すれ違う背中を (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101425511

作品紹介・あらすじ

パン職人を目指して日々精進する綾香に対して、芭子はアルバイトにもなかなか採用されない。そんなある日、ビッグニュースが!綾香が商店会の福引きで一等「大阪旅行」を当てたのだ。USJ、道頓堀、生の大阪弁、たこ焼き等々初めての土地で解放感に浸っていた彼女たちの前に、なんと綾香の過去を知る男が現れた…。健気な女二人のサスペンスフルな日常を描く人気シリーズ第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第二弾。
    前科のある女性二人の日常を描いた話。
    町の人たちとの交流や、周りで起こるちょっとしたトラブルが描かれ、ハラハラする場面もある。

    二人の会話がほのぼのと弾んで面白い。お決まりの会話があるのだ。
    綾香「私たちがあそこ(刑務所)に入っていた時さ…」「ここ、あそこを思い出すね」
    芭子「しっ!綾さんってば!もうっ!誰が聞いているか分からないんだからね!気をつけて!」
    綾香「ごめんごめん!」「大丈夫だってば」

    読者としてはクスッと笑ってしまうこの二人のやり取り。しかし彼女たちにしたら切実な話。恐れているのは世間に過去が知れ、やっと住み慣れた街で暮らせなくなること。極力他人との関わりを避けているのだ。

    「目立たないように、息を殺して地道に生きていく。自由なようで自由ではない、常に怯えて緊張している。出所後の方が重たい罰を受けている気分になることもある」

    こんな気持ちでいるんだ……切ない。
    自立に向けて、真面目に地道に生きている二人を応援したくなり、こちらがじわ〜と温かく優しい気持ちになれる感じ。
    私は犯人を追うようなミステリー小説が好きなのだが、たまにはこのような物語を読んで考えさせられるのも良い。

  • 図太く陽気な綾香のイメージが、この本では随分変わった。辛いとかキツいとか声に出して愚痴ったり態度に表さずに、ぐっと堪えて辛い時こそ陽気に過ごす綾香。理想的ではあるけど、こんな風にはなれないなあ。
    マエ持ちゆえに、周囲に対して敏感で用心深くて、なんとも切ないけれど、だからこそ起きる勘違いにもちょっと笑えた。

    芭子と綾香に明るい未来が見えかかってきたけど…次はどうなるのだろう。このまま明るい未来へとつながります様に。

  •  マエ持ち女2人組シリーズという事で買ってみた一冊。
    第二弾

    マエ持ち女2人組の日常を描いた話

    前作でも思ったが、やっぱりこのコンビはいいコンビだ。
    お互い信頼し合っているのがよくわかる。
    過去の事を気にしつつも2人とも夢や目標に向かって仕事をしているのはすごくいい。

    短編の話でそれほど盛り上がりがあるわけでもないが、なんか話に引き込まれてすぐ読み終えてしまった。

    まだシリーズはもう一冊ある。
    次はどんな展開か楽しみであり、このコンビがこの信頼関係をずっと続けていたらいいなと感じた小説でした。

  • NHKのドラマ10を見て、初めて乃南アサと出会い、すっかり魅了され、マエ持ち女二人組シリーズの2作目を慌てて買いました。

    義理人情の東京下町、そこで主人公を取り巻く人たちのあたたかさ…
    遂に夢を見つけ、先は見えないながらも歩き出す主人公の姿に、感動しました。

    それとともに、私もがんばらなくちゃ!
    変わらなくちゃ!
    と、清々しい気持ちにもなりました。

    1/22発売の単行本「いちばん長い夜に」でマエ持ち女二人組シリーズは完結らしいですが、もっと続けて欲しかったなぁ。

    文庫になるまで待てないので、週末に買いに行ってきます( ^ω^ )

  • 「いつか陽のあたる場所で」の続編。大阪・USJ旅行での出来事「梅雨の晴れ間に」、芭子が見つけたペット犬の服の創作「毛糸玉を買って」、謎の男性笠間との邂逅「かぜのひと」、DV被害者まゆみの顛末「コスモスのゆくえ」の4つのエピソード。

    芭子、綾香と世間との繋がりが徐々に太くなっていく。ビクビクしながらも、生き甲斐を見つけて生きていく二人。その後が気になる。

  • 「いつか陽のあたる場所で」から続く前科持ちの女2人、ハコとアヤのシリーズ二作目。
    路地に入れば郷愁を感じるゆったりとした時間が流れるが、外に出出て行くと違う世界が広がる…谷根千の下町を舞台にしていることでハコの心情や物語の情景が理解しやすい。
    前作より2人は路地から大通りに出てこられるようになってきたように感じるし、ハコは顔をあげて歩いているようにさ思う。
    そんな中でごく当たり前の小さな幸せを掴んだと思うと思いもよらない形でスルリと逃げていくもどかしさ…いいなあ、この物語…乃南さんの世界は広い。

    「人生は、いつも過去とつながっている。まったく悔いのない道を歩んできている人など、まずいない。」
    という一節はズキっとした。

    余談ですが、高木聖大シリーズの方が先に存在してたんだ、このシリーズに高木聖大を登場させてるのは乃南さんの遊び心なんですね。
    つぎの三作目がシリーズ最後のようです。

  • 元受刑者の女性の話。
    なんだか面白いエピソードが多くて、この作家をよみつづけてみたくなった。

  • 前持ち二人、怯えたり開き直ったり楽しんだり泣いたり、前向きに生きてる。

  • 描写が上手いな のめり込んでしまう

  • 日常の中の非日常…。そうそうそんなことは起きないだろう、とツッコミながら読み進めると、芭子の成長が感じられ、見守っているように錯覚してしまう。流石ですね…。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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