ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451175

作品紹介・あらすじ

六十歳を前に、離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。わが身を振り返り「人間愚行の書」を書く事を思いついたが、街の古本屋で甥のトムと再会してから思いもかけない冒険と幸福な出来事が起こり始める。そして一人の女性と出会って……物語の名手がニューヨークに生きる人間の悲喜劇を温かくウィットに富んだ文章で描いた家族再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 60歳近くで妻と離婚し、ガンを患い、仕事を失い、ブルックリンに戻ってきた主人公ネイサンは、これまでの人生を振り返り「愚行の書」を綴ることを思いつく。
    自分が犯したあらゆる失態を、極力シンプルで明快な言葉で、自分もなるべく楽しむこと。
    私なら忘れたい事にはすべて蓋をしてしまいそうだが、愚行に蓋をしてしまったら、、人生なんて面白くも何ともない、味気ないものになってしまうのだろう。
    街の古書店で甥のトムとばったり出会ってから、ネイサンの身のまわりが変わり始める。
    新しい人と出会い、長年会っていなかった家族や親戚に再会し、その人たちすべてが波瀾万丈に生きていて、愚行を反省し嘆いている暇なんてこれっぽっちもないのだとつくづく実感した。
    人生ってそんなに生易しいものじゃないけれど、捨てたものでもないのだ、と思った。
    文章もウイットに富んでいて面白く、主人公とともに幸福をかみしめることができる、心温まる物語だった。

  • 久々に児童書ではない外国の小説を読んだ。
    新聞の書評を読んで、図書館に予約したのだがこれもまた半年近く待った。

    ニューヨークのブルックリンで、妻と離婚した60前の男ネイサンが第二の人生を始めるところから物語が始まる。
    読み始めは、どういう方向に話がいくのだろう?という感じでなかなか入り込めなかったのだが、ネイサンがブルックリンの人々と少しずつ交流するようになっていくと同時に、話の展開も意外な方向へ…読み手も引き込まれていくのだ。

    長年連れ添った妻とは別れることになったが、第二の人生が新たな出会いと自由と自信をネイサンに与えてくれた。
    いくらでも人生は変わり、楽しむことができる、そういわれているようで希望が湧く。
    2021.7.22

  • 会社を休み、休んだことを家族に伝え忘れたものの家にいても家事をするだけになりそうなので、この本を持って家を飛び出して読みはじめた。

    六十歳手前で離婚し、静かにこれまでの人生の「愚行録」を記して暮らそうとするネイサン、甥っ子のトムとトムの上司に偶然出会ったことで、人生が不思議で豊かに動き出していく。
    ユーモアに溢れて、それでいて切ない。
    生活をする中、これまで生きてきた中で突然出会った「物語」の断片、さらにその日々の中でトムと一緒に巻き込まれた出来事が描かれる。

    Twitterで日々の下らない事件を呟く自分も、質は違えど同じようなことをしている気分になる。ちょうどこの本を書店のベンチで読みつつ、本屋のあるコーナーで手に取った本にも「物語に突然出会うこと」について触れられていた。昨日と同じようで違うちょっとしたことで日常の繰り返しから抜け出し、物語を見出そうとする。
    (このあたりで奇跡でも起きたのかも?とか出会った本を買う口実にしようとする…)

    どちらかと言うと、そういう物語にしか興味が湧かない。たとえそれが消費者に対するビジネスの付加価値として利用されるようなものであっても、そういう物語を見つけたり知りたいと思ってしまう。

    作者がどの様な意識で作品に臨んでいたのか少しだけ解説で触れられているが、まったく前知識なしで読んでいたのは正解でした。
    読んでいて笑ってしまうこともあったし、その分心に残った「切ない」という言葉だけでは言い表せない。
    出会えて良かった本です。

