原爆投下: 黙殺された極秘情報 (新潮文庫 え 20-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101283777

作品紹介・あらすじ

原爆投下はアメリカによる奇襲攻撃であり、そのために空襲警報さえ出せなかったという定説。果たして、これは真実なのか――。NHKスペシャル取材班は、元通信隊員ら当時を知る人々をたずね、日米の資料を紐解く。陸海軍の諜報部隊は、B29の謎のコールサインを傍受していたという驚愕の事実が、しだいに見えてくる・・・・・・。“唯一の被爆国”の出発点を解き明かす。解説・佐藤優

感想・レビュー・書評

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  • ドキュメンタリーを纏めたものだが、末期症状の大日本帝国の様子が各所にみられる。

  • 原爆を投下するための特殊任務機の動向を掴んでいたにもかかわらず、二度にわたり投下を阻止できなかった陸海軍上層部。
    情報を掴んだ現場情報部員や、体当たりしても落とすと決意していた戦闘機搭乗員にも取材しており、それとの対比が、やるせなさを感じさせる。
    肝心の情報が生かされなかった理由が、推測に留まり、その推測と、日本側の原爆被害調査とちうもう一つの情報がこちらの場合は米国への手土産として使われたのを対比して、わが国上層部の国民軽視であるとの結論に繋げるのは、結論の正しさとは別に、ちょっと結論の出し方が妥当だとは思えないし、肝心の部分に迫れなかったのは残念。
    不要な推測や、執筆者の考えが出過ぎている部分はあるが、情報が生かされない組織の体質や、国民軽視の上層部、陸海軍情報部局の実態の一部を明らかにしている点では優れたノンフィクション。

  • 敢えて言おう、長崎原爆投下もしくは2発目の原爆の被害は防げた、と秀逸なノンフィクションである本作は語ってくれる。
    情報を活用する方法や判断を間違えた。当時の大平洋戦争末期の日本と、そして、2011年の福島原発危機の日本においても。
    未だ組織の空気を読めと言われがちな日本において、この作品の功績は計り知れない。

    被爆者達の悲惨極まりない災難だけを追うのではなく、本当の犯人を執拗に追求する姿勢は、真のジャーナリズムだと思う。

    そして、元外交官であり、加害者たる官僚の後輩たる佐藤優の解説も見逃せない。

  • -

  • 読みはじめるとすぐに止まらなくなり、一気に読了した。
    丹念に検証された過去。
    もちろん今だから、そうだったかもしれないと考えることが
    できたのだけなのかもしれない。
    だけれど、ほんとうに、なぜそこに至らなかったか、
    悔やんでも悔やみきれない現実が横たわる。
    ほんの一瞬、ほんのわずかな判断な差で、
    何万もの命が助かったのだとしたら。

    戦争はいけない。
    それ以前に、
    人は国という大きな単位の争いについて
    考えるより先に、
    個それぞれで、「他よりも」や「自分だけ」という私利私欲を
    捨てなければならないと思う。
    積み重なった結果が、
    このような惨事となった。
    そう思えてならない。

  • 2015(底本2012)年刊。

     ① 日米(独も)原爆開発秘話、②米国の原爆投下準備と実施、③戦後の原爆調査模様。これらは他書にもある。
     しかし、ⅰ)日本軍が通信分析等を通じ、原爆らしき兵器の完成を捉まえていた点、ⅱ)原爆投下の危険性をかなりの確度で軍令部や参謀本部が把握、ⅲ)殊に、長崎投下につき防衛・迎撃が確実に可能だったのに放置、ⅳ)広島後、従前、空襲被害のなかった新潟市は全市民疎開を実施、長崎市にも類似計画が有り、ⅴ)ⅳ)の計画、つまり原爆投下を予期できていたにも関わらず、米の原爆を保身の為か公に認めなかった軍上層部。
    ⅵ)にもかかわらず、東京への原爆空襲の報(誤報だったが)に、疎開計画を実施しようとした軍。これらを証言・文書等から解読し、現場は兎も角、上層部は日本軍を民衆防衛のために役立てようとは考えていなかった事実を暴き出す。こんな日本軍の上層部の有り様を雄弁に語る書。

     佐藤優の解説は、やっつけ仕事か?と見紛うばかりに「らしく」ない。

  • 衝撃なのは、陸海軍の諜報機関によって、特種任務を帯びた米軍部隊の存在はある程度察知されており、それが原爆に関するものだという予測は必ずしも不可能ではなかったと述べるところで、その結論が丹念な取材を根拠にして説得力を持って迫ってくる。特に長崎攻撃については、米軍パイロットが日本軍の迎撃を予想して不安に駆られたという証言からも窺えるように、軍が広島の前例を踏まえた対策を取り得た可能性を考えると、2度目の原爆投下を許した無策さに改めて気付かされるものがあった。情報を活かすも殺すもそれを扱う人次第というテーマが、先年の大震災時の対応とリンクして読者に突き付けられており、戦時の出来事に留まらない内容を含んでいる。本書のもう一つの意義は、原爆投下を知る様々な立場にあった人たちの肉声を遺した事で、最後の"機会"をとらえた貴重な史料ともなっている。

  • 広島、長崎の原爆投下の際、何故か空襲警報は発令されていませんでした。もしも空襲警報が発令されていれば、犠牲者の数はもっと少なくて済んだはずと言われています。一方、陸軍、海軍はアメリカ軍の通信を解析してB29のコールサイン(飛行機固有の呼び出し記号)を割り出し、ほぼその出撃態勢をつかめる程のレベルに達していました。そして、広島、長崎に原爆を投下したB29についても「特殊任務機」という呼び名で識別ができていたことが本書で明かされています。なぜ原爆を積んだB29の動向をつかんでいながら、なんの対応も取れなかったのか。当時を知る数少ない人達の証言をもとに事実を明らかにしていきます。国民の人命よりも軍などの組織の体裁を優先する歪んだ思想が、どれほど多くの人命を犠牲にしてしまったかを本書は訴えて来ます。
    追い詰められた軍首脳部の対応は、福島原発事故の際の東京電力、政府の対応と重なる部分も多く感じられます。
    かつてNHKスペシャルで放映された内容を基に構成されていますので、難解になり過ぎず、しかし肝心な情報は整理されて記述されていますので、どんどん引き込まれる本でした。

  • 原子爆弾の投下情報を日本軍はキャッチできていなかったのか・・・
    こんな問いから取材を始めてゆくと、ある答えに辿り着いて・・・

    ひとりの日本人として、その結論はあまりにも切ない。

  • なんとなく急に気になって、読んでみました。原爆投下の悲劇は避けられたのではないかという。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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