殿様の通信簿 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101358710

作品紹介・あらすじ

史料「土芥寇讎記」-それは、元禄時代に大名の行状を秘かに探索した報告書だったのか。名君の誉れ高い水戸の黄門様は、じつは悪所通いをしていたと記され、あの赤穂事件の浅野内匠頭は、女色に耽るひきこもりで、事件前から家を滅ぼすと予言されていた。各種の史料も併用しながら、従来の評価を一変させる大名たちの生々しすぎる姿を史学界の俊秀が活写する歴史エッセイの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史学者磯田道史さんの歴史エッセイ。
    元禄期に書かれた「土芥寇讎記 どかいこうしゅうき」という書物があり、これは幕府隠密の秘密諜報をまとめたものという説があるとのこと。これを殿様の通信簿と称して、その中から、選りすぐった7名の殿様の人事評価的な紹介をされています。そして、さすがマル秘文書で現存は、1冊のみという貴重品なのです。
    この著者は、子供の頃からの歴史通(家系的にも恵まれて)で、高校生の時には、古文書を古文書として読んでらしたというので、歴史通の方にも面白く読めるエッセイかと思います。
    浅野内匠頭が女色を好むとか、池田綱政は、子供が70人いたとか、そちら方面の報告は、なかなか厳しかった様ですね。池田藩の側室の様子が書かれており、側室は「長局」という部屋に住まわせていて、部屋が7つ並んでいたそうです。だから定員7名。そこを真面目に一日づつ一週間?これを読んだ時、乙一のzooだったか、7つの部屋に監禁されて順番に殺される話をすぐ思い出してしまった。
    譜代大名の悲哀とか、家康のしたたかさとか、
    日本史が苦手で、全く面白さを伝えられそうにないので、退散します。
    著者あとがきにある、膨大な史料の中から今の日本人の世代的な変移を観察できる、という日本史を若い頃修得しとくべきですね。

    • おびのりさん
      時々誰か妊娠してるみたい。
      で、似たような顔の子供がウロウロしてるらしい。
      時々誰か妊娠してるみたい。
      で、似たような顔の子供がウロウロしてるらしい。
      2023/05/07
    • おびのりさん
      そうそう、盛り塩で牛車止めるの。止まるのかね。
      そうそう、盛り塩で牛車止めるの。止まるのかね。
      2023/05/07
    • 土瓶さん
      想像するといろいろホラーだな。
      とりあえず牛車実験をお願いします^^
      想像するといろいろホラーだな。
      とりあえず牛車実験をお願いします^^
      2023/05/07
  • 自分が不勉強なのもあるが、マイナーな殿様のマイナーなネタも多いのであるが面白く読めた本。
    テレビの歴史番組に出演されていることもある磯田先生の著作。
    一般に向けた本であるが、学者として押さえるべきところはしっかり押さえている感じで良い文章だと感じる。
    磯田先生の本を読みたい本リストに追加した。

  • 『武士の家計簿』の作者で歴史家の磯田道史さんは、様々な古文書をひもとき昔の人たちの生活をわかりやすく解説してくれる方です。本書『殿様の通信簿』は、元禄時代に編纂された書物をもとに、大名たちの知られざる素顔に迫るという趣向。

    冒頭、黄門様で有名な水戸光圀の悪所通いが紹介されます。大日本史の編纂など堅苦しいイメージの光圀が悪所通いとは!と驚くのですが、光圀の名誉のため、政治はおろそかにしなかったことも併せて示されています。磯田さんの見立ては、昔の大名は行動が制約され、唯一、人と自由に会えたのが当時のサロンだった遊郭で、そこへの出入りがほうぼう出歩くという評判となり、後年の黄門伝説につながったというもの。なるほど。

    また、赤穂浪士で有名な浅野内匠頭。色白で線の細い青年大名というイメージを持っていましたが、実際には女色に耽ること甚だしく全く政務を顧みない問題人物だったそう。浅野家は内匠頭の代でつぶれるとまで酷評されていたというから驚きです。やはり事件が起こるにはそれだけの前提条件があったんだなと、妙に納得しました。

