- Amazon.co.jp ・本 (784ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101353548
作品紹介・あらすじ
血飛沫。焔に包まれる宿場町。土方歳三は少年時代より死に魅入られていた。長じて浪士組の一員として上洛する。佐幕、攘夷、そんなことに関心はない。刀を存分に振るえる身分が欲しいだけだ。歳三は人外、人殺しなのだから。近藤勇、土方歳三、沖田総司。京都を争闘の巷に変えた新選組隊士たち。彼らはなぜ芹沢鴨を殺害したのか──。心に深き翳を宿す剣鬼の生を鮮烈に描く、傑作時代長篇。
感想・レビュー・書評
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いや、やはり新撰組はいい。
血湧き肉躍るとはこのことだ。
新撰組副長・土方歳三を主人公とした物語を京極夏彦先生が描いたというだけで胸が高鳴る。
京極先生の著書ということで、もしかしたら妖怪や魑魅魍魎が登場したり、土方歳三が実は「物の怪」だったり、というトンデモ設定の新撰組ストーリーなのかと本書を手に取る前は少し思ってしまったが、全くの的外れだった。
本書は、どストレートな新選組の副長・土方歳三の小説だ。
浅葱色のダンダラ羽織を纏った侍の刀が一閃し、血しぶきが吹き上がる。
幕末の動乱期に繰り広げられる壮絶な斬りあい。
この上巻では、土方歳三の生い立ちと新撰組の結成、そして初代局長・芹沢鴨の暗殺までが描かれる。
詳しいレビューは下巻にて述べたい。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだことがある人にも、ない人にも、本書はおすすめの本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
感想は下巻にて。
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豪農・土方家の息子、歳三は七歳のころ、侍に人が切られて血柱を挙げるのに魅せられる。それから人を殺してみたいと思うが、見聞きしたことを理詰めで考え、世の理を知っていく。人は殺せるが、殺してはいけない。侍なら人を殺していい。いや、そうではなく、身分の高い武士なら、理由さえあれば人を殺していい。ただ百姓にはそれは禁じられている。田舎道場に通ってみるが、竹刀で人を殺せるはずもなく、失望する。だが、実家近くの火事のどさくさで2人を殺してみる。働くのがいやなわけではないが働く意味がわからない。十六七になった歳三は実家の特製の薬を売り歩く仕事をしつつ、田舎道場の門下生を襲い続けるが、みな弱い。あるとき総州の道場の門弟の逆襲に遭い、木刀を奪って全員を殴り倒すものの、寄宿する浪士と一太刀まみえて敗北する。木刀が切られてしまったのだ。そこで浪士は「貴様はこの刀に負けたのだ」「威力ある武器を持つほうが強い」と述べる。そのうえ、剣術は「殺さずにすみように腕を磨くのだ」とまで言う。いや、歳三は殺したいのだ。
ヒトでなしのヒトごろしの歳三は人間の感情を理解はしても、わがこととして体験しない。だから理詰めでいく。そうして、人を殺していい状況を作ろうとして形をなしてくるのが新選組なのだ。 -
京極御大による土方歳三記。
だが、士道や武士ではなく、人外のヒトごろし 土方歳三 の物語。
この目線は新しい光の当て方。
そして、物語の所々に潜む組織や国や枠組み、担ぐ者載っかる者への痛烈な批判と分析。
是非、ぞうぞ。 -
2021/2/4読了
本作の土方歳三は、司馬遼太郎『燃えよ剣』とは全くキャラクターが異なり、人殺しに魅了されている。しかし、殺人行為は“人外”だけのものと認識していたからこそ、真人間をわざわざ“人外”にする戦争には否定的であり、その理屈は、妙に筋が通っているのであった。 -
大好きな著者が新選組を題材に書くなんて!嬉々として読み始めたら、あれ?なんか違う…「新選組血風録」「燃えよ剣」が超お気に入りだった私は、まず人物像の設定に驚きました。でも読んでいるうちに、思えば「燃えよ剣」でも二人とも相当人を斬ってる癖に穏やかだし、沖田なんかずっと にこにこしていて変わらない。だからこういう人だったのかもしれないという肯定感さえ生まれてしまい…。
でもやっぱり私は司馬遼の新選組がいい、こんな土方と沖田は絶対ヤだ!と思いつつ、早速下巻を買いに行きます。 -
大好きです。元より新撰組には興味なかったですが、この解釈が心地良すぎて他の新撰組は見られません。集団の中で生きる会社員としてブレそうになる度に再読したいです。