殺人者はいかに誕生したか: 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く (新潮文庫)
- 新潮社 (2015年3月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101374529
作品紹介・あらすじ
世間を震撼させた凶悪事件の殺人者たち――。臨床心理士として刑事事の心理鑑定を数多く手掛けてきた著者が、犯人たちの「心の闇」に肉薄する。勾留施設を訪ねて面会を重ね、幾度も書簡をやりとりするうちに、これまで決して明かされなかった閉ざされし幼少期の記憶や凄絶な家庭環境が浮かび上がる。彼らが語った人格形成の過程をたどることで、事件の真相が初めて解き明かされる。
感想・レビュー・書評
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2021/2/28読了。
「凶悪犯罪者は性根が腐っているからそんなことができるんだ」と論ずるのは簡単だが、「なぜ腐ってしまったのか」を臨床心理士の観点から丁寧に紐解いているのが本書。
獄中の死刑宣告者と何度も面会をし原因を探っている部分は非常に興味深い。
また、本の主題ではないが、臨床心理士である著者の長谷川氏は折に触れて「裁判所とは真実を明らかにする場所ではなく検察と弁護士の駆け引きの場」と暗に(時に直接)揶揄する場面が見受けられる。
そういった司法の場の裏の顔も垣間見れるという意味でも読んで損はない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
題名のせいか、読みだすまでに時間が掛かった。しかし読み始めると、ディープな内容に関わらず、どんどんと引き込まれてゆく。
真実を明らかにして、同様な犯罪の再発防止と、社会的支援のあり方を探ろうとする著者が、量刑判断の場としての裁判所、そして、量刑を軽くする事を一義的目的とする弁護団との間で苦労する姿に感動を覚える。
メディアの報道では、発生した事件そのものにしか触れないが、その背後にある犯人の成長過程にまで遡ると色々な事実が浮き出てくる。その様な事態に至る前に、社会として何か出来たのではないか?と思わざるを得ないと同時に、社会の位置構成員である自分の無力さ、ある意味の無関心さに不甲斐なさを感じる…
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臨床心理士による殺傷事件の加害者との交流からの考察。
幼児期の愛着関係、家族との関係性の質、学校や社会での対人関係、事件が起こる直前のストレスなど複合的に絡み合っていることを物語のように説明。
加害者本人寄りの発言と自らだけに心を開いているという思いを強調しているような印象は否めないが、再犯予防のための真相解明の必要性、裁判での量刑判断重視の方向性については考えさせられた。 -
殺人者はいかに誕生したか:「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く。長谷川博一先生の著書。凶悪犯罪者と呼ばれる殺人事件の加害者たちのこれまでの生育環境、家庭環境、生活環境に焦点を当てています。人間の人格形成や価値観の形成にあたって、生育環境、家庭環境、生活環境がどれほど重要であるかが理解できる良書です。もしこの本で紹介されている「殺人者」たちと同じような壮絶な環境に置かれていても同じような犯罪事件の加害者にならなかったと断言できる人は多くないのではないでしょうか。
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長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く』新潮文庫。
臨床心理士の著者が10人の凶悪事件の殺人者と面談し、その心の闇と事件の真相に迫ろうとするルポルタージュ。非常に難しいテーマであることは理解出来るが、これでは被害者と被害者遺族が救われないと思う内容だった。
科学の進歩という点で心理学を否定する訳ではないが、常々心理学というのは人間を型に嵌めて、分類する学問ではないかと疑問を感じている。こうした凶悪事件が起きる度に犯人に貼られるレッテルは人格障害だの解離性同一性障害や統合失調症などである。
また、犯人の生い立ちや幼少期にまで言及し、まるで罪を軽くするためのレッテルを貼っているとしか思えない。犯人の心理を分析することで、同じ凶悪犯を産み出さない努力をするのが、科学の進歩ではないだろうか。 -
最近、幼少期の体験と心の闇に興味があります。
かわいそうな人が減っていきますように。
また、司法がもっと今後の悲劇を生まないためのものになりますように。
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47
生来的な素因に成育上の問題点が付加され、両者が相乗的に作用し合い、さらには犯行直近に社会的ストレスが加わるといういくつもの要因が複合することによって、犯罪は生まれるものなのです。
50
自分の信念に合致しない情報は排除されてしまう、そんな認知スタイルが出来上がっているとの仮説もたてられます。
59
解離は、通常は統合されている心のさまざまな働きが部分的に断絶してしまうことの総称で、その現れ方も多種多様です。解離も、心の崩壊を守るための防衛と考えられ、無意識のうちに進行します。
虐待を受けた人は多かれ少なかれ解離を示すものです。のちの章にも繰り返し登場する解離の概念ですが、解離性健忘はその典型です。記憶が現在の意識との連絡を断ってしまうものです。 -
★★★☆☆
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重大凶悪事件を起こした人達を
臨床心理士との獄中対話で読み解いたルポ
重大凶悪事件は以下
池田小学校児童殺傷事件の宅間守
埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤
大阪自殺サイト連続殺人事件の前上博
光市母子殺人事件の元少年
同居女性殺人死体遺棄事件の男性
秋田連続児童殺害事件の畠山鈴香
土浦無差別殺傷事件の金川真大
秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大
奈良小一女児殺害事件の小林薫
母親による男児せっかん死事件の女性
面接と対話を繰り返すことで
殺人を犯した人たちの内面を浮かび上がらせようとする
臨床心理士の長谷川博一氏
語られなかった幼少期のこと
罪を犯した人たちが何を思い何を考えているのか「心の闇」を読み解いていこうとしてる。
幼少期にどんな環境だったとしても決して殺人は許されないとは思う。しかし、本書に記される人々の幼少期はあまりにも悲惨すぎる。ひどい環境でも立派に生きている人もいるのでそれを殺人の理由にしてはならないが、何かやるせないものを感じてしまう。
と同時に、この本を読み終わって心の底から恐怖を感じたのは日本の司法の在り方。
きちんとした精神鑑定ができていない現状
死刑廃止論で盲目的に動く活動家
裁判を有利に運びたいがために真実をゆがめる人々
殺人者が罪を償うということ…
それは「自分が人の命を奪った、人生を奪った」ということを自分で理解し、殺した人に対して謝罪することなんだと思う。
でも、きちんと理解ができていない罪人たちは
自分がなぜ死刑になるのかわからないまま
反省なきまま死刑になる。
または、死刑を回避しようと弁護団に入れ知恵された嘘を重ねる。
被害者も加害者も救われない裁判…。
現実とはそんなものなのか…。 -
これまで を 変えることはできない
でも
これから を 変えることはできる
起きてしまったこと(犯罪)を
済んでしまったこと(犯罪)に終らせることなく
起きてしまったこと(犯罪)から
それが
起きてしまわぬように
あらゆる立場から
社会的な問題として
とりあげて、
考えることは
とても大切だと思う
犯罪の抑止というものは
そこからしか始められない
と思う
こうしている 今も
犯罪につながってしまう怖れのある
親 子ども 家庭 社会
が あるのは 事実だ -
穿った両親。不遇な幼少期。
傷ついた心が犯罪に走る原因の一つ。
だけどそれだけを理由にするのは逃げだとも思う。