春風伝 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (660ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101273723

作品紹介・あらすじ

長州藩士・高杉晋作。本名・春風。攘夷か開国か。国論二分する幕末に、上海に渡った晋作は、欧米列強に蹂躙される民衆の姿を目の当りにし、「革命」に思い至る。激しい気性ゆえに、脱藩、蟄居、閉門を繰り返しながらも、常に最前線にたち、藩の窮地を救ってきた男は、日本の未来を見据え、ついに幕府に闘いを挑む。己を信じ、激動の時代を一気に駆け抜けた男の二十八年の濃密な生涯を壮大なスケールで描く本格歴史小説。

感想・レビュー・書評

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  • 幕末の政局を動かした長州(山口県)の天才・高杉晋作について書かれた物語です。

    黒船が来航し、日本が清国(中国)と同じようにイギリス、フランスなどの欧州列強の植民地となるかと騒がれている時に。徳川幕府の無策を痛烈に批判し、自ら風雲の中に躍り出ていった風雲児が高杉晋作である。
    高杉晋作は、上海に行って欧州列強が如何に傲慢で、清国人を奴隷のように使い、上海を占領しているかを目のあたりにする。帰って来て晋作は、武士で作った軍隊は終わると。そして農民などで奇兵隊を創設した。
    幕府の長州征伐にたいして果敢に少数の軍艦などを動かして戦いを有利に導く。軍を動かし、戦う天性の才能を持つている。その晋作が、若くして病で亡くなったのはまことに残念である。

    【読後】
    高杉晋作に対して思い入れが強すぎて、言葉が出て来ません。思っていることが書けないもどかしさでイライラし、感想を書くのを少し伸ばしていましたが、それでも言葉がまとまりません。晋作を一言でいうと、春風のように爽やかに突風のように走り去った、と言えます。
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    【音読】
    2022年11月9日から20日まで、音読で葉室麟さんの「春風伝」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2015年10月に新潮文庫から発行された「春風伝」です。本の登録は、新潮文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上中下巻の3冊からなっています。
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    春風伝
    2018.05埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2022.11.09~20音読で読了。★★★★☆
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    「参考」
    ※参考は、私のメモ書きです。本の感想ではありません。
    高杉晋作。
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    「高杉晋作(たかすぎ しんさく、天保10年8月20日〈1839年9月27日〉- 慶應3年4月14日〈1867年5月17日〉)」は、日本の武士。幕末長州藩の尊王攘夷志士として活躍。奇兵隊など諸隊を創設し、長州藩を倒幕運動に方向付けた。高杉氏は戦国時代以来、代々毛利氏に仕え藩政に関わる要職を歴任した家である。晋作は通称で、諱は春風(はるかぜ)。長門国萩城下菊屋横丁(現在の山口県萩市)に長州藩士・高杉小忠太(大組・200石)とミチ(道子・大西将曹の娘)の長男として生まれる。
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  • 実在の人物を主人公にした、著者の数少ない本格歴史小説。
    高杉晋作は通称で、諱(本名)は春風だとは、この著で知った。春疾風(はるはやて)の別名が春風なら、疾風迅雷に時代を駆け抜けた晋作にふさわしい名か。
    尊攘派の長州藩を征討しようとする幕府軍に対する回天の戦いは、晋作の人生でのクライマックスである。
    その行動に駆り立てた要因は、師吉田松陰の影響とともに、上海での見聞だろう(上海での晋作たちの冒険的活劇は読みどころのひとつ)。
    欧米列強の植民地化に抗した太平天国軍が敗れ去ったことに焦燥の念を抱き、日本という国家を守るための軍勢を思案する。そして、封建制度の身分を撤廃して編み出されたのが、彼の代名詞ともいえる奇兵隊。
    最前線で長州を、日本を救う活躍をした晋作は、長州藩世子定広ほか様々な人物に敬愛される。
    さらに、彼を慕う女性が次々と。
    長州一の美人との誉れが高い妻の雅、八雲、うの、望東尼、太平天国の周美玲まで。
    世の難事を救うため、天から遣わされた剣鎧護法童子のような晋作。辞世の句「おもしろきこともなき世をおもしろく」の通りの、28年の濃密な生涯だった。

