外務省に告ぐ (新潮文庫 さ 62-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101331768

作品紹介・あらすじ

露大統領の北方4島の訪問を許した結果、領土問題の解決は遠のき、空母建造を宣言した中国の海洋権益の拡大志向はとどまるところを知らない。外交の世界史的転換点にあって、失策と敗北を重ねた民主党政権下、日本外交は何を間違えたのか。インテリジェンスの生命線を担うべき外務官僚達の、目を覆う破廉恥な生態を指弾する一方、未来への処方箋を熱く示す。古巣へ下す言葉の鉄槌。

感想・レビュー・書評

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  • 書店に並ぶ著者写真の圧倒的な存在感に興味を持っていたが、しばらく積読だった。しかし小説『チャイナインベイジョン』を読了してふと読んでみたくなった。ムネオは悪い奴だと思っていた。機密費を横領する外務省職員も、政権交代したハトヤマもそうだった。しかし、もしかするとそれは報道などで悪いと思わせられていたのではないかと感じた。だが、外務省の情報部門にいた著者の言葉もすべて信用して良いのかという思いもある。事実は一つだけだが、バイアスのかかった真実は様々なのだ。

  • 素晴らしい佐藤氏の著作。毎回スピード感のある文章に惚れ惚れする。

  • 外務省時代に関わった組織人、変人エピソードや、内輪話の集積。
    あまり、目新しい話があるわけではない。
    一つだけ、鳩山由紀夫についての評価が面白かった。鳩山由紀夫はオペレーションズ・リサーチの専門家であり正統的な学者としての実績もある(佐藤は英語論文を読んで確認したとのこと)ことから、確率論を駆使した意思決定の数理的手法について知悉しているはずである。あの優柔不断かつぶれまくりと見える普天間問題での振る舞いについても、最適なタイミングをはかりつつ、そのつど、所与の条件での最善の決定を行っていたものではないか、という見立ては、斬新だ。

  • 140425

  • 警視庁捜査二課、鈴木宗男氏との対談部分は必読の価値あり。

  • やはり佐藤優は面白い。ひきこまれる文章。いつも言ってるが事実か?知らん。やや下品なのは残念だが、時評はさすがの質だし、あまり今まで読んでなかったのでかぶりがなく良かった。

  • 外務省の暗部を描き出す本作は筆者が外務省への変革を促すものである。
    が、説得力を感じると同時にやはり感情的な批判が所々に感じるのは人間の描くものだからか。

    それでも、外務省に限らず特権意識を持つ組織の腐敗を可視化した意味でも、より良い組織を作るためにも読む価値があると思えた。

  • イジメ。セクハラ・パワハラ。不正蓄財。日常的な賭博の開帳。機密文書の漏洩…。本書にある外務省の実態の数々には怒りを通して笑い、驚き、呆れなどのさまざまな感情が入り乱れましたが私も彼らの再生を祈ります。

    佐藤優氏による外務省および日本国家に対する「処方箋」であります。僕は連載時の事情は不勉強なものでよくわからないんですけれど、「新潮45」に連載されていた物をまとめたものに加えて、対談を加えた内容になっております。

    しかし…。自分が所属している組織をここまで書かれたとしたら、自分だったらどうだろうなぁ…。というくらいに厳しい筆致で外務省をこき下ろす姿は「筆誅」とも言うべきもので、陰険なイジメ。女性職員に対するセクハラ、パワハラ。公金の不正蓄財などの犯罪的行為が日常的に行われている。ということを、ほかならぬ筆者はたたき上げの元外務官僚でしたので、すさまじいまでのリアリズムで描かれていて、こういう人たちが国民の税金を湯水のように自分の私利私欲のために使い、「社会党レート・自民党レート」などの一晩に最低でも100万。中には1000万近いお金をマージャンで日常的に賭博を開帳して動かしているという告発。

    さらには自分たちの利益を守るために海千山千の政治家同士を戦わせ、一方を追い出すと手負いのもう一方をつまんで放り出すかのような狡猾な謀略戦をやってのける…。いやはや…。恐ろしかったですね。読んでいて。これからの日本の将来はどうなるかと柄にも無く思ってしまいました。

    僕にとってのハイライトはやはり、盟友・鈴木宗男氏と筆者との対談で、その際に鈴木氏が持ってきた外務省内から門外不出の書類や公電の数々にあの佐藤優氏が
    「何でこんなものを持っているんですか!?」
    と何度も衝撃を受けていたのが印象的でした。話をよくよく読んできくと、外務省側ではこういう持ち出し禁止の文章を政治家に流しているのだそうです。僕はその意味をよく把握しておりませんが、恐ろしい犯罪なのだそうです。本書の中に写真が掲載されておりますので、興味をお持ちになった方はぜひごらんになっていただければと思います。

    あとがきで筆者は、外務省が膿を出し切って、再生することを願っているそうです。厳しいことが前編にわたって書かれていますが、今後の日本には外務省は無くてはならない「会社」ですので、ぜひ、現役の職員は彼の主張に真摯に耳を傾けて、エリートとしての矜持を取り戻していただくとともに、私たちも彼らの生態には本当に怒りを通り越して笑い、呆れるしかないのですが、彼らの行動をよくよく見ておく必要があると考えます。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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