- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102169315
作品紹介・あらすじ
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。
感想・レビュー・書評
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いやあ、コワイコワイ。もちろん、殺人事件も怖いのだけれど、何より旧ソ連のスターリン体制が怖い。
スターリン大元帥の元での絶対的な体制では「殺人事件などおこるはずがない」とされていたこと。だから、そういう事件は「なかったことにされる」ということ。
それより何より罪が重いのは、「国家反逆罪」であるということ。それは例えば「外国人と接点を持った」だけでも疑いをかけられ、一度疑われたらほぼ「有罪」になることは間違いなく、有罪になれば、虐殺されたり、良くて過酷な強制労働に何年も尽かされたりするのだ。そして、子供のころから「反逆分子」は告発しなければならないと教育され、常に隣人の言動に目を光らせている。
この国で少しでも心地よい暮らしをするには、「国家に疑問を持たず、従う」ことなのだ。
あまりにもジョージ・オーウェルの「1984年」に酷似している。
ロシア革命は平和のための革命ではなかったのか?レーニンがもっと長生きしていたらどうなっていたか分からないが、スターリン体制になって革命の「目的」と「手段」を履きかえられたのではないだろうか。世の中に「絶対安心できる体制」などない。今の日本でも「学歴社会の線路に乗れば安心」だとか「大企業に入社すれば安心」だとか、「◯◯党が政権を取っていれば安心」だとか、盲信が一番怖い。この小説はロシアでは発禁処分にまでなったということだ。この小説を堂々と読める社会に住んでいる有り難さを享受しよう。
話がズレた。
国家保安省のエリート捜査官だった主人公レオは、あることがきっかけで自分が告発されたが、そのタイミングでスターリンが死んだために最悪の処罰は免れ、地方の工場の街の下っ端の警官として左遷される。
しかし、そこで目にしたある殺人事件のファイルが、自分がかつて「事故」として握り潰してしまった少年の死に似ていたため、「殺人事件をなかったことにせず、向き合う」警察署として目覚める。そして、人間としても目覚める。自分のことを愛してくれて結婚してくれたと思っていた奥さんが実は自分のことを「◯◯ったから」結婚したのだという事実、みんなそうだという事実を知らされる。知らなかったのは「国家保安省捜査官」という恵まれた立場にいた自分だけだったと。
ミステリーとしてはこれから。
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エグい
上巻ほぼまるまるスターリン体制下のソビエト連邦という名の理想郷について語られる
簡単に言うと「恐い」ただただ「恐い」
不条理すぎる社会で疑問や怒りや嘆きを抑え込んで生きる人々
じっとりとした恐怖で埋め尽くされたページをめくる度に心が耕されて備えさせられているのがわかる
理想郷を守るために行われる所業の数々に心が散々に乱され、夫婦の抑え込まれていた真実があらわになったとき
事件が動き始める
理想郷では絶対に起こるはずのない「殺人事件」が
「解決」という未来が少しも期待できない気持ちにさせられたまま下巻へ -
面白いなんて言葉で表現するのが躊躇われるくらい、この物語で描かれるスターリン体制下のソ連は最悪。
泣くことすらも国家への反逆の疑いをかけられて、処刑されるきっかけになる社会、やばすぎる。事実は小説より奇なり…。
なのにやっぱり、この緊迫感、前半主要人物かと思われた人があっけなく命を落とす衝撃、男と女の極限時の心理、お、面白すぎる、ページをめくる手が止まらない!!
上下巻の上巻は、こんなに読み応えあるのに、大量殺人に関しては、まるまる序章に過ぎないのもすごい。
どこも凍りついた土地で、被害者の口に柔らかい泥が詰め込まれていたのはなぜか、という謎がうっすら浮かび上がるのみ。これからどうなってしまうの? -
ソ連で実際にあった子供の連続殺人事件に着想を得たというミステリー。
1953年スターリン体制下で、国家保安省の捜査官としてスパイを取り締まるレオの仕事は、一瞬たりとも気が抜けない。判断ミスでスパイを取り逃がしたら、それは逃亡を手助けしたことになり、自分まで反逆者とされてしまうからだ。
その共産主義の思考は、私には無理矢理な展開をするなあと感じる極端なところもあって、注意深くなくてはならず、ひとつのうっかりも許されないようだ。読みながら知らずと息を詰めてしまい、疲れるんだけど目が離せない。
後半、転属させられるところからは、妻とのやりとりで人の心って分からないものだなと衝撃を受けつつ、さらに面白くなってきた。
殺人事件の捜査を始めたところで下巻へ。 -
ヤロスラヴリ発の鉄道の線路上で子供の死体が発見され、物語が動き出す。KGBの前身であるMGB(国家保安省)の捜査官のレオ・デミドフは子供は事故で列車にはねられたと説明するが、両親は犯人の目撃者もいて殺人だと主張する。忠実なソ連イデオローグであるレオは、貧困と欠乏を解消して犯罪のない楽園を目指す共産主義社会での犯罪の存在は、理想社会の実現を大きく逆戻りさせることになると考え、殺人事件の存在を否定する。その後、部下の策略により、地方の警察に左遷され、更にスパイとして糾弾され、流刑を宣告される。囚人列車から脱走したレオは連続する小児殺人事件の究明に挑む。グラスノスチ以前のソ連の誰もが疑心暗鬼に陥る陰湿な空気が感じられ、現代のロシアや中国も同じ空気に包まれているなと思及させられた一冊でした。
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スターリン体制下のソ連が舞台。国家保安省の捜査官が事件の真相を追求していく。上巻しか読んでいないが、かなり重厚な作品である。詳細は下巻に記すとして、とにかく読みごたえがある。
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前置きが長かった気がする…。
ソ連下での強烈な思想と、陰湿な体制が印象的。
最後にかけてうまく盛り上がっていったので、下巻も読んでみようという気になった。 -
上巻を今日1日で一気読みしてしまった
今の日本では考えられない状況で、国の考え方でこんなにも人生は変わってしまうのかと恐怖を感じる
昔は現実にこういう事があったんだろなと思う
今でも違う国だと有り得る事だろう
日本に生まれて幸せだと思った
事件の続きが気になるし、レオとライーサのこれからも気になる!!