マネー資本主義: 暴走から崩壊への真相 (新潮文庫 え 20-2)
- 新潮社 (2012年11月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101283722
作品紹介・あらすじ
世界を大恐慌という崩潰の淵に立たせた2008年秋のリーマンショック。何が"百年に一度"の危機を招いたのか。怪物のような金融商品を作った天才たち、年金基金の役回り、「超金余り」現象を生んだ背景…日米政府関係者やウォール街のトップら当事者の肉声が浮き彫りにした「失敗の本質」。出口なき経済昏迷の元凶を明らかにして、大反響を呼んだNHKスペシャル同名番組の文庫化。
感想・レビュー・書評
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18世紀は蒸気機関などの科学の発明と発見、20世紀は大油田の発見と内燃機関の発明、そして人々は大量生産システムの開発に明け暮れる。ここまでは実体経済で資本主義を語ることができた。しかしながら21世紀になると、世界経済を牽引するのは実体経済を伴わないマネー資本主義にとってかわられた(P250参照)
それを支える金融工学についての説明「株価や為替の変動などのリスクを科学的にコントロールする技術」である。この金融工学の公式を利用して投資商品の値動きのリスクに投資家が対応できるようになった(その様に思っていただけ)開発者はノーベル経済学賞を受賞する。
だが、その危ういモノの正体はリーマンショックで暴かれることになる。人工知能に為替取引をさせようとする試みもたぶん失敗におわるのか(笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み応えのある内容で読むのに時間がかかった。
複雑な事情が絡み合って引き起こされた人災であると理解した。
この現象をそっくり今後当てはめて使えはしないが、危機を切り抜けるための考え方の一つにしたい。 -
今日現時点の話をすると、また余ったカネが日本株に入ってきていると言うことだな。
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サブプライムローンから2008年リーマンショックに至る原因の真相を追う。
単行本2009年出版。2023年、アメリカでの3銀行破綻を受けて読了。今読んでも非常に興味深い。
4章建て。
①投資銀行
②超金余り(アメリカ金融当局)
③年金マネー(年金基金やヘッジファンド等)
④金融工学
サブプライムローンはめちゃくちゃなものかと思っていたが金融工学で論理的に設計されていた点は個人的発見。
問題は、ハイリターン商品を求めるヘッジファンドや年金基金等にはハイリスク(&ハイリターン)商品が必要、しかしそのリスクについては誰もが目をつぶっていたことか。商品の作り手も売り手も書い手も。
ローンの証券化、金融工学による商品開発が資本主義の次元を変え、もうそれ以前の資本主義には戻れないと思う。 -
2021/05/30再読する
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20190112 中央図書館
リーマン・ショックから10年以上も経ち、教訓もそろそろ風化しつつあるかもしれない。低所得の人にも金融の恩恵を、という金融工学のテクノロジーは福音であるべきだったが、それを利用する人間のマスの欲望の暴走を抑止するスタビライザーは組み込まれていなかった。 -
今回のリーマンショックを4つのアクターの視点から描写している。
①CDSなどの金融商品を開発し、実際に販売した投資銀行側の視点
②高金利を求めCDSを求めた生保・損保・一般顧客
③景気回復のために超低金利政策を続けたけった金余り状態にさせた政策当局
④CDS開発を原動力となった金融工学、及びクオンツ。 -
株価が上がってけっこうですが、アヘノミクスというか日銀のじゃぶじゃぶ戦略はどう見ても怪しいので、ちょっと前の金融危機を振り返っとこうと思って読みました。結果、みんな懲りてないだけということが良く分かりました(笑)。
2008年のリーマンショックを、投資銀行、アメリカの金融財政政策、投資家やヘッジファンド、金融工学者のそれぞれの立場から振り返ったNHKスペシャルをまとめたもの。金融危機の内実が良く分かるだけでなく、読み物としてスリリングで面白い。
NHKってこういうすばらしい番組を作ってくれるし(民放では無理)いいんですけど、最近の報道は政府の都合優先でとても残念ですね。
さて戦後70年、アメリカによって心も自然も社会も目茶苦茶にされた日本はこれからどうなるんでしょうか。 -
NHKスペシャルの書籍化。近年稀に見るすごく良質な特集だったけど、インターネットでは観れない章もあったので。
リーマンショックは表面的にはサブプライムローンの崩壊に端を発すると説明されるが、その説明をCDOだけに求めるのは教科書的であり実践的な話にならない。大学生が教科書の内容を「知っている」ようなものだ。
ここでは、そもそもサブプライムローンのバブルがどういった歴史的下地を経て崩壊に至ったかという背景を、80年代まで遡って様々な角度から検証しており、内容が濃い。
大別すると以下の4つの視点からそれぞれ整理されており、リーマンショックとは歴史・政治・システム・人間の本能などなどが複雑に絡み合って起こったものであり、決して単純な何かが発火した訳ではないことが分かる。
1.投資銀行の競争激化
2.金融財政政策による超低金利と量的緩和に伴う世界規模の金余り
3.年金基金をはじめとする投資家、ヘッジファンドのマネーゲームへの参加
4.金融工学の限界