山本美香という生き方 (新潮文庫 や 73-1)

著者 :
制作 : 日本テレビ 
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101260860

作品紹介・あらすじ

大学卒業後、主婦になるが、ジャーナリスト志望の夢を断ちがたく離婚。その後、世界中の紛争地から現地リポートを送り続け、45歳という若さで凶弾に倒れた山本美香。イラク戦時下のバグダッド潜入レポートと、公私にわたるパートナーであったジャパンプレス代表・佐藤和孝氏への取材を通し、国際ジャーナリストとして、そしてひとりの女性として鮮烈に生きた彼女の素顔に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • これまでテレビニュースで伝えられる遠い地域の戦争の様子程度しか知らず、そこで写真を取りリポートする報道関係者につてまったく興味はなかった。それどころか、危険な地域に好き好んで足を運んでいることに疑問を感じ、もし拉致などされたらいい迷惑だと、そのような人たちを私は侮蔑していたかもしれない。

    しかし本書を読み、戦渦の街で逃げ出すこともできずに暮らす一般の人々がいること、私たちは多くの報道関係者が戦場を報道することで客観的な視点で戦争の善悪を考えることができること、戦争当事者である政府や軍にとっての報道関係者は時に利用し時に始末するものであること、そして戦争は一般市民を巻き込み苦しめ憎悪を作る行為であり、戦争を始めるという行為は憎悪の底なし沼に一歩足を踏み込む行為だと知った。

    戦渦の街で一般市民、女性、子供の視点に立ち、戦争の悲惨さを報道し続けた山本美香さんを尊敬するとともに冥福をお祈りする。

    本書は、既刊の「中継されなかったバクダッド」に、山本美香さんに向けた幾つかの追悼文を綴ったもので、多くのページは既刊の採録に費やされている。「中継されなかったバクダッド」は、山本美香さん本人によって生き方をそのまま文章化されている点において重要だとは思うが、生い立ちやシリアでの事件などの掘り下げは物足りなく感じた。編という形でなくだれか著者を立て纏めた方が良かったのではないだろうか。山本美香という生き方は五つ星だが、編成で星二つ減点である。

  • 現場を、現実を知る人々。
    現在進行で全ての事柄が進む時、そのジャッジが正解か不正解か、誰が判断することができようか。

  • 【新着図書ピックアップ!】ジャーナリスト山本美香さんの素顔に迫る1冊。紛争地域を颯爽とリポートし、45歳で凶弾に倒れた山本さん。女性として、ジャーナリストとしての姿に感動せずにはいられない。

  • シリアで銃撃され若くして亡くなった山本美香さんの評伝。彼女自身が2003年に取材して書いた「中継されなかったバグダッド」が再録されている。


    彼女がなぜジャーナリストを目指したのか、そしてなぜあの場所にいたのか。この本を読んでよくわかった。一人の女性の生き方を追うなかで、平和とはなにか、戦争とはなにか、ということを考えずにはいられなくなる。


    ジャーナリストなら誰でも特ダネをものにしたいといった、功名心を持っているのかと思っていたが、彼女の行動を見ていると、そんな感じはしない。キャパの恋人だったゲルダ・タローなんかは同じ女性ジャーナリストでも、功名心が前面に出てた気がする。


    戦時下で女性や子供がいかに抑圧されているのか、その悲惨な状況を伝えることで戦争を終わらせたい。彼女たちの声を伝えられるのは女性である私しかできない。その一心で、取材をしていたのだと思う。とくにイスラム圏では男性による取材は範囲が限られる。彼女の存在は戦争の前線に偏りがちな報道では目の届かない、女性を苛む苦悩、子供が受ける精神的ダメージなど、仮に戦争が終わっても続くであろう戦禍に目を向けさせることに役立っていた。


    あんまり使ったことのない言葉だけど、彼女の生き方は「崇高」だったと思う。


    彼女はジャーナリストだということで狙われ、殺された。情報統制を厳しくしたい戦争当事者たちがジャーナリストを標的にすることは今後も増えるのだろう。 彼女の志を受けつぐ女性が現れるのだろうか。
    それを期待するのは酷のような気がする。

  • 取材中に凶弾に倒れたジャーナリスト。
    日本だと巻き起こりがちな、危険なところに行った自分が悪いというような批判を聞かなかったので、人としても非常に好かれた方だったんだろうなと思う。

    本人の書いた”中継されなかったバグダット”を読むと悲惨さがよく伝わってくる。どっちも大義名分があり、正義がある事になっているのかもしれないけど、ただ悲惨なだけなんだなと。

  • エバーノート

  • 帯文:”シリアに散った国際ジャーナリストが伝えたかったこと。”

