どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私 (新潮文庫 い 118-1)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101262512

作品紹介・あらすじ

あなたは、人間ですか――。日本が誇るロボット研究の第一人者が挑戦したのは、限りなく人間に近いアンドロイド、自分そっくりの「ジェミノイド」づくりだ。人は鏡と写真のどちらを自分の顔と認識する? ジェミノイドを不気味に感じる境界線は? 人間を“最小限”にデザインすると? ジェミノイドの経年劣化はモデルの自分を修復(整形)すべし? 製作前後の徹底分析で浮かぶ、人間の本質とは。

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    プロローグ
    第1章   日常活動型からアンドロイドへ
    第2章   遠隔操作型アンドロイドを創る
    第3章   サロゲートの世界
    第4章   アンドロイドになる
    第5章   ジェミノイドに適応する
    第6章   ジェミノイドに恋をする
    第7章   実体化するもう一人の自分
    第8章   人を超えるアンドロイド
    第9章   人間がアンドロイドに近づく
    第10章   持ち運べるジェミノイド
    第11章   人間のミニマルデザイン「テレノイド」
    第12章   存在感を持つミニマルなメディア「ハグビー」

    <内容>
    ロボット工学の第一人者。しかし、「アシモ」などの二足歩行型よりも見た目に人間に似せた「アンドロイド」にこだわっている。この本で著者は、「知りたいのは「人間とは何か」「自分とは何か」だ」と言っている。なぜそんなことがロボットからわかるかが、この本の骨子だと思う。
    したがって、なかなか意味深な言葉が出てくる。たとえば、「自分のことは自分が一番知らない」「鏡に映る顔は自分の顔ではない(鏡像なので、左右反対の顔を見ている)」「見かけのアイデンティティ(アンドロイドを自分に似せて作るとして、何歳の顔が一番自分なのか)」など。
    したがって、この本はロボットについて興味を持つ人よりも、心理学に興味を持つ人が読むべきものであろう。心理学的な統計的解析は一切されていないが、そうしたものよりも真実に近い分析がされているかもしれない…

  • めっちゃ面白いです
    人工知能に興味がある人おすすめ。
    人間を人間たらしめるものは何なのか、気になりますよね。


    人間は自分とは何か。考える時体内のことを考えない。
    私とは体の表層を覆う、皮膚や視覚などのセンサの集合体に過ぎない。

    人間は自己を正確に認識できない。
    他人を通して自己を認識するのが社会性?

    人が惹かれるのは髪型、化粧、服装と言った後に飾られたもの。

    コミュニケーションの起源は性的?

    技術は芸術から生まれる。
    確たる理由もなく新しい芸術を生み出す芸術に、方法論や設計図を与えることで、芸術が技術になる。本当の発明というのは、何もないところから新しいものを作った時になし得るものであり、そこでは多分に芸術的センスが要求される。

  • 人の創るには、まず人とは何かを厳密に定義しなければならず、それは技術的な課題よりもっと難しい。だから必然的に、ロボットを作るにあたっては、人間らしさとは何か、人間とは何かを突き詰めなければならない。本書はそれがテーマであり、色んな「製品」が出てくるが、技術面に関しての記述は少ない。

    ジェミノイドの操作をするうちに、それがまるで自分のように感じられてくるという話が興味深かった。脳が体験によって何を自分と認識するか。脳の周りに付いているのが骨肉で、それが自在に動かせるから、たまたまそれが自分になっているけれど、自在に動かせるのが、身体ではなく身体の外部のものなら、それが機械であっても、自分だと脳は「錯覚」する。色んな錯覚をさせれば、何が自分だか分からなくなってくる。ひいては他人も、サロゲートに対して恋をし得る。結局人間とは何かというテーマに繋がっていく。これらは古典的なネタではあるが、製作されたアンドロイドの外観や動きが相当リアルになってきている現在、改めてスポットを浴びる話題かと思った。

