文庫版 ヒトごろし(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (784ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101353548

作品紹介・あらすじ

血飛沫。焔に包まれる宿場町。土方歳三は少年時代より死に魅入られていた。長じて浪士組の一員として上洛する。佐幕、攘夷、そんなことに関心はない。刀を存分に振るえる身分が欲しいだけだ。歳三は人外、人殺しなのだから。近藤勇、土方歳三、沖田総司。京都を争闘の巷に変えた新選組隊士たち。彼らはなぜ芹沢鴨を殺害したのか──。心に深き翳を宿す剣鬼の生を鮮烈に描く、傑作時代長篇。

感想・レビュー・書評

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  • いや、やはり新撰組はいい。
    血湧き肉躍るとはこのことだ。

    新撰組副長・土方歳三を主人公とした物語を京極夏彦先生が描いたというだけで胸が高鳴る。
    京極先生の著書ということで、もしかしたら妖怪や魑魅魍魎が登場したり、土方歳三が実は「物の怪」だったり、というトンデモ設定の新撰組ストーリーなのかと本書を手に取る前は少し思ってしまったが、全くの的外れだった。
    本書は、どストレートな新選組の副長・土方歳三の小説だ。

    浅葱色のダンダラ羽織を纏った侍の刀が一閃し、血しぶきが吹き上がる。
    幕末の動乱期に繰り広げられる壮絶な斬りあい。

    この上巻では、土方歳三の生い立ちと新撰組の結成、そして初代局長・芹沢鴨の暗殺までが描かれる。
    詳しいレビューは下巻にて述べたい。

    司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだことがある人にも、ない人にも、本書はおすすめの本である。

  • 感想は下巻にて。

  • 新選組の土方歳三の見方をガラっと変えてしまう一作。土方歳三が剣を持ち、侍を目指したのは、人を殺す大義名分を得るためだった。新選組を含めた、土方歳三のすべての膳立てがその一つの理由で描かれた上巻。新選組も土方さんもすきなので、若干むぬー、となったりもしますが、視点は面白いし、辻褄もしっかり合わせててすごいなー。

  •  豪農・土方家の息子、歳三は七歳のころ、侍に人が切られて血柱を挙げるのに魅せられる。それから人を殺してみたいと思うが、見聞きしたことを理詰めで考え、世の理を知っていく。人は殺せるが、殺してはいけない。侍なら人を殺していい。いや、そうではなく、身分の高い武士なら、理由さえあれば人を殺していい。ただ百姓にはそれは禁じられている。田舎道場に通ってみるが、竹刀で人を殺せるはずもなく、失望する。だが、実家近くの火事のどさくさで2人を殺してみる。働くのがいやなわけではないが働く意味がわからない。十六七になった歳三は実家の特製の薬を売り歩く仕事をしつつ、田舎道場の門下生を襲い続けるが、みな弱い。あるとき総州の道場の門弟の逆襲に遭い、木刀を奪って全員を殴り倒すものの、寄宿する浪士と一太刀まみえて敗北する。木刀が切られてしまったのだ。そこで浪士は「貴様はこの刀に負けたのだ」「威力ある武器を持つほうが強い」と述べる。そのうえ、剣術は「殺さずにすみように腕を磨くのだ」とまで言う。いや、歳三は殺したいのだ。
     ヒトでなしのヒトごろしの歳三は人間の感情を理解はしても、わがこととして体験しない。だから理詰めでいく。そうして、人を殺していい状況を作ろうとして形をなしてくるのが新選組なのだ。

  • 京極御大による土方歳三記。
    だが、士道や武士ではなく、人外のヒトごろし 土方歳三 の物語。
    この目線は新しい光の当て方。
    そして、物語の所々に潜む組織や国や枠組み、担ぐ者載っかる者への痛烈な批判と分析。
    是非、ぞうぞ。

  • 2021/2/4読了
    本作の土方歳三は、司馬遼太郎『燃えよ剣』とは全くキャラクターが異なり、人殺しに魅了されている。しかし、殺人行為は“人外”だけのものと認識していたからこそ、真人間をわざわざ“人外”にする戦争には否定的であり、その理屈は、妙に筋が通っているのであった。

  • 大好きな著者が新選組を題材に書くなんて!嬉々として読み始めたら、あれ?なんか違う…「新選組血風録」「燃えよ剣」が超お気に入りだった私は、まず人物像の設定に驚きました。でも読んでいるうちに、思えば「燃えよ剣」でも二人とも相当人を斬ってる癖に穏やかだし、沖田なんかずっと にこにこしていて変わらない。だからこういう人だったのかもしれないという肯定感さえ生まれてしまい…。

    でもやっぱり私は司馬遼の新選組がいい、こんな土方と沖田は絶対ヤだ!と思いつつ、早速下巻を買いに行きます。

  • 夫の本棚にあったので読んでみましたが、途中で挫折。
    司馬遼太郎さんの燃えよ剣が好きなので、この土方さんの設定が受け入れられませんでした…泣。
    殺したい殺したいが強すぎて全く作品に入り込めず…。

  • なかなか新しい土方歳三像だけど、読んでいくうちにこれもありだな…と思わせるのがすごい。最初は違和感があってなかなか読み進まなかったけれど、お涼が出てきたあたりから慣れてきて読みやすくなった。ただ殺したいためだけに新選組をつくる土方、合理的。人外沖田と万能山﨑のキャラも良い。芹沢暗殺まで。これからを思うとツライ。

  • 大好きです。元より新撰組には興味なかったですが、この解釈が心地良すぎて他の新撰組は見られません。集団の中で生きる会社員としてブレそうになる度に再読したいです。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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