二十歳のころ 1 1937-1958: 立花ゼミ調べて書く共同製作 (新潮文庫 た 59-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (633ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101387222

作品紹介・あらすじ

「二十歳のころに何をすべきなんだろう」「あの人は、どう過ごしたんだろう」-若き日に誰もが抱く不安、期待、焦燥。二十歳を生きる東大・立花ゼミ生が各界で活躍する諸氏に直撃取材!第二次世界大戦勃発、原爆投下、日本国憲法発布、公害問題、東京タワー竣工…帝国主義から民主主義へ、日本が劇的な変貌を遂げた1937〜1958年に「二十歳のころ」を生きた有名無名31の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 感じたことは多々あるが、
    生きることはどの時代においても必死な作業なのだ。
    作業は文字通りに「生きる」を意味することもあれば、
    時代によって「職を見つける」「幸福を追求する」というものにも変化する。
    現代の若者は、その意味合いにおいては、
    最大限の幸福、つまり精神充足の機会を与えられていると言える。
    生かさない手はない。

    ●立花隆
    「情的な理解。基本は共感を持って相手の心の中の状態を思いやることである。人の心の複雑さに対する十分な知識を持って、情的な想像力を働かせることである」
    「子どもが大人になるというのは、実は他人と言うものが、自分とメンタルにまったく異なった存在で、ものの見方、考え方、感じた方が全て違うということを知ることなのである」
    「話しを聞くと言うのは、相槌を挟みながらうなづいて聞くという意味ではない。言葉ひとつひとつから、相手の言いたいこと、言いたくないこと、現在と過去を読み取り、その情報を基に自分の中にその人の像を結ぼうとする作業だ。それは別の見方をすれば、相手を介して、その時の自分に出会うことである」

    ●川上哲治
    「本当に不安だったね。自信を持つ根拠がほしかった」

    ●鶴見俊輔
    「私のとっては、世界に対してこういう興味をもつ人がいるんだなぁという、人間の形についてある認識を得た体験だった」
    「哲学と言語の結びつきがはっきりわかった。ヨーロッパ圏内では、それは2500年かかって日常言語からゆっくりと蒸留されてきたもの。よって哲学の基本的な用語も、日常用語の中に根がある。日本では、明治になって、漢訳仏教から苦心して受け皿を作った。一瞬で。だから日常用語に根がない」
    「私の判断は、理性では正当化できないし、根拠付けることができない。だけど、感情が動く」

    ●水木しげる
    「貸本マンガで生活していたときは、年中無休で執筆時間が1日16時間だったけれど、戦争に比べれば遊びみたいなものだった」
    「好きなことをするのは思い切りがいる。一生を棒に振ることになるから。最初はやりたい内容の非常に浅い部分しか見えない。深いところまでいくにはやってみないといかん。」
    「専門知識だけを求めるのは神を見えにくくする。癖のある考えに没頭してしまうから。世界の全体を追求する必要があるんです。そうしないと見えません。」
    「絵でしか精励や妖怪と会話ができないと言っています。屁理屈は要らないんです。人は自分の屁理屈に無上の価値を置きます」

    ●茨城のり子
    「新聞読むと。そうか戦争は間違ってたのかって具合に、また洗脳される。せめて一年ぐらいは自分でもう少し考えておけばよかったなって思うわけです」
    「初々しさが大切なの。人に対しても世の中に対しても。人を人とも思わなくなったとき堕落が始まる」
    「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」
    「愛するというのはどういうことか、少し目覚めて欲しいのです。相手の欠点も、ダメな部分も含めて能動的に愛するってことは大変ですけれど。自分も傷つくし。」

    ●恒成正敏
    「人間歳をとると、非を非として認められる柔軟さがなくなってしまって、むしろ信念として自分の考えに固執する」

    ●板垣聖宣
    「こんな説明を聞いただけでは分かるはずないのに、それを分かったように振舞うのは、答えの出し方を覚えちゃっているだけだととわかってきた。そういう人たちは正しい答えは出せるけれど、その答えが正しいことに確信はなっかたりする」
    「無理に思い込もうってしてたんじゃないか?と思えてきた。それでボクは、日本だけでなく、世界中に自分の頭で考えられる人はほとんどいない!って思って、愕然とした。秀才面した奴は自分自身の頭を使って考えない。」
    「創造的な意見って言うのは他人を説得することができる意見なんだ。」
    「迷信というのは、実は超合理主義。あやゆることに根拠があると思うことが、迷信をつくっている」
    「自分には何かの適正があると思ってるでしょ。本当はそんなものないんだよ。きっと。ただ、落ちこぼれればある。いろんなことに落ちこぼれて、これしかないってものはね」
    「話しをするということは、普段から考えてることを言うことも少しはあるけれど、そうじゃなくて、話して初めて、オレはこう考えていたのかとわかる。だから話したらいいんですよ」

