「鬼畜」の家: わが子を殺す親たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325385

作品紹介・あらすじ

使用済みのオムツが悪臭を放ち、床には虫が湧く。暗く寒い部屋に監禁され食事は与えられず、それでもなお親の愛を信じていた 5 歳の男児は、一人息絶え、ミイラ化した。極めて身勝手な理由でわが子を手にかける親たち。彼らは一様に口を揃える。「愛していたけど、殺した」。ただし「私なりに」。親の生育歴を遡ることで見えてきた真実とは。家庭という密室で殺される子供たちを追う衝撃のルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼畜っていうか、当の本人らは、子を愛してるとの認識か…
    何か、ゴソッと何かが抜けてる…
    常識というか、ごく普通に思える事がそう思えない…
    ここでは、3件の事件を追っているけど、共通してるのが、それ。

    作者は、その原因を事件を起こした親達の育てられ方が、このような子育て出来ない親達(多分、子育てだけやないんやろうな)を生んだと考えてそう。(あくまで、私が読んで思った事なんで、本当かどうか分かりません。)
    劣悪な環境で、生まれた時から、育って来たら、表面上は普通でも、何かが抜けるもんなんかな…
    それは、親から自分を守る為の防衛本能みたいな…
    だからと言って、そんな事を理由に事件を正当化出来る訳やないし、親ガチャとかで安易に片付けられる問題やないし…

    こういうのって、個人とかやなく、もっと大きなもので防いでいかなあかんものなのは分かる。社会全体として。
    でも、それには時間がかかるし、今今、こういう事件が増えてる中、それを待ってられんのも確かなんやけど…
    難しい…
    せめて、自身は、そういう事を起こさないように自戒するしかないのか…
    難しい…

    • ultraman719さん
      もう、戻ってます〜
      今は、内藤了さんの読んでますー
      もう、戻ってます〜
      今は、内藤了さんの読んでますー
      2023/12/23
    • 1Q84O1さん
      グロさからはまだ戻っていないみたいですねw
      グロさからはまだ戻っていないみたいですねw
      2023/12/23
    • ultraman719さん
      これに関しては、戻って来れそうにありません^^;
      これに関しては、戻って来れそうにありません^^;
      2023/12/24
  • 石井光太『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』新潮文庫。

    3つの幼児虐待事件の深層に迫ったルポルタージュ。石井光太は信用できるノンフィクション作家である。その理由は客観的な視点による取材結果を極めてフェアに記録している点にある。全ての事実には必ず表と裏の二面があるが、石井光太の描くルポルタージュはそのどちらも公平に伝えてくれているように感じるのだ。

    本書に描かれるのは怒りとやるせなさを感じる『厚木市幼児餓死白骨化事件』『下田市嬰児連続殺害事件』『足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件』の3つの事件。いずれの事件も未熟な親が、親としての責任を果たさずに子供を死に至らしめた哀しい事件ばかりである。

    『厚木市幼児餓死白骨化事件』。人間としても親としても未熟なカップルが育児放棄の果てに自分たちの子供を餓死させる。恐ろしいのは自分たちはまともでそれほど悪いことはしていないと主張している点である。

    『下田市嬰児連続殺害事件』。恐ろしいまでの狂気にまみれた事件の全貌。余りにも堕落した身勝手な人間ばかりが事件に関わっており、吐き気がした。狂気とエゴは連鎖し、不幸の上に不幸を塗り重ねていく。とても人間が取るべき行動とは思えない。

    『足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件』。普通の人間とは思えないモンスター夫婦による幼児虐待と殺人。この事件もまた狂気とエゴの連鎖の果て……

  • 読むのがただただ辛かった
    ケーキを切れない非行少年たちと一緒に読むと思うところがより大きいと感じました。
    このような家庭で育った子供も、もしかしたら将来こういったレベルではなくともうまく家庭関係を作れないという事態は起こりうるわけで、万が一そうなったときには責められる側にいつのまにか変わってしまうわけで。そうならないことを祈り、そうならないための公助が必要と切に思いました。
    親自体は如何ともしがたいというのが率直な印象ですが、言い方は難しいですし冷たいようですが親と引き離して適切な環境を提供できる制度は必要な気がしている。共助の範囲で力になれることがあればしたいと思いました。

  • テーマが重くて、自分なりにも解決方法が見つからずに気持ちが沈んだ。ある程度の年齢になれば自分を取り巻く環境を変えることができるけれど、小さな子供や赤ん坊にはそれができない。そして子供は親を選んで生まれてくることができない。だから子供に危害をくわえるようなことは私は絶対に許せない、罪は罪である。それはおいておいて、負の連鎖はどこかでとめなければならないと思うし、本来は公的にするべきことだけれどきっと小回りがきかないのだろう。本書の最後の章のBabyぽけっとのようなNPOの活動は賛否両論あるにしても少なくても赤ん坊の命を救っている。親は子供に育てられて親になるものだとずっと思っていたけれど、子供がうまれても親という役割を受け入れられない人間がいるのが現実のようだ。

  • 親が子供を虐待死させるというニュースはセンセーショナルなのでメディアを賑わす。本書が取り上げているのは、3件の事件。「厚木市幼児餓死白骨化事件」「下田市嬰児連続殺害事件」「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」。

