- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101328720
作品紹介・あらすじ
命を賭して信じる道に突き進めぬ者が、どうして士族を名乗れようか。久保田宗八郎は、虚しさを感じていた。株式会社、開かれた言論、徴兵制度。西南戦争前夜、すべてが急速に欧米化してゆく。銀座煉瓦街で親しく交わる、若様、巡査、耶蘇教書店主。そして、深い縁で結ばれた元遊女比呂と、互いに恋情を確かめ合った可憐な綾-。名手が、時代に翻弄される人びとの哀しみを描く。
感想・レビュー・書評
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このシリーズは物悲しくて楽しくて、本当に引き込まれる。主人公と二人の女の三角関係も切ない。
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読み人の心にも燃え移る様な激情踊る佳作小説。
今年最後に読み終える小説として
この作品を選べたことを本当にうれしく思います。
文句なしの星五つです。 -
この時代を描いた小説は少ないと思う。おそらく祖父母の両親が生まれていただろうと思うとそれほど昔の話でもないし、現代もあまり変わらない日本人の心情もあるように思ったけれど、なんだか目新しく、興味深かった。
私が好きな山本周五郎や藤沢周平と比べると、時代小説としてはやはり香りが薄いというのか、じーんと心に染みるようなものはあまり感じられず、キャラクターがカリカチュアされていたりストーリーが単純だったり、少年漫画のような感じがしてしまった。 -
テンポが良くて読みやすかったが、内容は意外に平凡。
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前巻よりひとつひとつの事件を解決する事件帳的な感じが強くなっている。
しかし、ひとつひつの事件に同時の風俗や時代背景が垣間見える
主人公の宋八郎も、その行動は探偵小説の探偵そのままの感じだが、江戸から明治への時代変化になかなか適応できないでいるその時代の士族や民衆を代表している。
世間は忘れてはいけないものを忘れてしまったのではないか?
作者は、宋八郎の口を借りて、「神の名で争いごとを起こすのは迷惑」と繰り返し言っている。
明治維新を描いていながら、現代も風刺している様。 -
「銀座開花おもかげ草紙」の続編。
一章ごとに、短編のような哀しみや余韻あり・・・
気づくと、そこに現れた人たちの群像劇に
ひきこまれている・・・。
タイトルの「果ての花火」という言葉も、読後胸にぐっとくる。
「あの世があってもなくても、この世は俺が目をふさげば、
それで終いだ。目をふさくまで存分に力を尽くせば悔いは
残らぬ。いかに時が無情に流れても、今このひとときは、
頭のてっぺんからつま先まで、胸も、腹も、両の手足も
すべては生ある人のものではないか。(中略)
人を信じ、己れを信じて最期の時を迎えるぱがりだ」
主人公のこの覚悟。潔さ。・・・惚れます。
ラストシーン…今回もドキドキしたままま
深い余韻を終えて、読了。
続きを読まずにいられようか・・・。 -
過渡期の時代のなか、松井 今朝子さんがストレートにブログなどで示されている歴史観、価値観がそこここに見受けられる。
前作を読んでかなり経つのにキャラクターがこのぼけかけた頭にも生き延びているのは造形の巧みさゆえと。
しかし、物語を進めるためとはいえ、最後のエピソードはつらい。いや、最後のエピソードだけがつらいのではないのだけど・・。物語をつむぐ人も或る意味苛烈な心を持っていないといけないのだな。とため息。