあけていくように、徐々に真実を明らかにしていきます。
    夢の部分には抽象的な描写が多く、それをちゃんと理解できたかとはいえないのですが(なさけない)それでもそこにある異常、畏れ、不可解を感じ取れるので、読み進むうちに、じわじわと主人公の感じている怖れを理解できてきます。閉鎖的状況が呼び起こす孤立感、というんでしょうか、「逃げ場のない」恐ろしさがだんだんと引き立ってきました。
    そしてひとつの軸でもある息子と父の絆の描き方がほろ苦く、いとしくもなりました。終盤ではどうにか希望ある未来が待っていてほしいと願うばかりでした。
    事件はかなり大がかりともいえるもので、ただそれは何人もの人の思い違いが含まれていたので、かなり虚しく切なく感じさせられました。悪人がそこにいたわけではない事件は、どうしてもそういう複雑な感覚をあとに残します。
    幻想に踊らされつつ、ロジックに驚く、そんな読みがいのあるミステリでした。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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