    ●妹尾河童
    「自信という鎧を着ることじゃない。使えそうなものを引き出しに溜め込んで準備することでもない。‘感性を磨いておくこと’。絵をみること。音楽を聴くこと。本を読むこと、疑問に持つものに出会ったら調べてみること。それも、‘今にこれが役立つはず’というセコイ根性じゃダメ。何の役に立つかなんて考えないで言いの。自分が興味を持つものがあり、それに答える生き方をしていけばいいんだから」
    「ボクは野良犬のように気ままなだけ。興味を持った方向に足が向いてしまう。自由に考え自由に行動するというのは気楽なようだけどリスクを負う。リスクを少なく生きるには、社会常識というルールに従ったほうがいい。そこには我慢することがいろいろあるだろうけど、我慢の代償として手に入れられるものがあるからね」
    「自分の味覚基準で、ウマクナイ、甘すぎて妙な味だ などと言ってその土地の食べ物を批評するのはとても失礼だしおこがましい。その土地の人たちが食べている文化なんだから。10年も住んでいればきっと美味しいとおもうようになる」

    ●曽野綾子
    「私はとにかく書いていました。私は文学を論じる人が好きじゃなった。その頃いろんな文学を論じてはいても、自分では書かない人がいたんです。そういう人がすごく嫌だった」

    ●吉田勝二
    「今では本当に生きていて良かったとおもいます」

    ●黒柳徹子
    「あなたの個性はなんとかなりませんか?もっと普通の人みたいにできない?って毎日のように降ろされていました。でも全然打ちのめされたような感じはなかった。何もコンプレックスを感じなくて、ただみんなは上手だなぁと」
    「演技をしないということ。テレビの前で観てくださっている方々が、ここは面白いと思うはずだから私も笑おうとか、悲しいはずだから泣こうというようなことは一切しない」
    「何をやるにしても、長く持続した方は偶然出始めた人が多い。だから比較的謙虚な気持ちで努力する」

    ●吉川弘之
    「必ず誰もが自分の専門分野を作っていくんだけれど、専門と言うのは必ず人間をだめにする、いやそう言っちゃいけないか。けれど、専門というのは、人間をある意味でひとつの歯車にしてしまうわけでしょ」

    ●山田太一
    「政治ってのはマス。一般性普遍性を問題にする。いわが一般性のためには、個別はある程度死んでもしょうがないっていう世界。でも文学は逆だよね。個別性を重視するというか、一般性ではくくれない」
    「時に本って言うのは急に世界が全部説明のつくものっていう気にさせることがある。そういうときは、俺はこんなに頭が良くなっちゃたのかなんて興奮しちゃうよね。でも内発的なものじゃないから細かく突っ込まれるとおろおろしちゃう」
    「幸福ってのは不安定なもので、人間ってのは楽しみも悲しみもそんなに長くは続かずに、その間を揺れ動いているんだとおもう、だから至福と思えるときが切れきれあればいいんじゃないかな。辛抱が大事だって」「めんどうくさいことをやるといいとおもうね。例えば厚くて難しい本を読むとかね。理解できなかったとしても、案外後々の蓄積になる。何かが残る。効率的に過ごそうなんて考えないことですよ。一見無駄なことでも力になるもんです。かえってそういう無駄を体験していない人は狭くて弱くなる。体験と言うのは、よくも悪くもリセットしたら消えてなくなるというものではないとおもう。そしてどの体験が人格の形成によき痕跡を残すかはにわかに判断できない。だから自分の生活をそのときに価値判断で支配してはいけないとおもう。つまり、ある価値観に基づく効率からはみ出る時間を生きることが大切だとおもいます」

