死刑のための殺人: 土浦連続通り魔事件・死刑囚の記録 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101348346

作品紹介・あらすじ

確実に死ぬには死刑が一番だ。できるだけ多くの人を殺そう――。2008年茨城県土浦市で9人を殺傷した金川真大。「完全勝利」と言い残し13年絞首刑に。享年29。「殺人は悪じゃない」と嘯き、ひたすら死刑を求めた男。死は彼の望み通りと分かっていても尚、極刑を求める遺族の苦悩。面会を重ねる記者の葛藤。無関心に覆われた金川の家族……。何が彼を凶悪犯罪に走らせたか。死刑制度の意味を問う驚愕のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 若い人の中になぜこんなに自信に溢れているのかわからない輩がいる。その自信はどこから来ているのかと首を傾げてしまう。幼稚な万能感に満たされているのだろう。この本の死刑囚も根拠のない自信や万能感に浸っていたのだろう。
    著者がベトナムに行った時に、もしここに死刑囚がいたらあんな犯行をしただろうかと自問している。ベトナムは発展途上の国だが、人々は希望に溢れているという。そこにいると中年の著者自身も明るい気持ちになるようだ。閉塞感ある日本で希望を見出せなかった死刑囚も、ベトナムに来たら変わったのかもしれない。我々の頭上を覆う厚い曇天は、人を変えてしまうようだ。

  • 基本的には死刑には反対。でも…。

    「死にたい。でも、自殺は痛いし失敗する可能性がある。確実に死ぬには死刑が一番だ。できるだけ多くの人を殺そう」
    そうして通り魔殺人事件を起こした死刑囚に30回以上も獄中面会し、その心の奥を知ろうとした記者のノンフィクション。

    青年期に「「子どものための哲学対話」を読んで真理がわかったと豪語する。けれどそれは表面的なもので、真理でもなんでもない。と、普通の人ならわかるはずなのに、なぜ彼はそういう捉え方をしたのか。そしてその考えに固執したのか。
    彼の成長過程は確かに不幸なものだったが、だからといってそういった育ち方をした人が全て凶悪事件を起こすわけでもない。

    被害者家族たちの思いは、このまま「死刑」にしてしまうことは、彼の希望を叶えることになる。それは罰を与えることになるのだろうかということ。
    面会し取材した記者たちは、面会し彼の心に訴えかけるうちに「罪悪感」が生まれてくれないかと期待したが、それも叶わなかった。

    果たしてどちらが幸せなのだろう?
    刑場に向かう心理として、誤った真理であっても自分の望む死刑を執行される場合と、罪悪感に苛まれ、やっぱり死にたくないと後悔の念を抱いて執行される場合と。
    被害者意識としては?
    「死刑」という事実は変わらない。反省、謝罪の気持ちを発せられたとしても、亡くなった家族は帰らない。

    最期の最期に、足元の床がぱっくりと開き落ちていく瞬間、彼はどう思っただろう?

  • 衝撃的なタイトルに興味を持ち、完読。
    死刑制度が機能しないこのケース、やりきれない気持ちが溢れました。本書の中に、犯人が影響を受けた「子どものための哲学対話」という本が気になり、購入して読みました。他人の考えを理解しようとすることは不可能であり、十人十色であるということを思い知らされました。

  • 死刑制度について考えされました。初めから死刑を希望している人にとっては死刑制度は犯罪の抑止にはつながらない。本人は死刑になるために土浦連続通り魔事件を起こしたと主張し、精神鑑定では自己愛性人格障害と診断されたものの、死刑という結論は変わらず、ある意味では本人の望んだとおりの結果。土浦連続通り魔事件、本当に恐ろしい事件。

  • 成熟した社会の閉塞感が、様々な歪みとして現れてくる。それは主に人の心で、本書でとりあげられた無差別殺人もその一つ。驚くべき動機。そして、死刑を望む者への極刑である死刑の意味を問う。2017.9.23

  • 恐らく、かなりの時間を掛けた取材に基づくドキュメントなのだろうが、最後の最後まで金川真大の考えの一片も理解出来なかった。というよりも、余りにも異常な思考に、理解のしようが無いのだ。

    2008年に茨城県土浦市で起きた9人もの人びとを無差別殺傷するという凶悪事件。犯人の金川は死ぬために死刑になることを望み、犯行に及んだというのだから唖然とする。犠牲者の方々、その家族の方々も未だに理解出来ず、無念の思いと悲しみの中にいるのではなかろうか。

    読んでいて、その異常な思考に、自分までもが感化されるのではないかと不安になり、嘔吐感をも感じるドキュメントだった。

  • まったく理解できない犯人。読んでいて気分が悪くなってきた。

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