長女たち (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101484204

作品紹介・あらすじ

あっちもこっちも不完全。そんなあなたが愛おしい。傷んだ心に効く8つのエール! 短編の名手の本領発揮! あなたは、そこまでして私の人生を邪魔したかったの――。認知症の母を介護するために恋人と別れ、仕事のキャリアも諦めた直美。孤独死した父への悔恨に苛まれる頼子。糖尿病の母に腎臓を提供すべきか苦悩する慧子。老親の呪縛から逃れるすべもなく、周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い長女たち。その言葉にならない胸中と微かな希望を描き、圧倒的な共感を呼んだ傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 3編構成。我が国の家族の縮図をみせられたよう。「ミッション」は読んで考えることがたくさんあった。発展途上の国での医療支援だからといって、その死生観までメスを入れて良いものなのかと。

  • 長女体質…主人公3人の思考、行動、いちいち同意出来た。ヤダヤダと思うけど、生まれてからの環境で、こういった性分は出来上がるのではないか?

    今まさに直美と彗子と同じ状況。
    きっと死ぬまで私は変われないだろうな。

  • ついあてにされ、行動でも心意気でも妙に力んで引き受けてしまう、これが長女に生れたついた者のサガ、わたしも長女だからよくわかる。わかるけれども、お人好しな要領が悪いところもあるようだ。
    という『長女たち』の「家守娘」「ミッション」「ファーストレディ」中編3つの内容。

    3編とも母親を介護することになって娘が奮闘するのだが、それらに登場する老いた母親たちが、モンスターのごとき、阿修羅のごとくわがままでもの凄いし、どんなに尽くしても満足もお礼もない母親の娘に対する「私物化」が情けない。そんなに激しく描かなくてもと、もう高齢のわたしなど身を縮めてしまうけど、篠田さんのオカルトめく筆はうまくて参ってしまう。

    母親の立場、娘の立場の両方に感情移入して読んだ。寄り切られっぱなしでもなく、娘たちの再生もほのめかされていて、それがホッとさせられる。

  •  さすが、篠田節子さん‼︎ シャープで面白い。
    わたしも長女なので、大いに共感しました。

    『家守娘(いえもりむすめ)』
     認知症の母の介護に悪戦苦闘する長女。 恋も仕事も、次から次へと・・・。 しかし、最後は期待通り。 力強く生きていく姿に安堵します。

    『ミッション』
     舞台は、ヒマラヤ奥地の貧しい村。
    生と死、医療、生への巡礼・・・わたしたちにとっては残酷な現実を教えてくれます。
    なので、涙とともに心には苦い味が広がりました。
    しかし、その苦味を味わい尽くした後には、不思議とほのかな甘味が広がるような味わい深い素晴らしい物語です。

    『ファーストレディ』
     『ミッション』(シンプルな生と死)の余韻のなか読み進めると、否応無く、日本の家庭・医療を見る目は、冷ややかなものになりました。 それでも、葛藤し頑張る長女には共感してしまうのです。
    糖尿病を患う母に対する長女の立ち位置は、弟とも父とも大きく違います。 それは、家庭の構造と長女自身によるものか? 理性と情の狭間に不必要な罪悪感も加わり・・・。
    そして、母が舅姑に仕え見送った過去の様々な思いにも気づき、母に臓器を提供しようと思うのですが・・・。

    『お父さんの臓器なんか、死んだってもらうのは嫌だ。』(母の夫への思い)
    『病気ではない体にメスを入れさせて、万一のことがあったら・・・』(母の息子への思い)
    『あんたのなら自分の体と同じだもの』(母の長女への思い)

    ラスト、長女の選択は?