    目次:プロローグ 今も前を向いて歩きながら考えている途中、第1章 ジャーナリスト山本美香の誕生~運命の出会いから世界の紛争地へ、第2章 中継されなかったバグダッド~唯一の日本人女性記者現地ルポ―イラク戦争の真実、第3章 バトンを受け継ぐものたちへ~若い世代へ,ジャーナリストの仲間たちへ,そして佐藤和孝さんへ、第4章 あの日のこと

  • 2012年にシリアで銃撃を受け殉職されたジャーナリスト山本美香さん。
    山本さんの生前の活動と考え方を、公私にわたるパートナーである佐藤和孝さんに取材し伝えてくれる。

    本書には山本美香さんが生前に出された『中継されなかったバグダッド―唯一の日本人女性記者現地ルポ‐イラク戦争の真実 2003年バグダッド』がそのまま収められている。

    こういった生き方があるんだなと
    人としての生き方、女性としての生き方、参考になるかといったらよくわからないけども、こういう生き方をした一人の女性がおられたということは深く胸に刻みたいと思った。

    当然なんだけども、やはり生きていてほしかったな。
    生きることの大切さと死ぬ事の悲惨さを最前線で肌で感じ、伝えてこられた。
    それを伝え続けてほしかった。

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    【内容(「BOOK」データベースより)】
    大学卒業後、主婦になるが、ジャーナリスト志望の夢を断ちがたく離婚。その後、世界中の紛争地から現地リポートを送り続け、45歳という若さで凶弾に倒れた山本美香―。イラク戦時下のバグダッド潜入レポートと、公私にわたるパートナーであったジャパンプレス代表・佐藤和孝氏への取材を通し、国際ジャーナリストとして、そしてひとりの女性として鮮烈に生きた彼女の素顔に迫る。
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    【著者略歴 (amazonより)】
    山本/美香
    1967(昭和42)年北海道生まれ、山梨県育ち。都留文科大学卒。朝日ニュースターの報道記者、ディレクターを経て’96(平成8)年より独立系通信社ジャパンプレスに所属。アフガニスタン、イラクなど世界の紛争地を取材、レポートし続けた。2003年ボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞。’12年8月20日シリア内戦の取材中、アレッポにて銃撃を受け殉職
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    【目次】第1章 ジャーナリスト山本美香の誕生―運命の出会いから世界の紛争地へ 1996年アフガニスタン~2003年バグダッドまで
    ・運命の出会い
    ・新卒で入社した会社を退職
     ほか
    第2章 中継されなかったバグダッド―唯一の日本人女性記者現地ルポ‐イラク戦争の真実 2003年バグダッド
    ・嵐が来る前に―カウントダウン48時間
    ・爆弾が降ってきた―戦時下のバグダッド・ライフ
     ほか
    第3章 バトンを受け継ぐものたちへ―若い世代へ、ジャーナリストの仲間たちへ、そして佐藤和孝さんへ 2003年バグダッド以降
    ・若い世代に自分の経験を語り、伝えていく喜び
    ・美香さんは佐藤さんの生徒
     ほか
    第4章 あの日のこと―山本美香が遺したもの 2012年シリアにて
    ・守ってあげたかった、代わってあげたかった―あの日、アレッポにて
    ・取材に基本的にはミスはなかった
     ほか

    山本美佳さん、いまだに「さようなら」を言う気にはなりません(日本テレビ 報道局マルチニュース制作部 小林景一)
    山本美香年譜
    解説(最相葉月)
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  • 山本美香さんが、内戦の続くシリアのアレッポで取材中に兇弾に倒れたのは2012年8月20日のことだった。テレビニュースを見ながら、こんな可憐な日本女性がなぜ紛争地帯の中に?死と背中合わせの危険地帯に積極的に飛び込んで行く勇気と原動力はどこからわいてくるの?と次々と疑問が湧いてきたのを覚えている。この本を読むと、彼女の国際ジャーナリストとしての、取材に対する考え方がとてもよくわかる。報道することで戦争は止められるという信念で、最後まで体を張って報道し続けた彼女。まだまだ生きて伝えたいことは山のようにあっただろう。ご冥福をお祈りします。

  • 書店で目が合ってしまい、買うしかなかった。彼女がジャーナリストとして紛争地域で亡くなったことは知っていたので内容を受け止めるのは重いという事がわかっていたのだけれど、目が合っちゃったので読まないわけにいかなかった…。普段平和な国にいると世界のどこかの事は気にもならなくなってしまう。けれどこうやって伝えてくれる人がいることで、自分たちのすんでいる世界がどうなっているのかを知ることができる。ジャーナリストの方もまた自分の活動に様々な可能性を信じて活動している。

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著者プロフィール

東洋大学ライフデザイン学部 教授(2022年2月現在)

「2022年 『地域福祉と包括的支援体制』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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