こころと脳の対話 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252308

作品紹介・あらすじ

人間の不思議を、「心」と「脳」で考える-魂の専門家である碩学と脳科学の申し子が心を開いて語り合った3日間。京都の河合オフィスで茂木氏は自ら箱庭を作り、臨床心理学者はその意味を読む…箱庭を囲みながら、夢と無意識、シンクロニシティとは何かなどをめぐって、話は深く科学と人生の問題に及んでいった。「河合隼雄」という存在の面白さが縦横に展開する貴重な対話集。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、とっても興味深かった。短い本なのに気になる要素がたくさん詰まってる。難しいけど比較的わかりやすくて書かれているし。
    気になった箇所をいくつかピックアップ。それぞれ時間をかけて考えてみたい。

    ・シンクロニシティ
    外のものと外のものがシンクロするのではなく、自分の無意識と外のものが呼応する。

    ・関係性も生命現象が重要。
    不登校の生徒の例。行動が切れたのではなく、関係性が切れた。

    ・普通の話をして帰ったのに、ものすごく疲れている時は病状が深い。関係性をもつのに苦労するから。

    ・脳科学が進むことと、心がわかることとは違う。

    ・割り切れなかった方を科学することが足りてない

    ・答えをすぐに求めがち。

    ・カウンセリングで重要なのは「中心を外さず」にいること。

    ・夢の話も面白かった。意識・無意識を整理するための夢。夢=現実はありえない。

  • 二人の科学者の対談集 精神は関係性、精神病の人、統合失調症の人などの治療を、アメリカでは他との関係性を考えず、独立したケースとして考えるが、周囲との関係性を考えて直す、というのが河合さんのやり方のよう。箱庭つくりの話が興味深かった。私もやってみたい。

  • 2005年から2006年にかけて、3回にわたって臨床心理学者河合隼雄と脳科学者茂木健一郎が行った対談の本。易しい語り口で、知的刺激に富んだやり取りがなされる。

    茂木が河合に心理療法とはどういうものか尋ねている。

    普通の近代科学が分析し、「明らかにする」「分かる」ことを目指しているのに対して、心理療法では、クライアントが「治っていく」ことが目標で、そこではセラピストとの人間関係が重要であると言っている。

    で、河合は何をするかというと、何もしない。「相手の苦しみを正面から受け止める」、「中心を外さずに」・・・これが難しい・・・相手の話をただ聞き、相づちをうつ。

    この相づちが、達人のそれで、タクシーに乗ると運転手が身の上話を始めて、どんどん話が進んで、道を間違えたことが何度もあるぐらいの、絶妙な相づちなのです。

    あと茂木が実際に箱庭を作ったりする。

    読み易いお薦めの一冊です。

  • ・その人は一生懸命話をされるし、こっちも一生懸命聞いて、それでもその人が話しだすとどうしても僕が眠くなる、という人がいたんです(笑)。疲れていたら眠くなるのは当たり前だけど、疲れてないしね、僕、一生懸命仕事してるのに。
    で、とうとう、「もう本当に申し訳ないんだけれど、あなたの話しを聞いていると僕は眠くなってしまう。なにか思い当りますか」といったんです。そしたら、「わかります」といわれた。「いちばん大事なことをいっていません」って。

    ・「私が部屋に入ってきたとき、先生は、私の顔にも服装にも、全然関心を示されなかった」
    というのは、ものすごく美人ですから、服もきれいなのを着ておられるんだけれど、その服も見てないし、顔も見てない。おそらく、二日後に道で会っても絶対わからないだろうと思うぐらい、なにも見ておられなかった、と。
    「ああ、そうですか」
    「それだけじゃありません。先生は私の話しの内容に、全然、注意しておられませんでした」(笑)
    「僕、何をしてましたか」
    「何をしておられたかというのは、すごくむずかしいんだけれども、あえていうなら、もし人間に『魂』というものがあるとしたら、そこだけ見ておられました」
    …それが、僕がいまいっている、僕がやりたがってることなんですよ。その人を本当に動かしている根本の「魂」―これと僕は勝負している。だから、そぉっと聞いてないとだめなんですよ。言葉で、ワーッと動いていったりしないで。また、相手の言葉に動かされてもいけない。

  • 臨床心理学の大家と脳科学者の対話。
    箱庭療法という手法がある、というのがまず新鮮な驚き。
    茂木さんが実際に河合さんの前で箱庭をやっている場面は興味がわく。
    また、脳科学の研究が進む=心のことがわかる、ではない、と河合さんが強調しているところ、そのほうが自然に感じる。
    うつ病等を脳科学で治せると、以前とある人から聞いたことがあるが、その時は説明できない違和感を感じたので、そのへんをもう少し詳しく知りたい。
    河合さんが亡くなってしまったので、実現しなかった茂木さんの継続的な箱庭つくり、また、箱庭を見たり、クライアントの話を聞いているときの河合さんの脳の動きを観察する、等々、面白そうな話が実現できなかったことが残念だ、という河合さんの御子息の解説に大いに同感。

  • 河合隼雄の柔らかい人柄と茂木健一郎のリベラルな性格がにじみ出た対話。最も興味深かったのは次の2点。

    ①シンクロニシティ
    シンクロニシティとはユングが提唱した概念で「共時性」と訳される。自分の無意識と外界がシンクロすること。
    今の時代、知らず知らずのうちに、自然科学的な因果則でものを見ていることが多い。しかし、人との出会い、本との出会いなどは、この因果則では説明しきれないことが多い。これを説明するのがシンクロニシティだ。

    ②中心をはずさない
    河合隼雄がカウンセリングのとき心がけているのは、「中心をはずさない」こと。言い換えれば、「魂をはずさない」ということ。相手の言動ではなく、魂の叫びにじっと耳を傾けるということ。

  • 臨床心理学者/故河合隼雄氏と脳科学者/茂木健一郎氏の貴重な対談の記録。
    脳の研究がどんなに進んでも、心を解明できるわけではない。再現性・普遍性を求める科学の限界は、科学が見落としてきた関係性と生命現象が鍵という。
    夢に近い無意識の状態を意図的に作り出し、心の世界に迫ろうとする箱庭は、心理療法でも使われる常套手段。
    凝り固まった思考パターンを超え、可能性を引き出す方法として注目されている。最近、ワークショップで箱庭的手法が使われるのも納得。
    科学では解明できない事柄にさまざまなヒントを与えてくれる宝庫のような作品。

  • 潮出版社 を読みました。
    https://booklog.jp/item/1/4267017999

  • 相手をわかるためには、職業・性格・学歴などのプロファイリングに引きずられずに、「魂」を見るべし。分析するのではなく、「中心ははずさずに」ただそこにいて見ていれば良い。

    人間の不思議を「心」と「脳」で考えるという深いテーマのお話です。基礎知識がない自分にはちょっと理解が難しい部分が多かったですが、少し勉強したら再読してみたいです。

  • 達人の自慢話にも聞こえなくはないが、そこまで語らせる茂木さんもすごいな。
    中心を外さない。
    達人って実際にいるんだな。

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