- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101285726
作品紹介・あらすじ
傾いた家のために財閥の妾となった泉美、貧しさ故に芸妓として売られた姉妹の菊代と雛代、奉公先で書生の子どもを身篭る千恵子、豪奢な屋敷で愛に飢える県知事令嬢の和江。人生を選びとることも叶わず、女は明日死ぬかも判らぬ男を想うしかなかった時代-戦前から戦後の不自由さを吸い上げ、荒野の日本で美しく野性的に生を全うした彼女たちが咲かす、ドラマティックな恋の花。
感想・レビュー・書評
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いやー、もう本当に好きだ。
壊れちゃいそうに切なくて悲しいのに
なんて美しくて強い、女たち。
情感に溢れる描写と、理性的な文章の骨子
何より作者の、人物に対する眼差しが優しくて
泣きそうになるほど、みんな愛おしい。
凌霄花のお話がときめきすぎて
萌えましたすみません……。
でもどの話も好きだよーー。ぶわっ。゚(゚´Д`゚)゚。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋のお話だと 思っただけで 憂鬱で、
でも
お友だちが貸してくれたから頑張って読み始めました
長編な短編集?
あ‼菊乃さんだ‼...えぇ〜と...
と、パラパラ読み返したり
結局 引き込まれて 最後は一気読みでした
女を生きてる 女を貫いてる なんかスゴイです
私は、恋のお話を読むと、なぜか うちの人に喧嘩ふっかけたくなります -
戦前、戦中という激動の時代を背景に抗えない時代の波にのまれながらも懸命に人を愛した女たちの物語。彼女たちが愛した男たちは、その時代によって彼女たちから理不尽な形で奪われてしまう。
愛し合った刹那刹那が美しく激しく描かれていて、とてもドラマチックな作品だと感じた。
最後に作中でずっと人に愛されることを求めていながら、愛されることを拒否していた和江にだけ、死ぬまで寄り添える夫ができたところに味があると思った。 -
戦前、戦後を生きた女性たちを描いた4編からなる連作短編集。
現在シリーズ物を読んでいるので、少し趣向を変えてと思い手に取った1冊。
各話の登場人物がそれぞれの話で繋がっており、
息抜きのつもりがほぼ一気読み。
少女漫画チックで少し物足りなさは感じたが
これはこれで面白かった。 -
全てのお話が、同じところにつながっていくのが面白かった
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図書館で。
明治・大正・昭和と戦争を生きた女性が大変だったのはワカルけど…なんかステレオタイプな感じでどこかで聞いたようなお話って感じなので共感も出来ずそうですか~という感じで流して読んでしまいました。というか壊滅的に男の趣味が悪いな、と思うんですが…。少しマシなのは戦争行った子ぐらいだと思うけど…それでも彼も問答無用で行為を迫るしなぁ… まあ時代的にそう言う時代だった、と言われればそうなのかもしれないけど、だったらそれこそ戦時中に恋なんて…とどちらかは踏みとどまらない?とか考えてしまいました。そして結局皆素敵な殿方にメロメロになるなら女性に惹かれたってくだりは必要だったんだろうか?とそこも疑問に思いました。
まあ簡単に言うとあまり男の趣味が合わなかった、という事なのかなぁ。あの時代、女性が一人で自立して生きていくなんてほぼ無理だったんだろうし、大変だったのはわかるけれどもわかるからこそ安易に危険な恋に飛び込むヒロインが理解出来なかった感があります。自分だったら良い顔して近づいてきて、結局は女性を窮地に陥れる優男よりも金持ってる不格好な中年男性の方が責任とる覚悟ができていてまあマシかな、なんて思ってしまいますが。…世間一般的には優男の方が良いって思う女性が多いんだろうな、ウン。(でも所詮あいつら、責任取らないでやり逃げしてますぜ、と言いたくなる辺り自分に恋愛小説は向かないのだろうなぁ…) -
読み始める前、それぞれが独立した短編なのかと思っていた。
その頭で読んでいたので、芸者に売られた菊代姉妹の出てくる「天人菊」、破産して自殺した父のせいで財閥の当主の妾になった如月泉美を主人公とする「凌霄花」が、とてもあっけなく感じた。
が、どうやらそういう読み方は間違いであるようで。
一冊の大半を占める分量の「乙女椿」で、それらの因縁がつながっていく。
太平洋戦争が激化する頃、千恵子が女中として働く先で出会うのが泉美の息子、政吉。
身ごもったものの実家にもいられなくなった千恵子を助けるのが、菊代と雛代姉妹。
そうか、そう来るんだ、と驚いた。
もう一方の主要な筋は、気難しいお嬢様の和江と千恵子のつながりの物語。
そうか、この話は、女の絆を、複層的に描こうとしたのか、とやっと理解した。 -
読む度に惹きこまれる宮木さんの小説。
大正から戦後にかけてを強く、逞しく生き抜いた女性を描いたこの短編集は、読み進めていくにつれ連作短編小説だと気付きます。点と点が線になる。
解説は三浦しをんさんが書かれているのですが、これがまた素晴らしく小説の魅力を伝えていて、ページを閉じるその瞬間まで、むしろ読み終えた後も余韻が残り、幸せでした。
何をもって幸福なのか、不幸なのか。
理不尽なことがない人生なんてない中で、登場する女性たちに、幸せなことも、辛いことも訪れて、それはこの小説に限らず、現実に生きている私たちも同じこと。
全体を通して際立つのは、愛する男性の存在。
そして、女性同士の深い繋がり。
愛する人に出会えたこと、そのこと自体は、女性としてとても幸せなことだと思います。
一方で、その人と離れなくてはいけないことは、どれ程魂がちぎれる痛みでしょうか。まして、戦地に赴く、命が助かるかわからない、それをどうすることもできない無力さは、想像するだけでも居た堪れない。
三浦さんも解説で書かれていましたが、男性同士の友情とはまた違った、女性同士の友情、というのもあるんですよね。
表面上は分かり合えなくても、深いところで繋がっていること。宮木さんの描く女性が好きです。
そして、辛い出来事が起こりながらも、花の名前がつけられたこの短編集は、美しさを置き去りにしない。
「花の匂いに溜息が出た。すぐ外に見える沈丁花が甘酸っぱい香りを部屋の中まで漂わせ、その横の寒緋桜は毒々しいほど鮮やかに花を垂れている。柊南天がひよこみたいに黄色い花をぽつぽつと星のように咲かせ、地面の近くを見れば、鈴蘭水仙が申し訳なさそうに小さな白い花を付けていた」
と、まだまだ続けたくなってしまうけれど、なんて、美しく、素敵な目線を持って世界を見ているんだと思いませんか。
泥に汚れても凛とした花のような、誇り高い美しさを見せてくれるから、泣きたくなる。日本ではもう戦争をしていないけれど、今も世界で戦争をしている国の女性たちは、同じように愛する人を送り出している。
そう思うと、またさらに泣きたくなるのでした。