冬虫夏草 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784101253435

作品紹介・あらすじ

亡き友の家を守る物書き、綿貫征四郎。姿を消した忠犬ゴローを探すため、鈴鹿の山中へ旅に出た彼は、道道で印象深い邂逅を経験する。河童の少年。秋の花実。異郷から来た老女。天狗。お産で命を落とした若妻。荘厳な滝。赤竜の化身。宿を営むイワナの夫婦。人間と精たちとがともに暮らす清澄な山で、果たして再びゴローに会えるのか。『家守綺譚』の主人公による、ささやかで豊饒な冒険譚。

感想・レビュー・書評

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  • 名作「家守奇譚」の続編。
     
    「家守奇譚」が、あの世界で暮らす綿貫征四郎の日常的エッセイだったのに反し、今作の「冬虫夏草」には一貫した目的があります。
     
    ゴローを探せ!
     
    綿貫征四郎は姿を見せなくなった犬のゴローを探しに、鈴鹿の山中を駆け巡ります。
     
    いや、半分は旅行気分、物見遊山といった体ですが。
     
    途中途中で村人たちとの交流あり、もちろん人以外のものたちとの交流もあり。
     
    キキョウとマツムシソウの話が良かったな。
     
    ラストも良い!
     
    ああ、続きが読みたいなぁ。

    • 傍らに珈琲を。さん
      おはようございます!
      レビューあるかしら?と探索に。

      そーなんですよね、エッセイ(随筆と呼びたくなりませんか)だったのに対して目的が!
      な...
      おはようございます!
      レビューあるかしら?と探索に。

      そーなんですよね、エッセイ(随筆と呼びたくなりませんか)だったのに対して目的が!
      なのに綿貫ったら、ゴローを心配して涙ぐんだりもするものの、結構寄り道してる 笑
      ただそれも、将来的にあの人達の村が水底に…と思わせる為であったかと、梨木さんの技にがっちり捕まれました。

      村田エフェンディ…はマークしてるのですが、本編の方の続編って出てないですよね?
      私が知らないだけなのかな。
      2023/11/09
  • 梨木香歩 著

    「家守綺譚」の続編にあたるという、この作品、あまりに楽しみにし過ぎて…
    「家守綺譚」があまりに良かったので、
    期待が膨らみ過ぎて大丈夫かしら?と思ってたが、心配など無用だった!
    “勝るとも劣らない”この作品に、またしても心酔してしまった私であった。
    本を開いて、綿貫征四郎さん(主人公)の
    登場に、「綿貫さん、お久しゅうございます
    また…お会いできて嬉しゅうございます」
    なんて、
    会いたかった念願の旧友に再会出来た喜びに自然と言葉にしてしまう熱い思いが溢れてしまった。

    この作品には、上手く言い表すことのできないほどの不思議な感覚を持ってしまう。
    何故なら、頁を開くだけで、その本の中に、すう〜と入っていけるのだ
    すぐさま、そこに浸透していける時空を超えたような、その本の中にいる時点に降り立つことが出来る 
    そこは今…自分がいる現在ではなく、正に、綿貫征四郎が歩いている旅の時点で、客観的に見ているというより
    綿貫征四郎に自分自身が憑依してしまった感覚だ!

    これまでに、色んな小説を読んで…同じように共感したり、知識を得て感動を得たり、その見事な表現力に感嘆する自分であったが、
    フィクションである小説の中に、ふと、作家の顔が見え隠れすることがある、それは、その作家さんに対する尊敬の眼差しとともに、客観的にその世界を堪能することが出来るという感覚だけど…

    この、本の中に入り込んだ私には、作家の顔は、まるで見えない それは、まさに、
    小説の中の主人公、綿貫征四郎自身の体験している世界であり、綿貫征四郎の目を通してそこに憑依した自分がいる そこでは現在の時は止まっており、その本の中の時を生きてる感覚なのだ!

     本題に触れれば、
    前作の『家守綺譚』ではほとんど京都周辺を離れたことがなかった綿貫は『冬虫夏草』では失踪した愛犬ゴローを探し求めて、鈴鹿山中へと分け入っていく。このゴローが旅慣れぬ主人公を先導する水先案内人のような役割を果たしている。
     綿貫の道程はまるで巡礼の旅のようだ。
     行く先々で綿貫を待ち受けるのは厳しい自然の中  で暮らす人たち。
    前作にはなかった、この土地の方言や習俗がいきいきと描かれている。
    何とも、心和むような、その土地の方言、
    「はて?この方言の言葉は何と言う意味なのか?」と首を傾げていると、綿貫の問いに方言の意味することを説明してくれるという粋な、はからいがある
    (作家自らこの地に幾度も取材で足を運んだという賜物であるらしい)虫送りやカワセガキと言った習俗も実際に行われていたものらしいと後で知り感慨深い思いがした。