  • 読了日:2016/1/16

    "人間の脳は人間と関わるためにあり、人間と関わるものはいずれも人間らしさを持つ"

    この本はロボット(アンドロイド)についての本だったが、
    ロボットそのものというより
    ロボットと人間間のインタラクション、その過程からヒトとはなにかといった
    社会的考察が多く、とても興味深かった。

    "人形みたい"ときれいな人を誉めることがある(一部は感情がわからないという意味を込めるときもあるが)が、
    ロボットはその"きれい"を追及することができる。
    じゃあ、その"きれい"に勝てない人が
    追及できる"きれい"は
    表情や雰囲気といった人間味あふれる部分なのかもと感じてた。

  • アンドロイドを通して、人間とは何かを考えてしまう。今後益々、人間とは区別つかないアンドロイドが生まれて、生活することになるだろう。きっと、アンドロイド(ロボット)と人間のすみわけが議論になるだろう。その点でみても、石黒さんの考察は参考になる。石黒さんの最新刊も読んでみたい。

  • わりと哲学的。
    エンジニアリング的な視点は薄い。

  • ロボットを作るという過程で、「人間とは何か」をとにかく深く考えていて、それが面白かった。

    自分のアンドロイドを作って、歳を取らないアンドロイドに、自分を近づけようとする箇所が面白かった。
    「肉体的な若さは、精神的に若くなることを大きく助けるのである。老いた肉体に若い精神を宿らせるのは、かなりの努力が必要となりそうだが、若い肉体に、若い精神を宿らせるのは比較的たやすいのである」
    アンドロイドを造ることにより、機械と人間が近づく。人間が、自分の体をまるで機械のように感じると、客観的になり過去へのこだわりとか、自分らしさという勝手な精神的な壁が取り払われていくような気がする。
    精神がもっと自由になる、そんな未来を、この技術に感じた。

  • そうか。石黒先生はジェミノイドを通して人間のアイデンティティーの在処について研究をしていたのか。

    数年前に石黒先生の講演を拝聴したことがある。ジェミノイドの開発秘話は面白く拝聴したが、その効能や開発中と言っていたエルフォイドについては、ちんぷんかんぷんだった(決して石黒先生の講演が悪かったのではなく、私の理解力がたりなかったのだが)。
    そしてこの本を読了し、ようやくあの時の講演の内容が120%理解できた。

    それにしても(石黒先生には申し訳ないが)、あのしかめっ面でジェミノイド以上にロボットっぽいの石黒先生が、人の愛や生について真剣に考えている姿を想像すればするほどに可笑しく感じた。

  •  先日、マツコ~が出てる深夜番組に、石黒氏が出ているところをたまたま見かけ、以前本買ってたな、と思い出し、読む。
     かなり変人?先生のようで。しかし工学的視点で常に対象となるロボットに向き合い、フィードバックを受けながら改良していく様子がおもしろい。女性ロボを作ろうという発想と行動力が素晴らしい。妄想はするが実行はしなかったりするのが多方だろう。心理学も含めた今後の研究にも興味があるが、先生の日常での行動にも興味が出てきた。本書内では見かけの老化に対抗するため、まず痩せると考え、すぐに腹筋と食事量制限を始めたところが秀逸。ロボット研究ではなく人間研究である、と主張するところも何となく把握できる。
     続書も予定とのことなので楽しみである。

  • 資料ID:C0036384
    配架場所:2F文庫書架

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著者プロフィール

石黒 浩
ロボット学者、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(栄誉教授)。1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(工学博士)後、京都大学大学院情報学研究科助教授、大阪大学大学院工学研究科教授を経て、2009年より現職。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。オーフス大学(デンマーク)名誉博士。遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞、2015年文部科学大臣表彰及びシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞、2020年立石賞受賞。『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』(講談社現代新書)、『どうすれば「人」 を創れるか アンドロイドになった私』(新潮文庫)、『ロボットと人間 人とは何か』(岩波新書)など著書多数。

「2022年 『ロボット学者が語る「いのち」と「こころ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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