獄窓記 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.99
  • (45)
  • (54)
  • (41)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 578
感想 : 51
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101338712

作品紹介・あらすじ

政治家の犯罪。それは私が最も嫌悪するものだった-。三十代の若さで衆議院議員に当選した私は、秘書給与詐取事件で突然足元を掬われる。逮捕、そしてまさかの実刑判決。服役した私の仕事は、障害を持った同囚たちの介助役だった。汚物まみれの凄惨な現場でひたすら働く獄中の日々の中、見えてきた刑務所の実情、福祉行政への課題とは。壮絶なる真実の手記。新潮ドキュメント賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書は、秘書給与搾取事件で逮捕され実刑判決を受けた山本譲司氏の獄中での体験記録だ。想定外の罪で捕まり刑務所に入ることになった著者は、獄中で驚くべき、そして悲惨な障がい者たちの姿を目にする。本書を読むと、世の中でふつうに生きることができない人たちが最後にたどり着く場所としての刑務所の姿が見えてくる。
    私は以前から、この世界は五体満足で、一定以上の知性を持っていない人びとにとっては生きにくい場所ではないかと感じていた。彼らがどのような状況に置かれているかがよくわかる、非常によい本だと思った。どれだけ残酷であっても、それが真実であるならば直視しなければならない。私はそう思った。

  • 衆議院議員時代に詐欺罪で実刑判決を受けた著者による、獄中生活と事件の顛末を記した体験記である。著者の政治家としての半生、逮捕されるにいたった秘書給与詐取事件の顛末にはじまり、入所後に与えられた障害のある受刑者たちへの支援業務を絡めつつ刑務所内の様子を伝える。

    刑務所内の様子をまざまざと伝え、「収容者にとって看守とは専制君主のような存在」であることが実感できる。同時に、受刑者や看守ら個々人との会話や出来事、彼らの語る人生は印象深く、所内での人との交流には心を動かされることも少なくない。著者が就いた障害者支援の業務を通しては、糞尿や嘔吐物が飛び散る現場にあって、福祉の観点についても考えさせられる。さらに、内側から政治家の汚職事件をみる側面をも併せもつ本書は非常に多面的な体験記となっている(著名な政治家としては、菅直人、辻元清美も登場する)。少なくないページ数ながらも、読み通すのに時間のかからない、充実した内容だった。

    一部の高圧的な看守の言動には著者とともに憤りを覚えもするが、「元凶は時代遅れの監獄法」として監獄法改正の必要性を求める著者の主張は、本書を知ることとなった『凶悪犯罪者こそ更生します』に通じることもあって納得させられた。同様に、過剰収容による刑務官たちの余裕のなさも相まって、著者が描いた刑務所の様子からは更生するための私設としての側面は見えづらい。ただ、受刑者たちに対して理解ある、一部の刑務官たちの存在が救いに思えた。一般には知られることの少ない刑務所の様子を伝えるだけでなく、その問題点も指摘した、有意義かつ面白い著作だった。

  • 少し極端な自己批判的な内容が欺瞞に感じられるような印象を最初に受けたが、実際に作者が獄中で経験した事を考えると、実際にこのくらい自己批判が出来て罪を償う気持ちがないと、やり遂げられなかったはずだと考えを改めた。
    獄中という普段の生活からもっとも離れた異世界を知る上でも、想像を絶する社会の闇を知る上でも、犯罪者とて人間なんだと感じる同囚や看守との温かいやり取りなど、ドラマチックでもあり、また深く考えさせられるものだった。一点、辻元清美氏への批判は気持ちは理解できるが、もう少し短くても良かったのではと思う。

  • あまりにもリアルな塀の向こう側。

  • 知らなかったことばかり。作者の人柄か、登場人物の全てが生き生きと立ち上がってきてそれぞれに人生があるのだと感じられる。そして知りたくなる。その後の作品も是非探さなければ。
    あとがきにあるように、今まで見たことのない漢語が多用されていて多少奇妙に思ったが、あとがきで明かされる理由に納得。
    良い本を読んだ。

  • ★★★
    今月7冊目
    山本議員が架空の秘書への給与払い問題で逮捕され、刑務所での1年以上を綴ったルポ的な本。
    囚人に階級があったり色々知らないこと多かった。

  • 社会福祉に関係する仕事に就きたくなる

  • <a href="http://mediamarker.net/u/sannomiya/?asin=4101338728">累犯障害者</a>ほどのインパクトはないけど、たくさんの人が支えあっていることや子を思う気持ちが心を打つ。掃き溜めといわれるハンディキャップの巣窟的存在が痛ましい。

  • 政治分野の小説を初めて読んだ。
    冒頭から難しい本なのかな〜…と不安だったがそんな心配をする必要は無く、文章がとても分かりやすくどんどん読み進められた。
    難しい四字熟語や言い回しが複数使われていて山本さんは博識な人だと感じた。
    内容としては刑務所内での生活、看守さんとの関係や刑務所の体制などが事細かに説明されていて想像がしやすかった。
    想像してみると具合が悪くなってしまうような描写もあるが、とにかく全体的に面白かった。

  • 全く知らない話ばかりで目から鱗が落ちた。
    犯罪とは、刑務所とは、これは読まなければわからない衝撃だと思う。概要を知っているだけでは全く想像できない物語でした。
    もちろん山本さんのノンフィクションなので、彼の人生についてもしっかりと書かれていて、それはそれで興味深かった。

全51件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本譲司の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
山本 譲司
ヴィクトール・E...
山本 譲司
村上 春樹
村上 春樹
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×