    旅する間に、知り合う人物、河童の子、長虫屋さえも前作同様、さりげなく登場する
    イワナの夫婦と竜神…等等(出会えたものを総て紹介しそうだ)
    そして、綿貫の大切な友、高堂や南川 今作では高堂の登場は少なかったものの、理科学部講師南川の登場 旧友のクールな南川のことを「此奴は昔からこういうやつなのだ」と心の声を出しながらも、友を労る気持ちも溢れていて、綿貫の人柄の良さを感じとれる。

    ゾワッとするような不穏な空気にも怯まない
    怖さよりも興味と好奇心の方が勝ってしまうという、可笑しさに笑えてしまう しかし、
    儚き命に対する思いやりに何度も涙した。

    記憶の中にだけある場所に、幾たびも触れるように、綿貫が旅したのはこの世の彼岸と此岸の狭間のようなところ それが余計に身に染み渡る。
      覚えていますとも。マツムシソウ。
      綿貫は心もとないやさしい幾つもの約束を果たしながらながら、私たちに勇気を与えて導いてくれる。
      忘れることのできないものを抱えて、
      生も死も、この世もあの世も。
    あらゆる自然との共存 
    生きとし生けるものへの愛着と感謝
    自然が織りなす景色の雄大さ美しさに心奪われながらも、小さき花や植物にも目を見張る

    冬虫夏草とは、かたちを変え、変容しても、なおその先を生きている命の姿

    河童の牛蔵に教えられる
    「人は与えられた条件のなかで、
      自分の生を実現してゆくしかない」

    綿貫も思う、森羅万象、大きくみれば、そもそもはひとつのもの。

    この、物語りをずっと読んでいたくて、
    終わらせたくなくて…。
    それほど 長い物語りではないので、ちびちびと頁をめくり、作中に登場する植物や花の名前を調べて 記憶の中の覚えていた植物の残像を追いかけて
    「あ、この花のことなのか〜」と道草しながら、じっくり、ゆっくりと噛みしめながら読んだ。

    でも、ラスト綿貫が愛犬ゴローを見つけた時は、
    鼻の奥がツーンと痛くなって
    涙を抑えることが出来なかった。

    物語りの中に陶酔していた私は、
    感想文の中で作家のかおが見えないような
    ことを綴りましたが、
    あるがままを偏見なく見つめようとする綿貫のまなざしは、そのまま作家自身のものでもあるように重なっており、慎ましく作家の顔を覗かすことなく、綿貫の視点を守り通している。

    そんな作家の梨木香歩さんには感服!
    偉大な、偉大過ぎる作家さんだと思う。

    100年前という時代設定も、その間に私たちは何を失ってきたのかを静かに問いかけてくるようだ。そして、読み手は静かに、その声に耳を澄まし、その息吹を感じる。
     植物は梨木香歩が描く小説において常に大切なモチーフになっているけれど、それは、どんな命も、きっと植物と同じように生きようとしているはずだという作家の確信に満ち溢れている。

    本にしか癒すことの出来ない時ってある
    本でしか救われない時だってある
    心の書って、こういうことなんだ
    生きてるって、こういう気持ちなんだ
    あらためて感じさせてくれた。
     
