増補版 僕はしゃべるためにここ(被災地)へ来た (新潮文庫 か 75-1)
- 新潮社 (2016年2月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101202914
作品紹介・あらすじ
2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災発生。翌日から笠井の現地取材ははじまった。目の前で発見されるご遺体と泣き崩れるご家族。どう言葉をかけたらよいのかわからなかった。「水がない」と訴える方の声を聞きながら、取材車に積んである水を目の前の方たちに配るべきか悩んだ。報道人としての葛藤や失敗、今も続く被災者との交流を綴った、渾身の震災ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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TVには映らなかった、映せなかった
そんな現場のこと、取材記者の本音が
吐露されていた。
目的をかなり強く認識できていないと、
大災害の現場など冷静には取材できないのだと
知った。
何度も何度も葛藤していた様子が
ひしひしと伝わってきた。
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笠井さんの取材に対する思いや、被災地に対する思いが綴られた渾身の1冊です。被災者にはもちろん葛藤がたくさんあったことが書かれたうえで、報道者としての葛藤がたくさんあったことが綴られていて胸が苦しくなる場面もありました。PTSDに悩むことがあったり、いろんなバッシングを受けながらも遠方に住むわたしたちに被災地の実態をいつも伝えていてくれたのだなあ、と思いました。震災のことはつい忘れがちだけど、復興のためにも忘れてはいけないなと思いました。いつか東北を訪れたいと思います。
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第1章 僕は何のためにここへ来たのか 震災発生!報道人は“食べて”はいけない
第2章 72時間超!報道人は“乗せて”はいけない
第3章 1週間!報道人は“泣いて”はいけない
第4章 東北人と関西人
第5章 被災地で出会った忘れられない人たち
第6章 2カ月…3カ月…そして半年
第7章 あの日から5年―
著者:笠井信輔(1963-、世田谷区、アナウンサー) -
当時、本書にある取材の様子を一部見ており、強烈な記憶があった。氏が本書を出していたのは知らなかったが、文庫化で増補されていたため即入手。生生しい記述から、当時の報道の様子がわかる。
一方、こんなものではないだろうという思いももった。諸事情があるのは無論わかるが、分厚くてもよいから取材例や個人的感情、考えをもっと吐露していただきたい。
取材か救出のフォローか、という視点での記述には考えさせられた。問答無用で救出ではないか?と思ってしまう。ここは理解が今1つできない。また当時、似たような映像をどの局もひたすら流し続けたことへの懐疑や、局間を超えた統一報道システムの構築など、氏が構想されているであろうことも記述いただきたい。あるはずである。 -
あの日から5年。東日本大震災に関連した本となると手に取らずにはいられず、読んでみたのだが…
読んでいて、タレント・アナウンサーによる軽いノリのノンフィクションであることに気付き、嫌気がした。確かに報道する側としての矛盾を感じながらの被災地入りという状況も分からぬでもないのだが、どうにも被災地の状況を軽く受け止め、まるで被災者に対するマスコミの失礼な行動を肯定しているかのように感じた。被災地の真実に触れながらも、所詮はマスコミのエゴと保身だけが、強く印象に残る。