ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫)

  • 新潮社
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感想 : 156
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102200025

作品紹介・あらすじ

トースターをまったくのゼロから、つまり原材料から作ることは可能なのか? ふと思い立った著者が鉱山で手に入れた鉄鉱石と銅から鉄と銅線を作り、じゃがいものでんぷんからプラスチックを作るべく七転八倒。集めた部品を組み立ててみて初めて実感できたこととは。われわれを取り巻く消費社会をユルく考察した抱腹絶倒のドキュメンタリー! 『ゼロからトースターを作ってみた』改題。

感想・レビュー・書評

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  • トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた結果』新潮文庫。

    今住んでいる街にあるBRITOMARTというお洒落な複合商業施設の片隅にひっそりと出店しているペンギン文庫で見付けた文庫本。ペンギン文庫に並ぶ本はセンスが良く、面白そうな作品が多く、ついつい手を出してしまう。

    さて本書。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの大学院生が卒業制作に原材料からトースターを作るという果敢なチャレンジを記録したドキュメンタリーである。

    やたら軽めのポップな文章でドキュメンタリーは進行する。まるでYouTubeの『◯◯をやってみた』シリーズ的なノリだ。

    9ヶ月の時間と15万円を掛け、3,060キロを移動し、最もシンプルな約500円程のアルゴス・バリュー・レンジをモデルにゼロからトースターを作った結果は。

    まずはモデルにしたアルゴス・バリュー・レンジを解体し、必要な部品を確認する作業から始まる。所謂、リバース・エンジニアリングだ。工場などでは試作品の製品を解体し、その逆順に組み上げて量産品の工程設計をするが、まさにそんな感じだ。

    そして、大学教授などからアドバイスを受け、苦労しながら、鉄やマイカ、プラスチック、銅、ニッケルを作り、トースターに組み上げる。その過程で著者が気付かされる、人間の大量消費文化の愚かさと課題。

    本体価格850円
    ★★★★

    • ゆーき本さん
      BRITOMARTに本屋さんがあるの知らなかったです!最後に行ったのはコロナ前だから だいぶ変わっているのかな?先週、見た目のオシャレさだけ...
      BRITOMARTに本屋さんがあるの知らなかったです!最後に行ったのはコロナ前だから だいぶ変わっているのかな?先週、見た目のオシャレさだけで選んだトースターが壊れましたゥゥ。・(つд`。)・。
      耐久性 大事( ー̀֊ー́ )
      2024/01/14
    • ことぶきジローさん
      BRITOMARTご存知でしたか。バンやケーキを販売しているエリアの片隅にペンギン文庫がありました。
      BRITOMARTご存知でしたか。バンやケーキを販売しているエリアの片隅にペンギン文庫がありました。
      2024/01/14
  • イギリスのブロガー、トーマス・トウェイツが書いた本。
    面白いと聞いたので読んでみた。

    内容は、まさに「ゼロからトースターを作ってみた結果」の話(笑)。ゼロから、というのは、原材料から、という意味。

    まずは、イギリスの量販店で売られている、安いトースター(3.94ポンド、約500円)を買ってきて分解してみる。たくさんの部品があるけど、いくつかの材料で作れるんじゃないかということを分析する。

    ・鉄
    ・マイカ(雲母、絶縁体として)
    ・プラスチック
    ・銅
    ・ニッケル

    鉄を作るために、すでに廃坑になっている鉄鉱石の採掘場に行って石をいくつか頂いてきて、自宅で鉄の生成をしようと頑張ったり、プラスチックを作るために石油会社にちょっと石油をもらえないかと掛け合ってみたり(結局、石油からは作らなかったけど)…。

    ブロガーなので語り口が面白いし、写真もふんだんに使われていて、なんだか面白い。

    あっという間に読めちゃう本。



    だけど、読み終わった後に残ったのは、funnyの意味の「面白かった」だけではなく、interestingの意味の「面白かった(興味深かった)」という思い。

    量販店で安く売られている、ちょっと便利なもの。
    でも、それを作ろうと思ったら、何倍も何十倍ものコストがかかる。
    そして、原材料を探したり、それを加工したりした時に気がついた、たくさんの無駄や、たくさんの有害物質。

    「あれば便利」という理由で、気軽に購入して、気軽に廃棄している製品たちは、人々の暮らしを豊かにしているけれど、その裏では、資源を消費し、自然を消費し、地球を消費しているのではないか、という気づき。


    面白おかしく読めるけど、ちょっと自分の消費行動を省みるきっかけになる。そんな本でした。

  • 単なる実験的な面白さを秘めた本かと思いきや、歴史や環境問題にも焦点を当てていく、素晴らしい本だった。いい意味でタイトルに騙される一冊。

    トースターは、どこの家にもあるものだが、価格帯も様々で、仕組みも全くわからない。わかるのは、どうやらトースターを使うことで食パンに狐色の焦げ目がつき、食感が変わるということくらい。

    入力と出力の間で何が起こっているのか、だけでなく、そもそもどうやって作られているのか、ということに疑問を持った著者は、まずは構造がシンプルであると思われる、最も安価なトースターを分解する。分解した部品を、鉄やプラスチックなどの原材料ごとに分けて、それらを入手していくところから始める。