    読んでから数日後も、例の件のことを思い出して「ブルックリンフォリーズ」は本当はもっとたくさんのヒト一人一人にあったんだろうな…と考えてしまいました。

  • 初老の孤独な主人公ネイサンが、ブルックリンの地で新たな生活を始める。それは、人生の終わりを「愚行の書」を執筆しつつ、静かに余生を過ごす地のはずであったが…。かつての家族と出会い、絆を取り戻し、新たな幸せな運命的な出会いを果たす。人生の終盤だとしても、人はいくらでも幸せになることも成長することもできる。温かな家族の愛と絆の大切さが心に染みる物語です。

  • ネイサンは60にして癌にかかり会社をやめた、家庭も崩壊。人生を振り返るために生まれ故郷のブルックリンで暮らすことにした。甥っ子や古本屋店主との交流、レストラン従業員の若い女性への思い。人々の愚行を観察し、「愚行の書」を書いてゆく。9・11までの物語。
    愚かとあるけれど、実に楽しそうだ。悲劇が喜劇に変わり、物語は流れ、温かいまま終わったなあ。表現うまいし、クスッと笑えるところ満載。ルーシーのとことか、ジェイムスジョイスなんて。親類や近所の仲間、新たなる一つの生活、家族を作り、ネイサン楽しそうでよかった、その日までは。幸福と思えるようになったのがいいね。一つの世界を今回も楽しめた。

  • ブルックリンで晩年を過ごそうと引っ越してきた、失意の男性。だけど…?
    ユーモラスに、成り行きが描かれます。

    60歳のネイサンは癌にかかって会社を辞め、妻とは離婚。娘とはうまくいかず、親戚ともほぼ音信不通。
    いくらか思い出があるブルックリンを終の棲家に選び、自分のこれまでの愚行を書き記して過ごそうか、などと考えていました。
    街の古本屋で、甥のトムにばったり再会。これが親族では一番気が合う甥だった。
    トムから繋がってご縁が転がっていき、トムの妹や娘や母、古本屋の主人など、思わぬ出会いと楽しみが増えていくのです。
    やや上手く行き過ぎ?だったり、中年?男の身勝手さが垣間見えたり、というところも、ユーモアに包まれてます。
    熟年同士の恋愛まで恵まれて‥
    意を決した時の、彼女の余裕の反応が傑作。

    ポール・オースターは何となくもっと難しい作家のような印象があったのですが。
    レビューを見て面白そうと読んでみた、これは読みやすい。
    それもだいぶ前だけど、おススメしておきたくて。
    ポール・オースターは他に何を読んだのかは、いまだに思い出せません(笑)

  • 人間味あふれる、愛すべき登場人物たち!
    原作が面白いのはもちろん間違いないけど、
    翻訳がすばらしいな♪

  • 途中で挫折。

  • 様々な人生が凝縮されたような濃い一冊。

    六十歳を前に、妻と離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。
    街のの古本屋で甥のトムと再会してから、運命の歯車が回り始めます・・。
    アメリカらしい皮肉のきいた文章で繰り広げられる悲喜こもごも。
    タイトルの“フォリーズ”=愚行という事で、皆何かとやらかしています。
    ネイサンをはじめ、甥のトム、姪のオーロラ、古本屋のオーナー・ハリー等々・・。
    読みながら、“あぁ、アメリカの人も色々しんどいんだなー・・。”と胸に刺さるものがありました。
    内容的にヘビーな部分もあるのですが、ウィットに富んだ文体のおかげで重くならずにすんでいる感じです。
    一方、ある選択が思わぬ出会いや幸福につながったりと、こういった人生の妙が面白いです。
    後半にいくにつれて様々な問題が良い方向に向かっていくのかな・・と、思わせる展開なのですが・・。
    ラストのラストでネイサンが幸せをかみしめている瞬間が、2001年9月11日の朝8時という(そう、同時多発テロ事件の直前)、この終わらせ方はため息が出る程切なすぎるのですが、とても秀逸だと思いました。
    本当、人生って何が起こるかわからないですよね。良くも悪くも。

  • ハリーの人物像は、とにかく魅力的で、大好きだった。危なっかしいところもあるが、こんな友人がいたらなあ、と思う。映画を観ているような気分になり、ハラハラしたりしながらも楽しい。ただ、9.11の陰が。実は深刻な背景があることを、知って驚いた。

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