    この本に出会えて、本当に良かった!
    生きてるうちに、読むことが出来て良かった
    「間に合った!」って ありがたく愛おしむような作品。

    きっと、また本の頁を開けば、その世界に降り立つことが出来るはず

    この本は、私の「心の書」だ。

    • りまのさん
      hiromida2さん
      素敵なレビューです!私は、梨木香歩さんをまだ読んでいないのですが、読んでみたくなりました。 フォローありがとうござい...
      hiromida2さん
      素敵なレビューです!私は、梨木香歩さんをまだ読んでいないのですが、読んでみたくなりました。 フォローありがとうございます。そして、2021年一月1日 あけましておめでとうございます!どうぞよろしくお願いします。
      2021/01/01
    • hiromida2さん
      りまのさん、
      あけましておめでとうございます。
      元日から、嬉しいコメントありがとうございます。私も、まだ沢山の梨木佳穂さんの作品を読んだ訳で...
      りまのさん、
      あけましておめでとうございます。
      元日から、嬉しいコメントありがとうございます。私も、まだ沢山の梨木佳穂さんの作品を読んだ訳ではないですが 前編、後編に分かれての「家守綺譚」と「冬虫夏草」は私にとっては、大切な本になりました。
      今年は他の梨木さんの本ももっと読みたいと思ってます。
      気にいるか?どうか分かりませんが、今までにあったことのないような、優しくて素敵な本です。
      りまのさんの本棚にもまた遊びに伺わせてもらいたいです。りまのさんは、素敵な詩が好きなんですね。素直な感想に私も興味を注がれました 
      また、参考にして、読みたいです。
      お体に気をつけて、穏やかな春が りまのさんにもやってきますように…(^。^)
      今後とも、よろしくお願いします。
      2021/01/01
    • hiromida2さん
      PS、最近、誤字が、多すぎて、ごめんなさい
      大好きな梨木香歩さんの名前まで間違って変換してました。香歩さんです(^^;;
      スマホばかり使って...
      PS、最近、誤字が、多すぎて、ごめんなさい
      大好きな梨木香歩さんの名前まで間違って変換してました。香歩さんです(^^;;
      スマホばかり使ってると、駄目ですねm(__)m
      2021/01/01
  • 「家守奇譚」の続編。
    ページを開くと、相変わらずゆったりとした空気が流れていて、心が落ち着く。
    愛犬ゴローが失踪し、友人である菌類の研究者の南川に教えられ、綿貫は鈴鹿を探索することに。
    生駒、鈴鹿、若狭、敦賀など馴染みのある地名が出てきて、想像をかき立てられる。
    広々とのどかな風景や、山里の人々の生活が、とても興味深く描かれていて、綿貫が旅の途中で出会う人たちも皆いい人ばかりである。

    およそ百年前の人々は、ほんとうに天狗や河童と共生していたのだろうか。
    イワナの夫婦がやっているという宿にたどり着けるのだろうか。
    はたしてゴローには会えるのか。

    まるで山の中にまで竜宮があるかのような、夢のような冒険譚。
    ふと気がつけば、脚絆に、ぼろぼろの足袋、泥にまみれた草鞋という綿貫の姿に感動しながら、いつまでもこの物語を読んでいたいと思う。

  • 『家守綺譚』を読み終えてから、だいぶ経ってしまった。
    それでも、この世界観にホッとする。
    何も起きないのだが…いや、起こるは起こるのだが、季節や動植物の精霊に関してはまるで起きて当たり前のような語り口。(前作も同様)
    たとえば狸が化けて法話を行ったり。
    ムジナが毘沙門祭りに現れたり。
    イワナの夫婦が宿屋を営んでいたり。
    それだけでなく、神々も妖怪も姿を表す。
    赤竜、天狗、河童…。

    主人公である綿貫征四郎が記した随筆のような作りだが、すんなりと世界観に浸るには、まず『家守綺譚』を読んでからの方が良い。
    その『家守綺譚』同様、各章が植物の名前になっている。
    私なんぞは、もうこの時点でときめいている。
    風情のある情景に、ちょっぴり笑いを忍ばせた、少し不思議なお話の数々。

    「梔子」
    昔、八重咲きの梔子を育てていた。
    花付きが良い、いい子だった。
    まったりと甘くて、それでいてまた嗅ぎたくなる、うっとりする香りだ。
    大好きすぎて一時期ガーデニアというパフュームを愛用していたが、国内販売が期間限定だった為に纏め買いしたのを使いきってしまった。
    本作では、綿貫が和尚と話をしていると、ふいに梔子の花の香りが流れてくる。
    風向きの変化とかではなく、
    「そうか、今、このたった今がこの匂い始めの先駆けであったのか、と少し気分が明るくなる」
    との綿貫の考え方が素敵だなぁと、私の気分も少し明るくなった。

    「ヤマユリ」
    ヤマユリの章にモリアオガエルの文字を見つける。
    またも私の思い出話だが、高校の生物の先生が変わった先生だった。
    モリアオガエルの研究をされていて、いい感じの雨が降った翌日の授業は自習だった。
    先生が、モリアオガエルを捕まえに行ってしまうからだ。
    果物からビールを作ったこともある。
    出来上がりの日、
    「量が減っている子はごめんね、私が少し飲みました」
    それよりも今思えば、高校生の歳で、しかも校舎内でビールなんて、良かったんだろうか。。。
    もう何年も前、ある日、テレビに先生が出演されていた。
    ………!!
    先生は二ノ宮くん(嵐)の体に透明のチューブをグルグル巻いて、ウミホタルを放った海水を流して光らせていた 笑笑
    先生、前からそんなことしてたもんなぁ 笑

