43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325392

作品紹介・あらすじ

2015年2月20日未明、凍てつく風が吹きつける多摩川の河川敷で、上村遼太君は全裸で息も絶え絶えに草地を這っていた。カッターで全身を43カ所も刺されて――。後に殺人などの容疑で逮捕された3人の未成年者が法廷で明かした理不尽な殺意。彼らに反省の色はない。そして互いに責任を擦り付け、攻撃し合う被害者の両親……。無辜の少年はなぜ命を奪われたのか。緻密な取材を基に深層を炙り出す。

感想・レビュー・書評

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  • 著書の作品はこれで7冊目の読了となりました。

    今まで手にしてきた6冊は海外を舞台に日の当たらない闇にフォーカスをあてた作品でした。

    本作の舞台は日本、しかも単身赴任ですごす横浜市の隣町•川崎市で起こった当時中学一年生の少年がカッターナイフで43回も切りつけられ殺害された痛ましき殺人事件のルポ。

    読み終えて思うのは殺人を犯した加害者は法で守られ、命を奪われた被害者、遺族は法で守られない矛盾する事実が存在するということ。

    そして、少年法の問題、保護観察の問題等を改めて自分の中で考える機会となる一冊。

    裁判が終われば、刑期を満了すれば...

    改めて守られるべきは被害者であり、本事件では残念ながら暴行を受け、切り付けられた少年は命を奪われてしまいました。

    そのこと自体は不幸で、残念でしかたありませんが、であれば、尚更次に守られるべきは被害者遺族であるはず。

    被害者の父親が語った嘘偽りない気持ち。

    復讐を肯定する訳ではありません。

    でも、本書を読み終えて、子を持つ親として否定することも出来ません。

    説明
    内容紹介
    少年法に守られた殺人者。
    数年すればその罪は「なかったこと」になる。

    2015年2月20日未明、凍てつく風が吹きつける多摩川の河川敷で、上村遼太君は全裸で息も絶え絶えに草地を這っていた。カッターで全身を43カ所も刺されて――。
    後に殺人などの容疑で逮捕された3人の未成年者が法廷で明かした理不尽な殺意。彼らに反省の色はない。そして互いに責任を擦り付け、攻撃し合う被害者の両親……。
    無辜の少年はなぜ命を奪われたのか。緻密な取材を基に深層を炙り出す。
    内容(「BOOK」データベースより)
    2015年2月20日未明、凍てつく風が吹きつける多摩川の河川敷で、上村遼太君は全裸で息も絶え絶えに草地を這っていた。カッターで全身を43カ所も刺されて―。後に殺人などの容疑で逮捕された3人の未成年者が法廷で明かした理不尽な殺意。彼らに反省の色はない。そして互いに責任を擦り付け、攻撃し合う被害者の両親…。無辜の少年はなぜ命を奪われたのか。緻密な取材を基に深層を炙り出す。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    石井/光太
    1977(昭和52)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 石井光太『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』新潮文庫。

    プロローグを読んだだけで物凄く陰鬱な気持ちになる非常に重たいノンフィクションだった。読みながら、こんな悲惨な事件があったことを思い出した。

    2015年2月20日の未明、多摩川の河川敷で事件は起きる。3人の遊び仲間の少年にカッターナイフで全身を43箇所も切り付けられた上村遼太君は全裸で最後の一滴の命を振り絞りながら草地を這い、助けを求める。犯人の3人の少年たちの理不尽な殺害動機……

    4年前に別れた元夫婦の失った子供を巡る冷戦……

    全ての歯車が狂い、被害者の父親は加害者少年たちに強い殺意を抱く。しかし、これは当たり前の感情だろう。せめて法律が少年たちを厳しく裁いてくれれば……

    少年法という壁に守られた殺人者たち。殺人者たちは、社会と隔絶された世界で資格を得ながら食うに困らぬ悠々とした日々を過ごし、僅か10年ほどで社会に復帰することになる。一方の被害者の親は有りもしない噂や大切な子供を失った悲しみと被害者たちへの怒りで、一生消えない心の傷を負うというやるせなさ……