    感慨深い小説です。 わたし自身、高齢の親がいる身です。 そんなわたしに覚悟の二文字を与えてくれました。 
    " 明るい気持ちで淡々とシンプルに受け止める "
    それほど、心に響きました。
    特に、『ミッション』は。

  • なかなか恐ろしい内容だった。

    以前親しかった学生時代の次女の友人が
    『長女って僻みっぽいから〜』が口癖だった。

    理由はその子の姉がよくその子に説教をすると。
    『親から家を買う資金をもらったとき、姉が説教してきた。羨ましいなら自分も貰えばいいじゃーんね!』と言っていた。

    彼女にかかると『いいなぁ!羨ましい〜』と言うお世辞すらも長女が言うと『僻み』となるらしい。

    この事から、なるほど根本が違うんだなと感じたのを覚えている。
    彼女の姉は『羨ましいから』説教したのではないと私は思ったから。

    本当に長女として、親の事や妹を気にかけていたのだと思う。

    現に妹の方は、その時の旦那とは離婚し一年もしないうちに別の男性と子連れ婚した。
    昔から男をコロコロ変えていたので驚きはなかったけど、彼女の強さというか、図太さにむしろ尊敬した。

    きっと、その子の姉が離婚したら、そうはいかないだろう。子供の事、親の事第一に考えてしまい自分の幸せは二の次にしたと思う。

    これは長女だから次女だからとは関係ない話だけど。
    この本を手に取る度、その姉妹を終始思い出し、また私も長女なので、弟達の『世話はしないが偉そうに口を出す』態度と重ねて読んだ。

    母と暮らす私は、いずれ来る介護に少し緊張感が生まれた。

  • 「長女」として
    母親への思い、葛藤、振る舞い、立場

    同じ長女として 痛いほど感じるものもあったし、怖くもなった。

    「ファーストレディ」なんて、ホラーかな?って思うほどに 母親の言動に狂気を感じた

    『あんたのなら自分の体と同じだもの』
    ……こっわーーーー!

  • あー、迫力すごい…

    畳み掛けるようにこれでもかこれでもかと突きつけられるかんじ。的を得ていてリアルで容赦ない。

    あっという間に読んでしまう。

    長女としては思い当たる節もたくさんあるし…なんか怖かった。

  • 三つの長女たちの話
    親たちの認知、孤独死、糖尿病に悩む長女たち
    「ミッション」は世界が違いすぎて理解出来なかったが、他の二つは共感するところが多かった
    「周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い長女」わかるわー

  • 現代の日本人が抱える高齢者介護の問題を考えさせられました。親子の関係性が密だと言われる現代。その先にある問題でもあるように感じました。
    3つの物語で構成されている作品ですが、介護に答えがあるとしたら、真ん中の作品の中に見出せるのではないかと、考えさせられました。世界には、死を日常の一部として捉える…そんな日常を送る世界があり、現代医学の進歩の副作用的な結果としての高齢者介護問題に苦しむ日本社会との対比が鮮烈でした。
    現代の日本(西欧社会に影響を受けた)の価値観が本当に幸せなのか…そんなことを深く考えさせられました。

  • 「家族だからできる」と言われていることは、家族だからこそできない。きっと、家族だから、より残酷で、逃げ場がなく、追い詰められていく。最後の一言を何度も呑み込みながら、耐えながら。

    3編の主人公は、このままでは逃げ出すしか救われない。そんな気がする。介護退職なんてもっての外、どうやって生活するの?看取った後、どうするの? そんなことを考えてしまう。
    親と対峙する必要があるのかもしれないけど、「家族だから」できない。絶対に、ヘルパー、介護システムを頼るべきだと思う。令和の時代だから。

    高齢化が進むことによって、健康寿命以降の過ごし方が問題になってきている。特に、介護する側に。「ミッション」で描かれているように、長生き(延命)は本当に幸せなのだろうか。節制しながら生きていくことは喜びなのだろうか、と考えさせられます。

    「そんなに長生きしたいの?」そして「長生きして何をしたいの?」。ふと、そんなことを想ってしまう。子どもの肝臓を移植して生き延びようとは親なら絶対思わない、と語る父親。しかし、母親は…。そして、なぜか理解ってしまう。それが、かえって辛く、悲しい。

    長女。きっと真面目で責任感がある娘かな? 介護は、責任感がある人に負担がかかる。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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