    磯田さんの筆は、加賀前田家の項に至ってますます冴えわたります。
    前田家はもともと織田家臣団から起り、初代の利家が秀吉の盟友として天下道を伴走したことから、大名間で重きをなした家。利家もつねづね「家康が豊臣家を攻めるようなことがあったら前田は断固として戦う」と広言し、その行動律は二代目の利長にも受け継がれていた由。関ケ原合戦後、天下を握った家康が最も気にしたのは天下第二の勢力を誇る前田家の動向で、前田を味方につけるため、利長の養子(利家の庶子)利常を秀忠の娘婿に取り込みます。家康の豊臣攻めが迫るなか、利家の遺訓と家の存続という両立しえない課題に直面した利長がとった手段とは…
    このあたり、司馬遼太郎さんの見立てとは違った歴史の一側面を教えてもらえます。

    平和な現代から戦国時代をみれば、信長や秀吉、謙信ら英雄が闊歩するロマンあふれる時代に映りますが、実際には大名それぞれが必死で生き残りに知恵をしぼり、政略を巡らせるすさまじい時代だったことがわかります。掛け値なしに面白い。

    2011年の東日本大震災以降、震災関連の文書の発掘にも力を入れられて、この国と災害の関わりについて貴重な知恵を伝えてくれます。今後もどんな古文書を発掘され、新しい知見を私たちに示してくれるのか、楽しみです。

  • 現在の官僚制度は徳川幕府で作られたんだね。 一見、大臣は強い権限を有しているようでいて、実際は規則に縛られて大きな改革は出来ず、政策の根幹は規則に精通した官僚に頼ざるを得ない。 ◯◯藩も老中や家老が政策を担い、殿様は今の大臣と同じく、藩のトップとしての地位だけ与えられ、目眩しのオモチャに溺れる道しか選択出来なかったのだろう。 何不自由のない暮らしに羨ましい一面もあるけど、殿様も辛い商売だな〜と同情したくもなる。 磯田さんのおかげで歴史が面白くなってきた。(o^^o)v

  • 磯田先生の本は読みやすくサクッと読める。元禄前後の幕府隠密が幕閣に報告した大名の素行調査報告書と言われる土芥冠讎記をベースに、その他の文献も含めて、大名の人格や性格に迫ろうとしている。殿様が、目の前に現れて身近に見ているように感じられて、面白い。
    あとがきに書かれた離見の見、大事な事だ。昔生きた人たちを感じて、己の生活や考えを振り返るそんな時を持とうと思う。

  •  戦国時代から江戸時代にかけての大名たち、殿様と呼ばれる人たちの逸話を紹介する本。小説家ではなくて歴史学者が書いた、一次資料を解説した本であり、物語ではない。しかし読みにくい退屈な本かと思いきや、下手な歴史小説よりはずっとおもしろい。一次資料を読むというのはこんなに面白いことなのかと思わされるが、それはこの著者が単に資料の文字面をなぞるだけでなく、そこに登場する歴史上の人物の人となりを読み取ろうとするからなのだろう。

  • 徳川光圀、浅野内匠頭と大石内蔵助、池田綱政、前田利家、前田利常、内藤家長、本多作佐衛門を取り上げ、戦乱の戦国時代から太平の江戸時代へと移り変わる中で、大名たちがどのように変節していったかを綴った人物評伝。大名たちの内情が綴られた元禄期の書物「土芥寇讎記」などをベースとしている。

    著者はあとがきで、「豊かになれば、人間というものは、歌舞音曲と恋愛と宗教にしか興味をもたなくなる」と書いている。大名たちの暮らしぶり・生きざまに、飽食の時代を生きる現代人にとっての(反面教師としての)ヒントが隠されているのかもしれない。

    各大名家には祖先の武勲や家風としての戒めが代々受け継がれ、いい意味でも悪い意味でもそれに縛られている、というのも興味深かった。

    赤穂事件の原因分析もなかなか面白かった。「足利・織田の子孫は優遇する。豊臣の子孫は殺す」との徳川家の方針により高い官位を与えられたが「本家筋の足利(喜連川)家とちがって、大名の格を与えられ」なかったために官位の高さにことさら拘るようになった吉良、三代将軍に赤穂城築城を命ぜられたことから「城持ち大名」として強い自意識を持つようになった浅野。この両者のプライド、自意識が城中での刃傷沙汰に繋がったのだという。

  • 4月10日読了

  • 歴史書から殿様達の生き方、性格などが浮かび上がってくるのが非常に面白い。昔の話ではなく日本人としての生き方や生活が現代に共通する部分も多く感慨深い。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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