おもたせ暦 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316536

感想・レビュー・書評

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  • 『おもたせ』というよりも『おすそわけ』がメインなような。
    お取り寄せガイド+ちょびっと料理教室てな趣。
    好評だった話ばかりではなく、たまに失敗談が挟み込まれているのがいい感じ。
    水切りヨーグルトで作る『シュリカンド』、作ってみたいと思ったけれど
    平松さんの作り方だと乳清が全部流れちゃうから勿体無いなー
    などと思ってしまうあたしは貧乏性(笑)。

    この本を読んで思ったのは
    いくつになっても女子はおすそわけが大好き(はあと)ってことだった。
    最近はめっきり縁遠くなってしまったけど、好きなバンドがたくさんいて、
    日参するくらいの勢いであちこちのライブハウスに出没していた頃、
    そこでしか逢えない友だちに配るためのおすそわけセットを
    嬉々として作っては配り歩いていたことを思い出す。
    配ったのと同じくらいの数貰うので、結局荷物が減らないんだけど
    今思うとあれは幸せな重みだったなーなんてちょっと思った。
    そういう気分を思い出させてくれたことには感謝したい本である。

  • 実質は『おみやげ暦』8割、『おもたせ』2割くらいです。
    おもたせはあくまで受け身なもので、『もってきてもらったもの』だから。
    けれど、あえてこのタイトルなのはまえがきを読めばわかる。
    「おもたせですが…」と出す場合も、「おもたせだけれど」と出される場合も、なんだかあらたまったような特別な響きがあるから。
    でも、昨今のデパートの「おもたせ特集」という宣伝はどうかと思うよ。

    持っていくとき、相手に喜んでほしい、おいしそうに楽しむ姿が見たいと、いろいろ考えるわくわくドキドキ感がこの本からは伝わってくる。
    一緒に楽しんで「おいしいわ」とお気に入りのお菓子をほめてもらいたい、と反応を見るために『おもたせ』を期待するのだ。
    いやしいのとはちょっと違う。
    ひとときの演出しているような感じと言えば言いすぎか。
    本の中には『誰』に『どんなシチュエーションで』渡したのか渡したいのかを書いている。そこが単なるおいしいものリストと違うところだ。
    アジアンフードに興味ある友人にアジアのハーブと『レシピ』をお土産に、翌日会う友人のために一緒に食べる『シュリカンド』(←これが今話題の『水切りヨーグルト』ブルガリアがおすすめでした)を作ったり、酔っぱらったお父さんのうしろめたさの象徴「折詰すし」に思いをはせたり、と多岐にわたる。
    余談だが、母の故郷堺の『くるみもち』を平松さんは取り上げていて、母に聞いたところ就職した伯母が幼い妹である母によくお土産として通り道のそのお店によって買ってきてくれたらしい。
    この本のおかげで「くるみもち」が「胡桃もち」ではないことを知って、ああそうだあれは枝豆の味だったと知ったらしい。
    しかし、お姉ちゃんが会社帰りに買ってもってかえってきてくれたおいしいお菓子、という姉との優しい思い出はン十年たっても色あせることはない。
    そういうエッセイだった。

  • 食べ物を魅力的に描ける人は本当に文章力のある人じゃないかしら。食いしん坊+語彙の豊富さ+表現の幅広さ。平松さんは完璧。

    今まで知らなかった平松さんの本を手にとったのは、パラパラとめくった見出しに「まつのはこんぶ」を見かけたから。我が家の定番お使い物。

    塩野「花衣」、オオサワ「ガーナ」、しろたえ「レアチーズケーキ」…気になるものばかり。甘いものだけでなく、水なすのお漬物やコロッケサンドも登場。シュリカンドやシュワンヤンロウのたれは自分でも作ってみたくなる。

    美味しいものを見つけたら、他の人にも味わってほしい。なんでもないときにも持って行きたい。
    この感覚がある人は幸せだと思う。後から身につくものじゃないだけに。

  • この本を読むまで「おもたせ」の本当の意味を分かっていなかった。紹介されるものはどれも本気で美味しいものばかり。実際に足を運んでみたいところもたくさんあったので参考にしたい。

  • トム・カー・ガイのレシピがある!つくってみたい

    冬季限定 大人気仙台銘菓
    九重本舗玉澤の霜ばしら
    たべてみたい、、、

  • 自分の年代だと、旅行に行った時のお土産くらいしか他人に食べ物をわざわざ渡す機会は無いが、それでも“人にものを贈る”という行為を通して感じられる心の動きが平松さんらしい多彩な表現で描かれている。
    自分の中ではグルメエッセイを超えて、読書の楽しみを思い出させてくれる本になっている。
    難しい専門書などにぶつかった時は、迷わず手に取る平松作品。これからもお世話になります。

  • 作者のエッセイは目についたら購入している。
    この本は探して購入したがやはり面白い。
    ”おもてなし”とはどういう精神かを考えさせる本だ。
    各話に紹介されている商品の綺麗な写真が付いているのもありがたい。

  • 平松洋子さん「おもたせ暦」、2010.8文庫です。「おもたせ」は「手土産」とは違って、もっとざっくばらんとかw。いただいたものを、その場で開ける。いただいた側が、その場でふるまう。「おもたせですけど、いっしょにいかが」。

  • おもたせとは、手土産を頂いた側の言葉で手土産とはちょっと違う。
    例えば、「おもたせで悪いけれど」のように手土産をその場で開けて食べようとするときなどに使われる言葉である。
    その言葉からは少し気楽な感じを受ける。

    本書には数々のおもたせが登場する。
    そしてそれにまつわるお話が、気楽な日常の風景なのだけれど読んでいて幸せな気分にしてくれる。
    文章からも素敵な人物であろう著者の人柄が感じられる。
    単純に読み物としても満足だけれど、たくさんの美味しい食べものが紹介されていてとても実用的だ。
    いくつも気になるおもたせがあったので、買い求めてみようと思う。

  • “おもたせ”の意味をきちんと知ったのは、恥ずかしながら、この本を読んでから。日本語っていいなぁと改めて感じる。
    本書は、手土産についてのエッセイと思いきや、その向こう側には人がいて、ささやかなコミュニケーションだったり、人間模様だったりが垣間見えて楽しい。平松洋子さんのリズムのある文章、凛とした表現に、今回も唸った。

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著者プロフィール

平松洋子=1958年、倉敷生まれ。東京女子大学卒業。エッセイスト。食文化、暮らし、本のことをテーマに執筆をしている。『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。著書に『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『食べる私』『忘れない味』『下着の捨どき』など。

「2021年 『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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