イヤシノウタ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101359458

作品紹介・あらすじ

なんていうことのない日々に宿る奇跡のような瞬間、かけがえのない記憶。土地がもたらす力、自然とともに生きる意味。運命的な出会い。男女とは、愛とは。お金や不安に翻弄されず生きるには? そして命と死を見つめるなかで知 った、この世界の神秘とは──。研ぎ澄まされた文章と人生を見つめるまなざしが光る81篇。父・吉本隆明との対談「書くことと生きることは同じじゃないか」収録。

感想・レビュー・書評

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  • “自分の孤独は自分のことで頭をいっぱいにしていたら決して埋めることはできない。他者を愛することでしか人は自分を満たせない”

    吉本ばななさんのエッセイ

    読み切るのがもったいなくて、あと少しのところで閉じた。でも、ようやく読み進めた。

    中でも「鳥の意味」というエッセイが好きだ。
    傷ついた小鳥をひと晩保護した。
    弱っていたのに、朝になったら、
    最後の力を振り絞るように美しい声で鳴いた。
    その美しい声で
    部屋の空気がどんどん清浄になっていくのがわかった。
    そんな生活のシーンをこんなふうに切り取るんだと。部屋の中に入る朝日が見えるような。

    そんなうなるようなエッセイが81篇。
    巻末には父、吉本隆明との対談
    「書くことと生きることは同じじゃないか」も
    すごい。こんなお父さんと、こんな話ができるなんて。

    年をとれば、とるほと、磨きがかかるばななさんの言葉。これはやっぱり読み続けていきたい。

  • 8年一緒にいる人がいます。
    家族の次に長い時間を過ごしました。

    勿論、平和ばかりではなく
    たくさん傷つけました。たくさん傷つきました。
    でも8年も一緒にいました。

    間もなく9年目がはじまります。

    彼のことを描き貯めたいと思いました。
    なんでもない事を。私だけの世界を。
    9年目の愛する人への長い長い手紙を。

    日常にはたくさんの思考が
    転がっているんだと気づかされました。

  • いちばん最後の吉本隆明さんとの対談がすごくためになりました。
    モヤモヤの感じとか。
    スッとした状態で暮らせるように心がけよう。

  • 付箋部分を抜粋します

    ・あれほどに人を助けてきた人だから、きっと安らかな、望むような死に方で死ぬだろうと私は幼い頃から信じていた。
     ものすごく理不尽に見えることには、答えはなくても、よくよく見れば何かしらの流れがある。私は大人になってから
     そう思うようになった。なにかしらの種があり、因果関係がある。ただ、それが人間の小さな目、短い人生のつじつまの
     中ではスケール感が違いすぎてあまりはっきりわからないだけなのではないかと(p81)

    ・私は職人、桶を作る。 
     いつもと同じような桶でも、ふと、あるときいいやつができることがある。 
     だれも違いをわかってくれないけれど、自分にはわかる(p89)

    ・鳥は世界をその声で清めるために存在しているのだ。
     鳥たちが毎日絶え間なく清めているから、世界は美しいのだと。
     だから鳥が鳴いてくれているときは、ありがとうと思うようになった(p100)

    ・だれかが自分のことを熱心に憎んでいて、ことあるごとに思い出しては妬みをつのらせていたら、それが届くのは
     当然のことだ(p144)

    ・「神様って、その人の覚悟だけを見ていて、神様を当てにしないで覚悟のままにがんばれば最後の最後のひとおしだけは
     手伝ってくれるんですって」(p167)

    ・体は、私のために私の隠された気持ちを、一生表に出てくることのない痛みを、どれだけ肩代わりしてくれているんだろう。
     そう思うと、よく言われることだけれど、この体があるときもう機能を停止するまで毎日労ってあげたいと思った(p182)

    ・よく寝て、健康で、時間もたくさんある感じがして、たくさん考え事もできて、もし考え事が嫌いな人はたくさん体を動かして
     お金も贅沢まではいかなくても毎日の細々としたものを好きなように買える程度にはあって、たまに旅行に行けて、困ったときに
     少しまとまったお金が出せたり借りられる程度には信用が貯金があり、毎日していることがわりと好きで、さてでもここは一番
     ふんばるかな?というときが自然に来たら意外に思わぬ力が出せたから、結果少し高みに登ることができた気がする・・・
     そのくらいでいいのではないだろうか(p198)

  • 普段なんとなく悩んでいることや、考えていること、そういう自分の中のたくさんのもやもやたちにアンサーをもらえたような感じがした。

    「明日があるさ」は疲れたときに読み返したい。

  • 私がいかによしもとばななさんの描く主人公に影響を受けているか、いかに憧れているか、その魅力はなにかを再認識した本でした。

  • ばななさんも、ばななさんのお父さんも、ばななさんの描く物語の登場人物のような人たちだなと思ったら、小説の中に自分自身を半分は書いてるって言ってて、なるほどと腑に落ちた。

  • 日々の感情を丁寧に言葉にしてくださって、スッキリと浄化される

  • よしもとばななさんの作品を読むと、いつも、もっと丁寧に人生を送りたいと思う。よしもとばななさんが伝えたいメッセージの中で、私がいちばん受け取りたいと思っていることは、そのことに尽きるのだろう。

    そして、しばらくの間はちょっと丁寧に生活できるのに、また忘れてしまう。忘れてしまった頃に、またよしもとばななさんの本を読む。そうして私は人生をつないでいるのだろうと思う。

    私の人生を丁寧にする、よしもとばななさんの、いつものように丁寧な気持ちを伝えてくれる本。お父様との対談が、また素敵でした。

  • あっこおばさんのエピソードは泣けた。
    あっぱれな最期だったと思う。
    息子さんともいい関係でいい親子関係で微笑ましい。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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