    著者は裁判の傍聴だけでなく、子どもを殺すことになった親たちの暮らしていた街や生まれ育った街をたずねて、隣人・友人・同僚・家族への丹念なインタビューを行い、彼らの人となりを書き出す。

    ここで書かれるのは、繁殖力や性欲はやたらと強いのに、知能が足りないとしか思えない行動を取る人たちの姿。登場する人物たちの行動規範がとにかく訳がわからない。暴力・貧困・無知が世代を越えて受け付けがれていく様子にやるせなくなる。

    ただし、エピローグで登場する「Babyポケット」という土浦の施設の話で少し救われた。

  • 虐待死を追ったルポ調の一冊。無力に苛まれるが、考えないといけない

  • ものすごい情報量。私には受け止めきれないようなことも沢山あって、著者が取材にかけた労力たるや、相当なものだと思う。
    虐待の連鎖については既に広く知られるところではあるけれど、ここまで畳みかけられると、もはや子供の虐待死は、現代社会における自然淘汰なのではないかとさえ考えそうになってしまう。
    どんなに子供が欲しくても授からない人だっているのに、どうしてこんなにままならないのだろう。
    養子縁組の仕組みがもっと機能的に働くようになればいいと思うんだけど、戸籍制度と親和性が低いので道のりは遠そうですね…

  • 読み進めるのがとにかく辛い。
    虐待や貧困、ネグレクトのあまりにも残酷な連鎖。一番弱くて脆い所へしわ寄せがいく社会の現実。数分のニュースをたまたま見て「酷いな、こんな奴ら人間じゃないよ」と一言呟いて懲罰感情を発露させるのは簡単だが、その事件の背後に隠れている悲惨で辛い物語に直面させられると、もうまったく他人事とは思えなくなる。私がいわゆる“普通の家庭”に生まれて虐待とは無縁に育ってきたのはたまたま幸運だっただけではないか。
    加害者の人生を丁寧に辿りながらも、決して過度に寄り添わず距離を保つ書きぶりが余計に読者の感情に「あなたはどう感じるか?」と問いかけてくるようで良かった。

  • これまでに読んだ虐待のルポの中では、読みやすい部類に入った。なぜなら、著者が事実を述べながらも、そこに変な感情移入や考えの押し付けがなかったからだと感じる。私がこれまでに読んできた類書には、正義感があるがゆえに視野が偏重かつ偏狭になっているのでは? と感じるものが多々あった。それが、この本にはほとんどなかった。
    こういうルポライターが、精神医学をもっと深く理解したら、色々なものが見えてくるのではないだろうか。
    とても読みやすかった。
    いい本だと思う。

  • 【殺すならなぜ産んだ】


    実際にあった以下3件の虐待による殺人事件を追ったルポルタージュ。

    ※実際にあった事件なので、事件の内容ではなく、全体の構成の読みやすさ、著者のこの事件を通して読者に訴えたい事が伝わったかどうかで評価

    『厚木市幼児餓死白骨化事件』
    『下田市嬰児連続殺害事件』
    『足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件』

    小説ではなく、事実なので読了感はかなり胸クソ悪いうえ重い。
    ニュースで事件の概要は軽く知っていた程度だったのだが、実際に詳細を読んでみると衝撃的な内容だった。
    著者の取材力と根気よく事件と向き合った熱意に感謝したい。

    どの事件も背景や犯人に共通するのは、劣悪な家庭環境(ゴミ屋敷など)、犯人も親から虐待を受けている、性に奔放、倫理観が欠如、普通に会話が出来ない(感情の起伏が激しい、論点がズレる等)などである。

    状況証拠や証言を元に事件の背景を想像してみるものの、やはり犯人やその親の行動には理解に苦しんだ。
    どこか他人事なのである。

    育てられないのになぜ作るんだとまず思う。
    第一そこまで想像が出来ない事と、どうにかなると思っている事が不思議でたまらない。

    障害があるのではと思うが、児童手当だったり、児相から逃げる為の作為には事欠かない。そういう事には機転をきかせたりできるのだ。

    そんな親は愛情が欠如したさぞ鬼畜な人間なのだろうと思ったのだが、中には児童手当や生活保護目的で子供を作った事件もあったが、本人達なりに子供を愛していたし、育てていたのだそう。
    その証拠に家族仲睦まじい写真や証言もあったのだ。
    それはプロローグに出てくる手紙が物語っている。
    この衝撃は実際に読んで体験してほしい。

    このように悲しい事件が起こるたびに思う事は、そういう事件を起こしてしまう親の元には子供はできるのに、切実に子供を望んでいる人の元には子供ができない理不尽さだ。

    この本で得られるものは何もないかもしれない。
    自分と違う側の人達が起こした事件を知ることが何になるのかとも思う。
    しかし同時に、実際に起きたりこれからも起こるであろう悲しい現実に目を背けてはいけないとも思う。

    やはり知る事は大切で、そして何を感じどのように生きていくのか重要だと考えさせられた一冊だった。


    こんなひとにおすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・ルポルタージュが好きなひと
    ・全ての大人



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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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