不思議な羅針盤 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253411

作品紹介・あらすじ

ふとした日常の風景から、万華鏡のごとく様々に立ち現れる思いがある。慎ましい小さな花に見る、堅実で美しい暮らし。静かな真夜中に、五感が開かれていく感覚。古い本が教えてくれる、人と人との理想的なつながり。赤ちゃんを見つめていると蘇る、生まれたての頃の気分……。世界をより新鮮に感じ、日々をより深く生きるための「羅針盤」を探す、清澄な言葉で紡がれた28のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 2007年から2009年までの三年間、雑誌「ミセス」に連載されたエッセイ集。

    随所に梨木さんらしさが出ている。
    動植物
    への深い知識、人間としての大きさ、深い愛情。。
    特に最後の「どんぐりとカラスと暗闇」は梨木さんの思いが詰まっている。
    この本もまたずっと一緒にいたい一冊になりました。

    最近 良い本ばかりに巡り合い、とても充実しているように思います。

  • 北斗星(12月6日付)|秋田魁新報電子版
    https://www.sakigake.jp/news/article/20221206AK0010/?nv=akita

    『不思議な羅針盤』梨木香歩/文化出版局【本が好き!】
    https://honzuki.jp/book/121778/

    梨木香歩 『不思議な羅針盤』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/125341/

  • いるかさんの本棚で見つけました

    梨木果歩さん
    濁りのないその目差しにとても憧れる
    だけど遠いなあ
    だけどとても近く感じる

    ふとした動植物、土や風景、人、食べ物にに注がれる見識と愛情が素敵だ
    やっぱ遠いなあ

    澄み切った秋空のようなエッセイ集でした

    ≪ 生きていく その羅針盤 すぐそこに ≫

  • 文庫で再読。
    日常の何気ない一場面や片隅の植物から、生き方や在り方に想いを巡らせる梨木さんのエッセイは、読むたびに「自分はどうだっただろう」と省みるきっかけになってくれます。

    近づきすぎず、離れすぎず。
    誰かに頼ることも、1人で立つこともできるよう。
    「ちょうどよい」を保てるバランス感覚を養っていきたいものです。

    今回メモした部分と同じ箇所を、2011年に単行本を読んだときにもメモに残してありました。
    自身が「こうありたい」と思っている姿が、6年経っても変わっていないことを確認できた、実り多い読書でした。

  • 梨木香歩(1959年~)氏は、鹿児島県出身、同志社大学卒の児童文学作家、小説家。児童文学関連はじめ、多数の文学賞を受賞している。
    本書は、月刊誌「ミセス」に「不思議な羅針盤」として2007~2009年に連載された28篇のエッセイをまとめて2010年に出版され、2019年に文庫化された。
    私は、ノンフィクションを好み、小説をあまり読まないため、これまで残念ながら著者の作品に目が留まることはなかったのだが、小川洋子のエッセイ集『とにかく、散歩いたしましょう』を読んだ際に、その中で著者の『渡りの足跡』から引用していた一節に惹かれ、本書を初めて手に取った。
    エッセイ集については(当然ノンフィクションなので)、これまで、須賀敦子、白洲正子、藤原正彦、沢木耕太郎、藤原新也、内田洋子、最相葉月、福岡伸一、吉田修一、穂村弘、ジェーン・スー、石川直樹など、幅広い分野の書き手による、硬軟様々なものを読んできたが、書き手の物事の捉え方・考え方、人となりが如実に表れており、とても面白い。
    本書に収められた28篇のエッセイのタイトルは、「堅実で、美しい」、「たおやかで、へこたれない」、「ゆるやかにつながる」、「みんな本物」、「世界は生きている」、「「野生」と付き合う」、「夢と付き合う」、「「アク」のこと」、「百パーセント、ここにいる」、「「いいもの」と「悪いもの」」、「変えていく、変わっていく」などとなっており、いずれも、著者の造詣が深い鳥たちや草木のほか、身の回りにあるものや日常の出来事に託して、それらのテーマが綴られている。
    例えば、以下のような印象に残る記述がある。
    ◆「煮詰まった人間関係は、当人がどんなにがんばっても容易なことでは動かない。よく、自分が変われば他人も変わる、というけれど、今の世の中ではそういう法則も働かないことがある。あまりにも複雑な要因が絡んでいるから。「シロクマはハワイで生きる必要はない」・・・」
    ◆「倫理的でありたい、と願う気持ちと、自分は倫理的である、と自負する気持ちは別ものだ。倫理的でありたい、と願いつつ、それができないことを自覚する人の方が、なんだか「いいもの」のように思えるのはなぜだろう。」

    巻末の解説で臨床心理士の平木典子氏は、「読後にはある種の透明感が残る」と書いているが、小雨の降る午後や、静謐な夜に、ひとりで落ち着いて読みたくなるような一冊である。
    (2021年5月了)

  • 数々のエッセイでは、植物、動物などわたしの好きなエッセンスが登場。

  • 程よい距離感。

    梨木さんの文章は主張しない。
    何かに憤慨しても心動かされても
    それをそれとして
    まるで自分のことも含めて
    傍らで観察しているような気配。

    何ものにも染まず染まらず。
    彼女の小説が放つ強い存在感の正体は
    彼女のエッセイ集を読み重ねているうちに
    少しずつ分かり始めたような気がする。

    ご自分の中に生まれる感情や思いを
    ごく自然にこぼれ落ちる言葉に
    何の違和感もなく託しているのだろう。

    不自然も気負いも恣意もない
    ただ言葉にしたいだけのこと。

    そこに特定のベクトルが あらかじめ
    用意されてからの言葉ではないので
    無色透明の清々しさがあるのだろう。

    だから 私たち読み手が
    そんな梨木さんの小説に心動くのは
    梨木さんの内面に感応するものが
    私たちの中に最初からあるからなのだと
    信じたい。

    そんな自分なら 好きでいられる。

    自然と生き物に触れる言葉は
    慈愛…と呼びたくなるような
    とびきりの優しさに守られて
    私の心にちゃんと届く。

    それが うれしい。

  • 筆者の観察力や見たものを綴る言葉のセンスが素晴らしかった。

  • このエッセイが掲載されたのが2007年から2009年。
    10年近くの月日が経って読むエッセイ集なのに古臭さが無い内容でした。
    しかし、すべてが新しく新鮮というわけでなく、「変わらないもの」と「変わった(変わってしまった)もの」があり、「変わらないもの」は「変わらないもの」として、生き方のちょっとした参考になったり、日々引っかかっていた小さな事柄とからんで賛同できたり、「変わったもの」もただ古いわけじゃない感覚があったりと、劇的な何かがある内容じゃないけれど、穏やかな気分になれる一冊でした。
    植物の話や日常の風景(愛犬との共闘は笑ってしまった……)、虫や動物の生態・本能、人としての在り方・考え方が、自分には無い視点で時々怖くも感じるけど、ついつい読んでしまう魅力があります。

  • いつもの著者らしい、自然への敬意を丁寧な表現で紡いでいる静かな本。

    この方らしさなのだろうが、
    ちょくちょく政治的嗜好を物語に絡めるのは私は好きではない。


    せっかくの美しく、清らかで静かな自然のお話が一気に泥臭くなり、物語の透明感が失われる。

    せっかくの貴重な『静かな本』をしみじみ静かに味わいたいというのが本音。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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