雪だるまの雪子ちゃん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339276

作品紹介・あらすじ

ある豪雪の日、雪子ちゃんは空から降ってきたのでした。そして最初に彼女を発見した画家・百合子さんの物置小屋に住みつきました。雪子ちゃんはトランプや夜ふかしやバターが大好きで、数字が苦手な野生の雪だるま。近所の小学生と雪合戦やなわとびもします。夏の間は休眠するし、いずれは溶けてしまうので、いつも好奇心旺盛。「とけちゃう前に」大冒険! カラー銅版画12枚収録。

感想・レビュー・書評

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  • 雪子ちゃんは野生の雪だるま。
    歳をとってから、冬の長い田舎町に越してきた百合子さんの物置をおうちにして、冷たい生魚や冷たいお茶、バターなどを食べたり、小学校に時折遊びに行ったり、日々の生活を楽しんでいます。
    読んでいたら、なんだかほっこりする優しい物語。
    こんな穏やかで伸びやかで暖かな生活ができたらと、読みながらうっとりします。
    挿絵の銅版画もとてもファンタジックでかわいらしい。
    江國香織さんの童話はやっぱり好きだなあ。

  • 素敵な可愛らしい表紙。この本を読み始めたのはまだ寒い日だったのに、読み終えた今日はすっかり春の陽気。雪だるまの雪子ちゃん、こんな日じゃもう遊んでないね。笑。ファンタジーです。雪だるまのこどもの物語。はじめてみる景色、動物(人間も含む)食べ物、学校…子どもの時の好奇心を思い出すし、冬しか過ごせないからそれまでは、眠る。あ、羨ましい。笑。冬しかない雪子ちゃんの毎日にはどんなことにも楽しみがぎゅっと詰まっていて羨ましくなりました。人生、こんなふうに楽しみたいな、としみじみ思います。はじめて見るもの、やってみたいと思うこと、自分に残された大切な時間をめいいっぱい使って。

  • ある日、空から降ってきた野生の雪だるまの雪子ちゃんの、たくましく、ほほえましいお話。
    とけちゃうようなはかない存在なのに、とても芯が強いのです。
    心の中の家族がいて、とても自立しています。
    好奇心も旺盛です。

    いろんなものを持って体重計にのるところが、ほんとにかわいい。

    わずらわしい大人の世界から離れてこういうものを読むと、心が和みます。

  • 山のふもとの小さな村にひとりで住んでいる雪だるまの雪子ちゃん。
    大雪の日に突然空から降ってきた野生の雪だるまだ。
    生魚と冷たいものとバターとトランプとラジオと本を読むのが大好きな女の子。
    ピンク色の長靴をはいていつもゴキゲンに散歩をしている。
    雪子ちゃんにかかれば、どんよりした曇り空でも「いいお天気!」だから。

    夏を知らない雪子ちゃん。
    何故って夏じゅう、冬眠ならぬ休眠をするから。
    だからとけちゃう前に色々しておかなくちゃ!

    お隣に住んでいるお友達の百合子さんもとっても素敵。
    二人の女子トークは和やかで参加したくなる。

    読んでいる内に自然と笑顔になれる物語。
    寒い季節は苦手だけれど、こんなに可愛く素敵なお友達と過ごせるなら、ちょっとくらい我慢しなければ。
    今度から大雪になったら空を見上げてみよう。
    雪子ちゃんが降ってくるかもしれないから。

  • ファンタジーなんだけど、人間ドラマ。冬の情景描写の妙。オノマトペが心地よい。

  • どうしても冬の間に読みたかったこの作品。


    季節の描写がなんて素晴らしいんだろうか。
    読みながら、窓の外に広がる雪景色と重なって
    思わず雪子ちゃんを探したくなる。


    雪子ちゃんは掃除も料理もなんでも自分でやるし
    自分の生活スタイルがしっかりできていて
    とっても礼儀正しい。
    まだまだ小さいけれどお父さんとお母さんは
    記憶のなかにしかいない。

    そんな雪子ちゃんを“ひとりぼっち”とか
    「さみしくないのかな」って感じる場面も何度もあった。
    でも、そうじゃない。
    全てをそのままに受け止めて
    自然の移ろいを感じながら
    一瞬一瞬をめいいっぱい生きて
    たくさんの“はじめて”を前にこわくなったときには
    記憶の中のお父さんのことばを思い出して
    正面から立ち向かう姿は
    いまのわたしには大きなチカラになった。


    百合子さんはじめ村のみんなや動物たちとの交流もまた微笑ましいし
    雪子ちゃんの夏の休眠をそっと見守る優しさにも
    じーんとくる。
    長い眠りから覚めた雪子ちゃんが
    いつもの雪景色を心から味わうシーンは
    ずっと忘れないと思う。


    日々のいろんな疲労感で置き去りにしがちに
    なってしまうけれど
    わたしが大切にしたいことを
    いまいちど再認識させてくれた作品だったな。

  • 雪子ちゃんは、ある日空から降ってきた野生の雪だるま。
    隣に住む百合子さんと、その友だちのたるさんと一緒にトランプや夜更かしをするのが好き。
    たまに思い立って学校へ遊びにいき、たき火の匂いを嗅ぐとわくわくする。
    そんな雪子ちゃんの、一冬の物語。

    事件が起きるわけでもなく、野生の雪だるまの生活が淡々と綴られるだけだが、しんとした雪景色の描写が心地いい。
    寒い季節の雪だるまの話なのに、心暖まる物語。

  • 世界観が可愛い。この歳になると冬が降って積雪があるとどうしても外に出ることが億劫になるけれど、雪子ちゃんはもちろん、たるさんや百合子さんも楽しみを見つけて過ごしている。何気ない日常にも自分の好きなことや楽しむ精神を見つけて充実させたいな、、。

    寒いのはやっぱり苦手だけれど、軽井沢のペンションとかで冬、ちょっとホットワイン飲みながら篭りたさあるな。(笑)

  • 野生の雪だるま、という言葉だけですでにどゆこと!?ってなる。ずるい(笑)。絵本のような、淡い、やさしい、冷たくて甘いお話だった。野生の雪だるまであることに誇りをもって、日々をたくましく楽しく過ごす雪子ちゃんと、その周囲の暖かな人間たち。いつか溶けることはわかっているけれど、今はまだそうじゃない。雪子ちゃんを通して見た世界は、きらきらと輝いていて、きれいなもの、楽しいものが沢山あるんだ、と思わせてくれる。

  • 雪子ちゃんは野生の雪だるまの女の子。ある吹雪の日、雪深い山の美しい村にひとりで空からふってきたのです。そのときに出会ったのが、おばあちゃんの画家・百合子さん。そして雪子ちゃんは、百合子さんの家の物置でくらしはじめて…。

    野生の雪だるまの雪子ちゃんが可愛くて可愛くて!
    雪子ちゃんの日常を覗いてほっこり。冬といえばこれ!という作品に出会えました*
    雪だるまだから最後は溶けてしまうのかな、それはいやだな、って思いながら読んでいたけど、それはまだ先の話みたい。

    2016.1.17再読
    冬になると読みたくなる本、と言っても読むの2回目だけど。
    野生の雪子ちゃんの生活がすごくいいんだよなぁ。
    大きな事件が起きないので、ゆったりした気持ちで読めるところも好き。
    「とけちゃう前に、することよ」
    っていう雪子ちゃんのお母さんの言葉も好き。

    2021.1.24再読
    雪子ちゃんの日常を覗けるのが嬉しい。
    本を読んだり体重を量ったり、百合子さんやたるさんとゆっくり夜を過ごしたり…。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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