    ●大江健三郎
    「人に文章がまずいと言われると、それは違うとおもいました。自分はこういう文章を書こうとしているのであって。もともとそういう批判をする人とは違ったものを書こうという意識で書き始めている」
    「自分が子どもの頃から得た生きる知恵や倫理だけが生きていると感じた。大学で何年も勉強してきたものが自分を支えていると悟った。大学で何年も勉強してきたものが自分を支えていないということを知った」
    「神様に矛盾を統一してもらって矛盾を統合することはできる。しかしボクは自分の側から乗り越えて生きたい」

    ●横尾忠則
    「ボクは一人っ子で、両親に溺愛されて育ったせいか、甘えるのがうまかったんだろうね、その分わがままに育ったし、何より妥協しない性格になっていたと思う」
    「知識だけを根拠に行動すると、結果を予想して損得を考えてしまう。知識によらないで損か得かわからないままに行動するのがいい。それは一種の賭けで冒険。」
    「芸術も人を幸せにするとか、心を癒すとか、よりよき社会を作るとか、色々な目的と意味があるんだろうけれど、それは結果。作ってるときはそんなこと考えなくていい。そういう意味ではそれは遊びに近い」
    「十代の間に溜め込んでいた、吐き出せないものが一杯あるんだけれど、ボクはそれを一つ一つ表現しているというわけ」

    ●山藤章二
    「成功情報が圧倒的に多い。情報化時代の罪というのは、人間を非常に卑屈にするところにあると思う。」

    ●松本零士
    「奇妙な自身を持った自分 と 糸が切れたたこみたいになった不安定な自分 が交互に出現したおもしろい時期」
    「創作の世界は自分の責任」

  • どんなにスゴイ人にも、私と同じようにもがきながら、楽しみながら、もしくは何も考えず、二十歳の時代があった。私も今まではさておき、「これから」そして「今」をどう生きるかで思いを巡らせることができた。

  •  著名人から一般人まで。「20歳のころ」をテーマに、東大生が興味を持った大人にインタビューをし、文章にまとめた作品集。よくよく考えれば20という数字に、特別な意味はないのだが、多くの人が何かしらの意味づけをしている。
     20歳前後で人生に悩んだ経験を話すインタビューがこれだけ並べられると、ろくに世の中も知らないまま部屋にこもって、絶望したふりをする自分が恥ずかしくなる。文章として紹介される価値すらないから黙って動こう。

  • 2021/4/30に亡くなられた「知の巨人」立花隆氏が東京大学の教養学部で主催していた、「調べて書く」ゼミナールの成果を書籍化したもの。

    所蔵情報:
    品川図書館 159.7/Ta13/1
    ※2巻も所蔵しています→品川図書館 159.7/Ta13/2

  • 【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2000966657

  •  そのとき、松本零士が「自分があんなに貧乏しても、漫画家になれたのは、日本は文房具が安かったからだ」って答えていたことが印象に残っています。
     

  • 「二十歳のころ」に、模範解答はありません。その人ならではの「二十歳のころ」があります。この本を通じて、いろんな二十歳に出会って下さい

    大分大学 経済学部 (分野 貿易政策)
    教員 柴田 茂紀

  • すごく内容がでこぼこしていて、オーラルヒストリーらしさが出ている。

    その理由のひとつは、各人の「20歳体験」のでこぼこさ。
    例えば第二次大戦の体験でも、ある人は「あのころは全国民が戦争に勝つと信じてた。それを『実は戦時中にも反戦思想を持った人は多かった』みたいに言ったのは戦後のメディアや教育現場においてで、そういう言説に踊らされちゃだめだ』という人がいる一方で、「実際に当時から『はやく戦争に負けないかな』って思ってる人は多かったよ」と自身の体験から語る人もいる。
    ではどちらかが間違っているのかというと、そんなことはなくて、どちらも自身の経験に根差した真実なんだよね。

    もう一つの理由は、インタビュワーの能力からくるもの。
    読むと分かる通り、その記事の形態はひとつひとつ微妙に異なっている。おそらくインタビューの時間やかたちも異なっていたんだろう。記事の質に差があることも否めない。
    でもそれも含めておもしろい。そこから「インタビュー」という場が対象として見えてくるから。
    つまり話者の一方的な20歳のころの話だけでなく、それと対峙する20歳くらいの学生たちの存在が隠れきれずに見切れていて、その「20歳のころ」同士がクロスする点にひとつの記事が立ち上がっている。

