北方領土交渉秘録―失われた五度の機会 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (548ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101348810

作品紹介・あらすじ

日本外交にとって戦後最大の未解決問題である北方領土。1985年、ソ連にゴルバチョフ書記長が登場して以降、膠着した事態を打開する「機会の窓」は五度開いていた。にもかかわらず、日本政府がそれらを活かせなかったのはなぜか。終戦時外相だった祖父と、駐米大使を務めた父の志を継ぎ、日露領土交渉に心血を注ぎ続けてきた著者が、痛憤と悔恨を込めて綴る緊迫の外交ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 先日ひょんなことから、北方領土の話になった。元来、領土問題にはあまり関心がないのだが、知識もないことがわかった。読書録を見ると2010年3月に、佐藤優氏著『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』を読んでいるのだが全然内容を覚えていない。ということで、急遽本書を読むことにする。 2012年11月08日

  • #874「北方領土 交渉秘録」
     北方領土の日に読む。著者の東郷和彦氏と言へば、鈴木宗男事件をきつかけに外務省を追はれた人、とのイメエヂが強かつたのですが、本書を読むとかなり印象が変りました。
     北方領土問題を打開する機会の窓は、少なくとも五度は開いてゐたとの主張。鈴木宗男氏や佐藤優氏の著書と併せて読みますと、これらの事情が立体的に理解できるのでした。その佐藤氏が解説を書いてゐますが、ロシヤの諜報のプロが阻害する謀略に、日本側が乗せられたといふのが真相だと述べてゐました。その辺をもう少し詳しく知りたい喃。

  • 鈴木宗男事件から発展した外務省の不祥事に関連して、退官を
    余儀なくされた元外交官の筆になるソ連・ロシアとの北方領土
    返還交渉の近代史。

    なのだけれど、やっぱり冒頭は自身が関与したと言われる外務省
    不祥事の記述からになっている。

    これを冒頭に持って来たのは「事件とも言えない宗男先生の事件
    に関連して、佐藤優氏等、外務省のロシア・スクールを排除した
    のが交渉が進展しない原因」とほのめかしたいからか?と感じた
    のは私の深読みのし過ぎか。

    著者自身がソ連・ロシアとの交渉に深く関わっていたので、秘録と
    言うよりも「あの時、こんなことがあった」との回想録と言った方
    がいいかも。

    日本でも「もしかして、返してくれるんじゃないか」との期待が
    高まったのは酔いどれ・エリツィン大統領の時だが、あの頃の
    エリツィン大統領って健康不安や縁故政治への批判もあったので、
    一国のトップとしての寿命は尽きかけていいたんじゃないのか?

    外務省としてはその辺りの情報をどれくらい掴んでいたのか、本書
    からは不明である。ソ連の8月クーデターの時には著者曰く「情報は
    掴んでいた」とは言うものの、十分に活用出来てはいないんだよな。

    だから、今現在、プーチン閣下のロシアに振り回されているのでは
    ないだろうかと思うのだ。「まずは経済協力をしよう」と言われる
    ままに金だけ持って行かれてないか?

    だって、ロシア軍は択捉島と国後島で最新鋭のミサイル発射演習ま
    でしているのだから。これ、返す気なんてさらさらないって証しだ。
    まぁ、日本に米軍基地がある限り、返したくないのだろうけどな。

    本書では橋龍こと橋本龍太郎とサメの脳みそ・森喜朗は役に立った
    が、小泉純一郎は引っ掻き回しただけとの印象を受ける。それを更に
    交代させたのが当時の民主党政権って感じか。

    前原誠司が外務大臣だった時、ロシアのラブロフ外相に相手にされて
    いなかったものなぁ。余談だが、ラブロ不外相の声は渋くて素敵なの
    であ~る。

    著者が築いたロシア側とのパイプ、外交の裏舞台などの描写もあって
    文章も上手く読ませる構成になっており、日露外交史の一面としては
    参考になる。

    だが、「真剣に」「必死に」との表現がかなりの頻度で出てくるので
    「外交はそういうもんだろう。特に北方領土返還交渉なんて真剣に
    必死にやるのは当たり前だろう」と突っ込みたくなった。

