- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101302836
作品紹介・あらすじ
陰謀に巻き込まれ父を殺された少女バルサ。親友の娘である彼女を託され、用心棒に身をやつした男ジグロ。故郷を捨て追っ手から逃れ流れ行くふたりは、定まった日常の中では生きられぬ、様々な境遇の人々と出会う。幼いタンダとの明るい日々、賭事師の老女との出会い、そして、初めて己の命を短槍に託す死闘の一瞬。孤独と哀切と、温もりに彩られた、バルサ十代の日々を描く短編集。
感想・レビュー・書評
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たぶん最初にこの短編集だけ読んだら、あまり面白くないのよね。でもこれはとても面白い本だとわかる。闇の守り人を少し読んだからなのよね。妙に頭の中でつながって広がるようになったんだ。バルサ、ジグロ、カンバル王国、新ヨゴ皇国。まだ全部読んでないけど、これは読める。まあいつ読んでもいいのが、本のいいところということですしね…
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『守り人』シリーズの、外伝的な短編集。
バルサやタンダの幼少期の頃の話となります。
全部で4編が収録されていますが、メインは、、
それぞれの“初めての体験”の描写でしょうか。
本編での二人の生き方の原点を、見いだせた気がします。
人の営みは、日常は、こうやって連綿と続いているのだな、とも。
ん、久々に本編の旅に出たくなってきました。。 -
今年最後の読み終わった本。
守り人シリーズの短編集。
ジグロと共に流れていた頃のバルサの話。 -
護衛士バルサの少女時代を描いた外伝。今回も厚み深み奥行きを感じる物語で、読みながら胸が熱くなることしばし。
キャラの派手さで言えばむしろ地味。
こうであって欲しい、と願うも勧善懲悪にはならないもどかしいストーリー。読者(の想像力)を信頼し、すべて書かない潔さ。
それでいてドキドキワクワクしっぱなし。
このあたりは、他の上橋菜穂子作品にも通じる上質さ。
幸村誠による解説の「日常生活の描写の確かさ」という指摘にはハッとした。冒険だ戦いだ友情だ、というファンタジー(=非日常)が絵空事に見えないのは、ハイライトシーンではなく背景や土台、つまり地のリアリティのなせる技、ということ。含蓄のある言葉だ。 -
一流の護衛士になる前の幼いバルサの物語。ジグロが不器用ながらもバルサのことを想っていることがひしひしと伝わるシーンがいい。色々な経験をした2人だからこそ分かり合えることもあるのだろうな‥。
バルサもジグロも寡黙なタイプだけれどお互いを大切に思っているのが伝わるあったかい作品。守り人シリーズファンは読むべし! -
バルサとタンダの幼い頃の話。
流れ者として一人で生きていくって大変なんだなと、家族も亡くなる人をバルサはたくさん見てきたんだなと。それでも、用心棒として一人で生きていくことを選んだんだな。 -
1番印象に残ったのは、女用心棒バルサが流浪の旅で知り合った賭事師との一編でもなければ、バルサが初めて短槍を使って命のやり取りをした「流れ行く者」でもない。主にはタンダの少年時代の生活を描いた「浮き籾」である。
新ヨゴ皇国は、狩猟民族だったヤクー族たちの住む地域に百数十年前に民族移動して作った稲作民族の国である。まだ国としての体裁を持っていなかった地域に、稲作の技術と国の統治を伝え、ヤクー族もほとんど抵抗せずにそれを受け入れた。結果的に混血が進み、今ではヤクー族はほとんど稲作民族になっている。これは明らかに縄文時代から弥生時代に移った日本列島の姿そのままだ。タンダたちの生活の細かな描写は、そのまま弥生時代の描写に置き換えても不自然な所はあまりない。ただし、建物や鉄の技術が進んでいるぐらいの所は中世の日本を思わせる。
まだ、ヤクーの純血種が残っている時代の話。それは、トロガイの呪術師たちの位置づけにも関係するのだろう。
村の「浮き籾(厄介者)」であったオンザが「物の怪」になって、村びとたちに悪さをする。そう信じられた時代の、ホントのオンザの姿はどうだったのか。タンダとバルサは子供ながらに、その真実のとば口にたどり着く。
しかし、それは大人の悲しい「想い」だった。作者は子供にわかるように真実を説明しない。非常に余韻のある終わり方だった。
2015年8月17日読了 -
短編4作。
久々に手に取る守り人シリーズ、番外編。
じっくり丁寧な描写、地味だけど大事なこと、しっかりと心に刻まれ胸が熱くなる。 -
再読。
文庫がでたので買う。
表紙のイラストも好きだが、左上と右下の枠飾りがメッチャツボだった。
バルサの十代のはなし。
それなりの経験を積んでいて、いつだって冷静にあらゆることに対処する彼女とは全然違う、抜き身の刀のような、
湧きあがるものをどこにしまったらいいのか分からず、
ただ一心にジグロについていこうとしていたころ。
タンダとのエピソードは心温まる。
うう、タンダ、子どものころからいいやつだったんだなあっとしみじみ。
ほんっとバルサがタンダと出会えてよかった、と心底思う。
四編の中で一番ひっかかるのはアズノのはなし。
とはいうものの、再読のわりに彼女が最後に勝ったのか負けたのか、
覚えてなかったのだが。
いや、金を手に入れたことだけは覚えていたんだが・・・・。
とても切ない気持ちになったことだけは覚えていた。
長い、長い、真剣勝負。
多分アズノにとってとても大切なものだったはず。
名誉や賞金、などと引き換えることなど考えることもできないほどの。
けれど、相手は、全くの悪気もないままに、それを呈してきた。
彼女はやはり、傷ついたのだろう、と思う。
それは哀しみなのか怒りなのか、分からないけれど。
そしてやはりジグロの存在感はすごい。
言葉にしないけれど、いや、言葉にできないほどのいろんなものを
抱えていたのだろう。
山で暮らすか、という問いにバルサが頷いた方が
ジグロにとって、バルサにとって楽だったのか、そうじゃなかったのか、
どっちがよかったのかなんて分からない。
結局バルサはその道を選ばなかったし。
彼らの生きた道は、本当に厳しい、と改めて思う。
命を剣に乗せる。かあ。
その覚悟を持って闘う。
うーん、想像つかない在り様だ。 -
守り人短編集。
たった2冊ぶりなのにとてつもなく懐かしい気持ちになりました。
バルサやタンダが子供の頃を描いた短編集ですが、連作短編のようなつくりになっていて、最後の「寒のふるまい」で見事に心温まる仕上がり。
大人になってからの二人も素敵ですが、ちいさい頃の二人の関係がまた素敵で。
表題作「流れ行く者」でタンダにロタの草花絵草紙をお土産に買っていこうと思い立つバルサが可愛いかったなぁ。
あと今回、ジグロが回想ではなく、バルサと共に生きている姿が描かれているのがとても嬉しかったです。
子供時代が描かれたことにより、バルサとタンダが生きる守り人の世界に奥行きが広がり、空想の世界なのだけど本当にどこか(多分、自身の脳内)に存在しているような気分になれました。願望とも言えますが 笑。