    本体価格670円
    ★★★★★

  • 感情的になっても、何も生まれない。
    私は友人からそう教わったことがあるけど、この言葉を思い出しました。

    少年犯罪も完全には無くならないにしてもむごい事件がこれ以上起こらない世界になってほしい…

  • 最初の一ページから胸が苦しくなる。
    ちょっと前まで小学生だった少年が、酷寒の2月の深夜、全裸で体中に切り傷を負い、それでも助けを求めて川から23.5メートルを道路に向かって這っていた。
    どうしてそんなことに。

    あまりに残虐な事件に、犯人の少年たちへの怒りが込み上げる。
    だけど、読み進めるにしたがって、著者が書きたかったのはそれではないことに気づく。
    確かに被害者の父親は加害者少年たちに「死刑になってほしい」「一生許せない」と言う。
    それは当たり前だ。
    けれど、当事者ではない第三者の大人として、それだけに終始していてはいけない。

    なぜこのような事件が起こったのか。
    止めることはできなかったのか。

    加害者少年たちもまた、家にも学校にも居場所のない子たちだった。
    だからといって何をしてもいいわけでは、もちろんない。
    けれど、家族の愛情を知らず、未来に希望をもてず、友情を信じることすら知らない子どもの存在。
    これは、私たち大人の責任だろう。

    結局社会の歪のしわ寄せが、弱い子どもたちのところに来るということ。
    加害者少年をネットでさらし者にして、実社会でレッテルを貼って排除して終わり、というのは第三者の自己満足でしかない。

    子どもたちに居場所を。愛情を。未来を。
    システムで解決するとは思わない。
    でも、取りこぼしてはいけない。
    私は見守る、手を差し伸べる大人でありたいと強く思う。

    この本の副題は『川崎中1男子生徒殺害事件の深層』
    この本に書かれているのは一つの事件ではなく、この深層なのだ。

  • 父親の証言を中心に描いているが、それが少々きな臭いので信憑性に欠けるような気がする。

  • この事件に関してはその残忍さと未成年者による犯罪で被害者が中学生だったことから同時かなり衝撃を受けた記憶がある。
    その詳細と背景がかなりリアルに伝わってきた。
    読み終わった後感じたのは、今回の主犯者のような狂人は一定数社会に存在している訳で自分を含め家族や親族が同じような事件に巻き込まれる可能性が充分にあり得ると言うこと。
    そのためにはどうしたら良いか?
    近づかない或いは逃げるのがある意味一番賢明なのでは?
    あくまで持論だけど。

  • 家庭環境や様々なことが重なり、遼太くんのお父さんが語るように運が悪かったのかもしれません。
    忘れてはならない悲しい辛い事件ですね。

  • 事件に関する本は沢山読んでいるが、毎回何とも言えない気持ちになる。今でも心に深く残る事件の一つ。どこかで防ぐことは出来なかったのかな。運が悪かったと言う表現があまりにも辛い。せめて加害者達が心から反省し、罪を償う姿勢を見せてくれればと思うが、それも叶わないとは。
    少年法に限らず、今の時代に追いついてない法律。「更生」ありきで被害者より加害者を守っているんだなと言う印象が強すぎる。

  • 読み易い

  • もう9年経つけどこれは忘れることができない事件。事件のことは当時ネットのニュースでたくさん見てきたが、まだまだ私の知らなかったこともあった。事件は許しがたいことだが、加害者少年やそのまわりにいた少年たちの置かれた環境など考えると、彼らだけの責任ではないとも感じた。そうは言っても加害者の少年がいちばん悪いのだが。ページによっては読めないくらい辛い場面もあった。遼太くんの父親の心の叫び、法にずっと守られる犯罪者に対して、被害者はルールも何もなく殺されたんだという無念さに言葉がない。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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