    尚、つい最近、酔っぱらった上で戦争によって北方領土を取り返すこと
    について言及した頭のイカレタ国会議員がいたが、こういう輩が民間の
    交流を台無しにするんだよな。

  • スリリングな本である。佐藤氏の解説も分かりやすく良い。

    特に最後の終章で語られる、著者の外交にかける熱い想いに心を打たれた。私も、真剣に北方領土問題を考えたことはないが、メディアの思考停止、あるいは、大局観の無い報道姿勢には疑問を感じることが多かった。解決の為には、本当に、一人一人が真剣に、この問題について考える事の大切さを痛感した。

    一部の強烈なナショナリストの主張する様な、四島一括返還は恐らくあり得ないだろうし、柔軟で確実な歩みを進める方策を考えなくてはいけない。その為にも、何も分からない外務大臣に引っ掻き回されるのは避けなければならない。特任大臣でも任命して、確り腰を据えた交渉を進めることはできないのだろうか。

  • 佐藤優の「国家の罠」の読後、その上司であった東郷氏の本も読みたくなったので購入。(なぜヨーロッパに逃げていたのか?東郷氏の視点で、ほんとのところどうだったのか?)でも、まだ読んでません。。。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)43
    東郷氏しか知らない事実を明らかにし、北方領土交渉の闇を明らかにした類まれな回想録。

  •  この分野は、自分は全くの素人。読み物としておもしろく読んだ。

     ソ連時代のがちがちの相手との交渉、ゴルバチョフのすこしゆるんだ状況、エリツィンのかなり踏み込んだ交渉、プーチンの最初のころの多少柔軟性のある交渉、そして、今のまったく2島返還の可能性さえなくなった状況が、物語のようによく分かる。

     自分は、同じ役人として、強く印象を受けた点。

    (1)東郷氏は、高い地位から、固いソ連、ロシアとの交渉を踏まえ、四島一括返還から、最初に2島の返還を決めて、最終的に4島全部を返還するという妥協案をもって、交渉をあたり、もっといろいろなパッケージで経済的に苦しんでいたロシアを応援しつつ、交渉の窓をこじ開けていった。

     このようなリスクをとる行為に対して、四島一括返還という建前論をいって自分は安全地帯にいて、東郷氏の足をひっぱった役人がいることについて、やはり恥ずかしいと思う。それがいまや、まったく四島とも返還の可能性のない状況に落ち込ませたこと。

     リスクをとらない役人は本当に困りもの、邪魔者。

    (2)政治家との関係、大臣などとの関係については、国益を守る、実現するという観点から役人は圧倒的な知識量と経験をもってその説得と理解を求める。そして最終的には大臣の指示に従う。そういう努力が必要だと思う。

     なんか変なこと言っているな、特定の情報源に引っ張られているなと思いながら、きちんと政治家に進言しない役人が多い。それはその役人が勉強不足、経験不足だからだと思う。理屈と事実で説明する、そのために勉強をいろいろ税金でさせてもらっている。

     自分も含め、国益、国民の利益のために、きちんと政治家に説明できる能力と経験をもっと積みたいと思う。

  • 国対国の交渉ってこんなにも大変なものとは!外交官に対する印象がかわりました。外交って本当に大変な仕事だ。

  • 北方領土交渉の経緯がわかる他、交渉術の教科書としても良い。

  • 佐藤優氏が最後に解説している通り、この本は途中から挫折しやすくなっている。その理由は、文章がぐちゃぐちゃで意味不明だから…ではなく、人名、歴史背景、用語が極端に難しくなるからである。


    この本の内容をしっかりつかめたときに、領土問題についての理解はだいぶ深まるだろう。私は案の定、途中から読めず、佐藤氏の解説を読むページまで飛ばして読んだ。その解説も難しいのだが・・。

    700円を出して買う価値があるかというと、ちゃんと読みこなせれば、大いに価値がある。


    本当に難しい内容だ。

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著者プロフィール

静岡県対外関係補佐官、静岡県立大学グローバル地域センター客員教授

「2021年 『一帯一路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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