    さて、本編はというと。
    分かるけど、ちょっぴり気味の悪い話だった。
    ただ、
    「それに斯くも清らかな月光を総身に浴びつつ空中を落下する、その一瞬が一生のすべて」
    に、ストップモーションのような、生命の神秘を感じた。

    『家守綺譚』のレビューでも書かせていただいたが、本書は植物がお好きな方であれば一層楽しめる。
    たとえば、
    「この辺りの生垣の、山茶花の列には、一本二本は必ずよく似た茶の木が交じっているものであって、花が咲いて初めてそれと気づくのである」。
    山茶花とお茶はどちらもツバキ科の植物で、葉はよく似ている。
    これは「茶の木」の章でのお話。

    また、続く「柿」では、
    鯖街道や秋の日の入りの早さなどに触れており趣深い。
    竜田姫も、その一つ。
    竜田姫は奈良県生駒郡に祀られている秋の女神。
    (ちなみに春の女神は奈良市に祀られている佐保姫)
    高堂が急にやってきて、
    「秋が疲れているのだ。家の垣根の隅で、野菊の弱弱しく打ちしおれているのに気づいていないか。」
    「龍田姫が日枝においでになったまま、なかなか動かれない。…………紅葉が終わらぬ。」
    「吉野にお渡り願わねばならん。何か、里心を誘うものを献上して。」
    という。
    綿貫のもとには、おかみさんから頂いた鯖ずしが。
    明日が食べ頃だと言われ楽しみにしていたというのに、"里心を誘うもの"として半分取られてしまう 笑

    竜田姫が紅葉を織ると言われている。
    そして野菊も秋の季語となっている通り、秋が見頃だ。
    季節は、訪れては通りすぎてゆくもの。
    そうでなければならない。
    竜田姫が吉野へ渡らないと、野菊のシーズンも終わらず、紅葉も一向に終らない。
    雨ばかりでは野菊も花を咲かさずに根腐れてしまう。
    こういった伝説の神や物怪が当たり前に登場するところに、この物語の良さがある。
    季節の移り変わりを、その時期の野草になぞらえて語られるところも。

    そしてこの高堂の登場シーン。
    綿貫は火鉢の向こうに誰か居るのに気付き声を上げそうになるが、
    「高堂だとわかり、胸をなでおろす。」
    「ーおどかすな。来たら声をかけろ。」
    いやいや…。
    そもそも高堂は亡くなっており、毎回掛け軸から出てくるのだから驚くならそちらと思うが 笑

    今回の大きな事件といえば、綿貫の愛犬ゴローが行方知れずとなる。
    綿貫はゴローを探して蛭谷を目指す。
    本作は、ゴローを探す旅行記のような感じだ。
    途中、「節黒仙翁」という章がある。
    『家守綺譚』のレビューでも述べたが、しつこく述べたい。
    お時間がある方は、知らない植物の名が登場したら、是非、画像検索していただきたい。
    作品の空気を感じとることができるからだ。
    私は"節黒仙翁"を見たことがなかったので検索。
    節黒の由縁であるという、黒い節の画像も見ることができた。
    槻の木も同様に。

    「椿」の章で綿貫と中居が、"タニシ"だ"たのし"だとのやり取りがあるが、直ぐ次の章で回収される。
    なんともいじらしい。

    「キキョウ」は切ない話だが、続く「マツムシソウ」で救われる思いだった。
    綿貫はきっと、少女時代の松子さんと出会ったのだ。
    いつまでも松子さんの中に、少女の松子さんは生き続ける。
    マツムシソウは私も2色育てていた。
    よく目にするのはピンク色だが、赤花マツムシソウもあるのだ。
    ちなみに松子さんが言う"スガレ"とはクロスズメバチのことのようだ。
    伊那谷では食用とされるらしい。

    私が好きな場面は「杉」の章、お爺さんお婆さんが蕎麦を打って待っていてくれたシーン。
    勧められた滝を見て帰ってきた綿貫に、お爺さんが"喜色満面で手招き"、
    「ーどないどした、識盧の滝。」
    「先生気に入らはるやろなあ、思たんどすわ。思たとおりや。」
    などと声を掛けてくれる。
    そこにお婆さんもやってきて、"どないどした、いやよかったです、を繰り返し"…という場面。
    お爺さんというのだから蕎麦を打つのは大変だろうに。
    急にやってきた他人である綿貫を、もてなそうという温かい心。
    方言も耳(目だけど)に優しくてほのぼのする。