    高杉晋作を主人公にした作品には、池宮彰一郎の歴史長編小説『高杉晋作』もあり、読み返してみようか。

  • 幕末の志士と言われる人たちの中で
    いちばん好きな高杉晋作のことを
    葉室麟さんはどのように描かれているのだろうと思い
    手にとって読み始めて1週間以上かけて読了
    本もドラマも見てきて、知っている内容ではあるけど
    やはり高杉晋作という人はすごい人だよ
    あまりにも濃密で激しい28年に改めて感動
    正しく冷静に未来を見据え、淡々と飄々と行動を起こす
    魅力的でやさしく、長生きして欲しかったな

  • 高杉晋作として知られる人の生涯。28歳までの一生だったんですね。江戸末期から明治にかけて日本という国の進む方向に思いを傾けた多くの人のうちのお一人という認識しかありませんでした。共に歩んだ訳ではないけれど、佐久間象山や五代才助、西郷隆盛とも触れ合っていたんですね。別の道を進まれていたら今の日本は違う国になっていたでしょうか。

  • 2020.08.29

  • 明治維新における長州側の一番の立役者といってもいい高杉晋作を主役にした歴史小説。著名な歴史上の人物を主役に立てる葉室燐作品は少数派(といってもまぁまぁ書いているけど)

    一般的に盛り上がるシーンは、クライマックスの第一次第二次長州征討の描写、上海における太平天国の乱の描写等だろう、この小説の読み処は酒を呑むシーンだと個人的に思う。

    勤王志士たちと酒を交えて語らうシーン、酒の勢いを借りて決起するシーン、そして女性としっぽり呑むシーン、どれもいいんだよなぁ。この味わい深いシーンを楽しむための調味料として躍動する戦闘描写や活劇描写があるんじゃないかと思えるくらいにいい。

    27年の短い生涯を杉の薪が燃え尽くすように生きた高杉晋作、彼の辞世の詩「おもろなきこともなき世を面白く…」の句はこの本を読んでみれば、味わいが変わる。
    世をすねた覇気のないおっさんがスナックや居酒屋で引用していいものじゃない詩なんだ。

  • 強く斬新なリーダーで先を読む力のある男、高杉晋作。
    惚れるぜ!

  • 高杉晋作~カッコ良すぎ~
    現代にこんなお方がいらしたら、もっと違う日本になる気がする。

  • 高杉晋作のイメージといえば、狂気、色気、イケメン俳優、ミステリアス、、、程度であった私。なんとなくカッコ良さそう、みたいな。葉室さんの高杉とかアツイ!読みたいと思い、この本を手に取りました。笑
    恥ずかしながら、高須さんが27歳でなくなるまでにこんなに頑張ったなんて知らなくて、イメージを壊さない爽やか✖️モテ✖️狂気が描かれていて引き込まれました。
    太平天国の乱を参考にして、西郷や竜馬も登場し、張り合ったり刺激しあったり協力しあったりして長州が日本を守る、と意気込む使命感に痺れました。
    うのと八雲がイマイチ不思議。実在したのでしょうか??
    着流しのまま船に飛び乗り強敵に夜襲をかける、美しく儚げなのに堂々とした姿が鮮やかに浮かぶ描写で心に残りました。
    大胆不敵でいて危なげで、自信家だけど道を見失わない信念を持ち、なぜか人を惹きつける愛嬌、魅力がある。
    そんな晋作像は
    まさに本名という春風そのものなんだなと感じました。

  • ものすごく面白かった。
    以前、世に棲む日日を読んだ事があったから正直なところ、どうなんだろうと思っていたが、作者が変わると描き方も変わるので文句なしに楽しめた(こちらは少し、エンターテイメント色が強いけれど)

    この世に生まれ落ちて、嵐のように去っていった高杉。
    その人生は濃密、そして何ともトリッキーな人物だ。

    高杉がこれだけの功績を残したのは、やはり上海留学がキーポイントなんだろう。
    上海で見聞きしたものを、スポンジのように柔軟に強力に吸収できたからこその奇兵隊誕生や、対幕府との戦の勝利(その他にも色々と成し遂げた事はある)があるのだろう。
    そして風に揺れる柳のように、その局面にあわせて自分の身の振り方や周囲の人間を動かせたこと、先見の明があった事なども他の幕末の志士とはちょっと違うなあ。と。

    ラスト、高杉が静かに息を引き取る場面では不覚にも涙してしまった。この時代、労咳で何人もの偉人が世を去っているが、もし労咳に効く薬があって高杉が生き延びたら、次はどんな奇策を持って日本に革命を起こしていただろうか。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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