- Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102201213
作品紹介・あらすじ
緑の蔦に覆われた大学の古い建物、深い霧に包まれる森。東部ヴァーモント州の大学に編入した主人公リチャードは、衒学的なモロー教授のもとで古代ギリシアの世界に耽 する学生五人と知り合う。そしてある夜、バッコス祭の神秘を再現する熱狂の中で凄惨な事件が起こった。美と恐怖と狂気が彼らを駆り立てる──『罪と罰』を彷彿とさせる傑作長編小説! 『シークレット・ヒストリー』を改題。
感想・レビュー・書評
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(2024/03/19 5h)
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感想は下巻でー。
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枠組みは学園ミステリぽいが、それではいかにも軽く本作にはそぐわないし、そもそもこれはミステリではない。古代ギリシャ語専攻の浮世離れした6人のゼミ生、ヘンリー、フランシス、チャールズ、カミラ、バニー、そしてリチャードの物語。先4人が集団ヒステリーの事故で地元の男を殺してしまう。たまたま集団からはずれていたバニーがそれを嗅ぎつけて、疑い出す。その口封じのためにヘンリーが主犯となってリチャードを含む他4人の協力で、彼を事故死を装って謀殺するという事件。事件そのものは単純で、最初から読み手にはすべて明かされている。おざなりな捜査はあらぬ方へ向かって発覚をまぬがれるかに思われるのだが、それぞれが疑心暗鬼になって内部崩壊し、悲劇の幕を閉じる。そこへ至るまでのいなかの大学に隔離された高等遊民ともいえるサークルの心理ドラマが本書の主題だろう。ジュディやクロークに代表されるごく普通の大学生たちとの際立った対比から、グループの精神的特殊性が浮き彫りにされ、語り手にゼミの新参メンバーで微妙にずれた立ち位置にいるリチャードを配したところが絶妙だ。頭でっかちの世間知らずの悲劇といえば身もフタもないが、それを見事に肉付けして群像劇に仕立て上げたところが作者の手腕、といったら誉めすぎだろうか。
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読んでいくうちに彼らが狂っているのか、私がおかしくなり始めたのか、それとも正常なのかよく分からなくなってくる… いいところで終わったので、速攻で下巻読む。
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3.75/120
内容(「BOOK」データベースより)
『緑の蔦に覆われた大学の古い建物、深い霧に包まれる森。東部ヴァーモント州の大学に編入した主人公リチャードは、衒学的なモロー教授のもとで古代ギリシアの世界に耽溺する学生五人と知り合う。そしてある夜、バッコス祭の神秘を再現する熱狂の中で凄惨な事件が起こった。美と恐怖と狂気が彼らを駆り立てる―『罪と罰』を彷彿とさせる傑作長編小説!』
冒頭
『山の雪が解けかけ、バニーが死んで数週間たってようやく私たちにも事態の深刻さが飲みこめてきた。遺体が見つかったのは死後十日目である。州警察、FBI、軍のヘリコプターまでが動員されるというヴァーモント州はじまって以来の大がかりな捜索がおこなわれた。』
原書名:『The Secret History』
著者:ドナ・タート (Donna Tartt)
訳者:吉浦 澄子
出版社 : 新潮社
文庫 : 489ページ(上巻)
メモ:
・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」
・一生のうちに読むべき100冊(Amazon.com)「100 Books to Read in a Lifetime」 -
『罪と罰』を彷彿とさせるという紹介文に惹かれて読んだが、衒学的傾向(古代ギリシア語やラテン語が頻繁に出てくる)や、とかく自意識過剰な主人公群や、客観的には何てことのない物事を壮大かつ深刻に描くところが確かに類似しているが、さすがにドストエフスキーほど人間心理を真底から抉るところまでは至っていないし、文章の情報量も及ばない(ドストエフスキーの暗号のような文体は当時の検閲の副産物なので、現代にそれを望むのは筋違いではあるが)。特に主人公らが熱烈に信奉し、作品のバックボーンを提示する役割を担うギリシア語の「教授」がいまいち上手く描けておらず、終盤での拍子抜けする「変貌」もあって、物足りなさが残る。逆に20世紀後半のアメリカの青年社会を描く上で付き物の「薬物」の描写がやたらと具体的でくどいほどだが、正直冗長で徒労感を覚えた。
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小さい亀裂から殺人事件に落ちていく過程が面白い。しかも、この作者のデビュー作というから驚く
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(上下巻合わせてのレビューです)
長かった・・・。
実際、文庫本にして上下巻で1000ページを超える長さではあるのですが、個人的にはその1.5倍ぐらいの分量の話を読んでいるような印象でした。つまり文章一つ一つの密度がとっても濃い、労作であり力作なのです。
ただキングのように長さを気にせずどんどん読み進められるタイプのエンタメ小説ではないですね。私も読み終えるのに結構時間がかかりました。
面白かったかどうか問われればもちろんYESと答えます。冒頭から殺人が記述されているのでミステリとして読めるのはもちろん、サスペンス、悪魔祓いに代表されるオカルト要素、同性愛や兄弟愛といった禁忌など、盛りだくさんでお腹いっぱいになりました。登場人物がみな細かいところまできちんと描かれているのにも好感が持てます。ジュディ・プーヴィが特にいいですね。
不満もあります。まずリアリズム小説として読むと、学生が一人失踪しただけでこれほど大騒ぎするというのはあり得ないと思いました。また本家本元の『罪と罰』では最終的にラスコーリニコフがシベリア流刑という形で殺人に対するいわば公的な「落とし前」をつけていたのに対し、本作の終わり方はどうなんでしょうか。正直、私にはもやもやが残りました。これじゃあ農夫もバニーも浮かばれないのではないかと・・・ -
コワいよ。