    ゴローはなかなか見つからない。
    それどころか、今は神に仕える身の高堂から、これまで歩いてきた村々が、将来水底に沈むかもしれぬと聞かされる綿貫。
    手打ち蕎麦を振る舞ってくれたお爺さんやお婆さんも、蒟蒻屋の母君である松子さんも…。
    綿貫と共に読者である私も、言い表せぬ気持ちになった。
    高堂は言う。
    「しかるべき順行というものがあっても、それがそうなるようにもっていくのは骨が折れる仕事なのだ。衰えていくものは無理なく衰えていかせねばならぬ。」
    そうか、作者の梨木さんが村々の魅力的な人々を何場面も重ねてきたのは、読者にこの気持ちを味合わせるためだったか。。。

    さて、ゴローは見つかるのか。
    ラストシーン、短く句点を打った文章に綿貫の逸る気持ちが伝わる。
    季節ごとの野草、自然、近畿の神々、そこに住まう人々…本作の空気を吸い込んで、リフレッシュできた気がする。


    ☆君ケ畑・・・滋賀県の君ケ畑集落。こけしなどの木工品を作る職人発祥の地。
    ☆木地師・・・木工品を作る職人。
    ☆杣人・・・林業従事者。きこり。
    ☆「あかねさす 紫野行き標野行き…………」・・・万葉集にある額田王が詠んだとされる和歌
    ☆あめのう・・・雨の魚、サケ科の淡水魚。琵琶鱒。あめのうのご飯は滋賀県の郷土料理らしい。
    ☆瀟洒・・・すっきりとあかぬけている様。


    • 土瓶さん
      同著者の「村田エフェンディ滞土録」もお勧め。
      同著者の「村田エフェンディ滞土録」もお勧め。
      2023/11/08
    • 傍らに珈琲を。さん
      ふふふ
      ふふふ
      2023/11/08
    • 傍らに珈琲を。さん
      土耳古に行ってる村田くんね、チェック済みですb
      土耳古に行ってる村田くんね、チェック済みですb
      2023/11/08
  • 待ちに待った文庫化!
    大好きな『家守綺譚』の続編ということで、文庫化を心待ちにしていました。
    単行本の時に図書館で借りて読んでいるので、今回は再読ということになりますが、1回目よりも楽しかった^^
    途中出てくる、ダムのことかな?という記述、1回目に読んだ時はさらっと流してしまいましたが、今回は気になって調べてみたら物語に出てくる地名は現在本当にダムになっていて、廃村になってしまった村もあるのですね・・・
    こんな感じで地理的なことを調べてながら読んだことも関係して、今回の方がより深く楽しめたのかなと。
    また、イワナ夫婦が営む宿とか河童の中居とか泉鏡花の作品と繋がる魅力を凄く感じるなと思いながら読み進めました。
    『家守綺譚』と同じく何度も読み返すことになりそうな一冊です♪

  • フォローしているレビュワーさんのレビューを読んで、「家守奇譚」「村田エフェンディ滞土録」からこの本へ。日本画のような家守、水彩画のような帯土録、この本はまるで水墨画のよう。この世の隣にある世界との境目がますます淡くなり、不思議なことが当たり前になる。こういう世界観がとても好きだ。日本の土着の宗教観に似ているのではないだろうか。

  • 大好きな『家守綺譚』のその後の物語。
    相変わらず心地好い世界観!
    独特の摩訶不思議な懐かしい民話の世界に浸れた。

    愛犬ゴローが突然姿を消したことから始まる、ゴロー探しの旅の物語。
    相変わらず飄々とした綿貫が一人、ゴローの足取りを辿り山中をさ迷う。
    道中で出逢う人、河童、天狗、イワナ、幽霊…。
    この男の向かう先には次々に不可思議な現象が起こる。
    でも全てがとてつもなく優しく温かく涙が出てくる位愛しい。
    今回は綿貫のお陰で美しくも懐かしい日本の原風景を体感できた。

    表題になっている「冬虫夏草」。
    人も生き物も皆、その時々で生き方が変わるのは仕方のないこと。
    与えられた条件で自分の生を全うしたい!
    今回も梨木さんの教えが心にゆっくり染み渡る。
    またこの続きを期待したい!

  • 想像力のいる読書。読後感がとてもよい。

    先の形状に未練を持たず、今の形状を誠心誠意生きることが、生きるものの本道なのやもしれぬ。
    イワナ、河童、冬虫夏草…繋がった。

    2020.5.1

  • 文庫が出たので買ったんだけど、
    もう既に読んでしまっていたらしい。
    と言うわけで、感想は単行本の方に(^_^;)

    これを機に再読するか…。

  • 再読。
    なにもかも、存在するものが当たり前に受け入れられる世界。
    難しく考えることはない、生かされるまま。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨木香歩の作品

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