    20歳なんてでこぼこしてなんぼなんだろうな。もちろんここでいった「でこぼこ」はすごくいいことだと思っている。

  • 非常に面白い
    二十歳前後の若者は読むべき
    個人的には大学入学後の一冊目

  • 青春とは、来るべき船出へ向けての準備期間である
    漫画家、詩人、小説家、被爆者・・・。多士済々
    31名に東大生が突撃取材。
    さまざまな「あの時代」

    誰もが不安と希望、焦燥と葛藤を抱き、だからこそ自分の生き方を発見する時期。
    それが二十歳のころだ。
    第二次世界大戦、原爆、憲法発布など、激動の時代に青春期を迎えた人々は何を考え、どう生きたのか。
    1937年から1958年に二十歳を過ごした31人に東大・立花ゼミ生が突撃インタビュー。(アマゾンより)


    印象に残った人物、言葉

    川上哲治
    「まあこれから人生を決めていくんだから、自分の人生を、ちゃんと、俺は何を持って生きていくんだっていうのを早い時期に決めたらそれを貫いていくようにしたらいいんじゃないかな。・・・ある目標を立てたらそれを貫く。中途半端にいろいろやっていると、生きてて良かった、と言う感じがなかなか出てこないんじゃないかな」

    水木しげる
    「好きなことをするには思い切りが要ります。最初はやりたい内容の浅い部分しか見えてないです。深いところまで行くにはやってみないとわからん」
    「本当の人生は、60歳からですよ。」

    茨木のり子
    「ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな

    みずから水やりを怠っておいて

    気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな

    しなやかさを失ったのはどちらなのか

    苛立つのを 近親のせいにはするな

    なにもかも下手だったのはわたくし

    初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな

    そもそもが ひよわな志にすぎなかった

    駄目なことの一切を 時代のせいにはするな

    わずかに光る尊厳の放棄

    自分の感受性くらい

    自分で守れ ばかものよ」

    森毅
    「受験戦争なんて何をぬかしとんねん、僕なんかの時代やとぐずぐずすると兵隊さんに取りに行かれて、人殺ししなきゃならなかった。戦後なんかはうっかりすると飢え死にする。今の日本やったら大体何したって大丈夫やろう。」

    加藤恭子
    「私は子供を育てるときに、たとえば大学受験のときでも、勉強しろとも、大学行けとも言わない。でもただ、『きけわだつみのこえ』だけ渡した。これを読んだあとでもなおかつ大学へ行きたくないのなら、それ一向にかまわないと。」


    板倉聖宣
    「海岸線に立って船が向こうから来るのを見ていると、マストの先から段々見えてくるのは、地球が丸い証拠だと言う有名な話。」
    板倉は、「もしそれが本当でも、海には波があるじゃないか」と考えてしまう。そのあとアリストテレスの山のてっぺんが先に見え、そのあとふもとが見えると言う話を聞いて、しっくりきたという。

    妹尾河童
    人を惹きつけるためには、感性を磨いておくこと。
    感性を磨くとは、絵を見ること、音楽を聴くこと、本を読むこと、疑問を持つものはすぐに調べること。自分が興味を持つものに常に応えていく生き方。

    筑紫哲也
    「理屈で災害救助だとか、社会保障だとか考えるのと実際は相当違っていて、個々の問題にぶつかると、論理的にスッスッと切って処理できない問題の方がはるかに大きいということを、土木作業をやりながら感じたわけです」

    山藤章二
    「愚かな者というのは、生涯常に不満を持っているものことをいう。賢者とは相対的な豊かさではなく、自分の満足を早くみつけたものを指す。」

    「君たちへのメッセージとしては『勝手にしろ』『お気の毒に』『迷え』だな」


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    この世代に共有されているもの、戦争である。
    本書を通して、直接的な形ではなく、それぞれの経験や人生の形に組み込まれた戦争を感じることが出来た。
    戦時中、戦後の過酷な生活環境を生き抜いた彼らは、タフでハングリーで、未来に希望を持っていた。
    現代に特有の問題も多いが、彼らの時代から良い意味で刺激を受け、未来に繋げていく、そんな気持ちにさせてくれる本だった。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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