    ゼロから組み立てていく上で、いくつかの細かいルールがあるけれども、冒頭でも述べたように、素材一つから覗く歴史や環境問題には、考えさせられる部分が多いと感じた。

    便利さを追求して、これからも様々なものが作られていくだろう。しかし決して忘れてはいけないのは、積み上げてきた技術への敬意と、環境への配慮だ。

  • アメトークの読書芸人にて紹介されており、手にとってみた。
    元々はブログに投稿していたらしく、内容にしろ豊富な写真にしろ、そのままブログを読んでいる感覚である。やっていることといい、どこぞのドキュメンタリー番組のようだが、検索してみたところ、著者が登壇されたTEDしか見当たらなかったが、こちらでは鉱山の映像(観光地と化したイルミネーションなど)も観れるため、読了後に見ると面白いかもしれない。
    部品自体を原材料の調達から始めるというやり方には好感を持てたが、当初考えていた完成形や作業工程でどこまでの技術に頼るかというルールが、電子レンジの使用だったり絶縁体不使用だったり、妥協点の多かったのが少し残念だ。しかし、金のない学生による奮闘記としてみれば、現実味があって妥当かもしれない。
    p190にて、完成品がどこかのトースター売り場に紛れて(それらと比べて5倍以上の価格で)陳列されている写真は、その写真に関する説明文は一切ないのだが、1枚の画としてインパクトがあり良かった。


    経済学者が昔から言うように、人に「無限の欲望」が備わっていると考えるより、単に、誰もが「貧しい側」にいたくないから消費の連鎖は終わらないのではないかと僕は思う。p182

  • 大学院の卒業制作として取り組んだトースタープロジェクトの記録。発想は面白く、まさに【ゼロ】から作るというもの。ゼロの定義から始まり、挫折し、ルールを柔軟に破りながらもトースターらしきものに到達する。物書きを生業にした人が書いた作品ではないので、正直、もっと面白くかけたであろう残念さはあるが、何となく大切なことを教えられた感じもする。他の書籍に比べて薄く、写真も掲載されているのに、なかなか読み進まない感はあるが、読んでおいてもいいと思える一冊。

  • ゼロからトースターを作ることの難しさがよくわかる本。

    そして我々は巨人の肩の上に乗ることによって視界が良くなっていることが実感できる。トースターを作れることも偉大だが巨人の肩の上に乗ってより遠くを見渡せることも同じぐらい大事だと思うので既存の成果はありがたく享受していく。

  • とっても無鉄砲かつ奇想天外で想像力をかきたてる試み。この発想力と行動力、そして不屈の根気、驚きと羨望の的です。時々人類が滅亡して自分1人が残されたら何ができるだろう、って考えてしまうことがあるけれど、実際にこんな実験をしてしまう男がいるなんて。こいつは将来何か大きな事をやってくれそうで楽しみです。

  • 以前単行本で出ていたときに読みそびれ、このたび文庫化ということで手に取った。単行本からちょっとだけ邦題を改題。

    原題がちょっと論文めいているんだけど、そのとおり、もともとはトウェイツ君の大学院での修士論文兼制作らしい。邦貨にして500円ほどのトースターを「原材料から作る」ため、研究者やエネルギー会社にメールで照会し、半分呆れられながらもコードに発熱体、ボディの制作に突き進む。そのさまは大まじめでありどたばたと滑稽で、突き詰め型の『できるかな』である。

    おふざけめいた軽やかな筆致で、自分の七転八倒をまとめているものの、実はかなり知的でストロングな科学・経済・歴史ネタのレポート。壊れてもすぐ買い替えられるような電気器具を構成する物質をどこから採掘し、どこでどのように精製し、成形していくのかを丹念に追っており、BBCの科学ドキュメンタリー番組を見ている感じがする。モノに歴史あり。

  • アメトーク読書芸人で紹介され、
    読みたくなったシリーズ第三弾
    ※取り敢えずここで打ち止め

    紹介されていなかったら、
    手に取ることはなかったし、
    十分に楽しめたので、
    「カモシダせぶん」さんに
    ありがとうとお礼を言わせてもらいます。

    トースターを分解するのは、
    まぁあるかなと思いますが、
    原材料を元にして製作しようと考える人は
    まずいませんよね。

    しかも、実際に作るなんて…

    感想を書いていたら、
    評価を5つにしなければという気になり
    変更しました。

    お薦めです♪

  • 大げさな言い方をすれば、世界の見方が変わる本である。

    山から鉄鉱石を採掘し、そこから鉄を取り出し…その他の材料もゼロからかき集め、加工し、あの「トースター」を作り上げる。なんとも途方も無い冒険譚がコミカルに描かれる。

    我々が何の気無しに使っているトースターのような類の、特別なものとして認識していないものは、多くの人たちが叡智を積み上げてきた歴史の産物であり、また、多くの人や仕事の手を経て、よくわからない複雑なプロセスを経て生産されてきた、じつはとんでもないものである。
    そんなとんでもないものが安価で提供され、また、環境を犠牲に生産され、そのコストは誰が負担しているのか…?というような、大量消費社会への疑問も投げかける。
    私達は、何かを知らなくても生きていける。知ろうともしなくなる。話が膨らむが、環境破壊や、劣悪な環境で働いたり、過ごしたりする人たちのことを知らずとも、大量生産の商品に囲まれ、ぬくぬくと暮らしていける。しかし、それでいいのだろうか…?

    そういう意味で、ものの見方が変わる…気がする一冊。とても面白かったです。

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