ふたつめの庭 (新潮文庫 お 93-1)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 220
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101201818

作品紹介・あらすじ

保育園に〈平穏な一日〉なんてありません! 25歳の保育士・美南は、次々と起きる不思議な事件にふりまわされる日々。妻と娘が姿を消したと園児の父親が駆け込んできたり、園内に不審な足跡を見つけたり。解決のヒントは、えっ、絵本のなか!? 謎を解くべく奔走するうち、男手ひとつで園児・旬太を育てる隆平に心惹かれて……。大人も子どもも一緒に大きくなる、恋と謎と成長の物語。

感想・レビュー・書評

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  • この本も5年くらい前にモリちゃんから無造作に10冊まとめてポイっともらった本のうちの一冊。
    この表紙の絵じゃ、書店で見かけてもきっと読もうと思わない。人からもらったからこそ出会えた本。

    著者は大崎梢さん。最近読んだ「クローバー・レイン」がとても良かった。

    25歳の保育士・美南が仕事や奮闘する日常を描く。お仕事小説でもあり、いちおう謎解きの要素もあるのかな。

    美南は、園児の旬太を男手ひとつで育てる隆平に惹かれていく。不倫にはならないにしても園児の親を好きになるなんていけない恋だな、結末はどうなるのかな?
    とハラハラドキドキしつつ、楽しく読みました。

    園児にとって保育園は家の庭についで「ふたつめの庭」。
    そういえば、うちの娘はそうとう保育園に育ててもらったな、とタイトルを見て思いました。

    エッセンシャル・ワーカーとして、コロナ禍でもがんばっている。
    保育士さんたちに改めて感謝!

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      あの、先日からモリちゃんが気になって仕方ありません(笑)
      たけさん

      あの、先日からモリちゃんが気になって仕方ありません(笑)
      2021/05/08
    • たけさん
      naonaonao16gさん。

      モリちゃんは元同僚の飲み友達で、たぶん家庭菜園の野菜のお裾分けをしたら、読み終えた文庫本をドンとくれたんだ...
      naonaonao16gさん。

      モリちゃんは元同僚の飲み友達で、たぶん家庭菜園の野菜のお裾分けをしたら、読み終えた文庫本をドンとくれたんだと思います。

      選書に僕の好みは全く考慮されていないと思われますが、なかなか新鮮な出会いができました。もらった時は放っておいたので5年越しではありますが(笑)
      2021/05/08
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      家庭菜園してるんですね!
      モリちゃんいいですね、なぜだかわたしも会ってみたくなりました(爆)

      頂いた本はなかなか手放せないです...
      たけさん

      家庭菜園してるんですね!
      モリちゃんいいですね、なぜだかわたしも会ってみたくなりました(爆)

      頂いた本はなかなか手放せないですよね。読むことができてよかったですね^^
      2021/05/08
  • 瑞々しく描かれる、保育士の主人公・美南の日常と子供たちや保護者とのふれあいと謎、そして恋。少しこそばゆいところもあるけれど、穏やかで優しく爽やかな読後感に包まれる小説。
    表紙の絵になんとなく惹かれ、手に取った作品でしたが、表紙から受けたイメージ通りの作品でした。

    かえで保育園で働く25歳の保育士・美南の周りで起こる様々なトラブル。それを一緒になって考えてくれるのは、1年と数ヶ月前に離婚し、男手ひとつで息子を育てる隆平。日常の謎系のミステリ要素を含みつつ、徐々に美南と隆平の関係性の変化が描かれていく連作長編です。

    子供たちの描き方、大人たちの描き方、それぞれのバランスがとても良かった。様々な親の事情がある中で子供たちの心も揺れる。それが謎の引き金になっていくわけですが、謎が解けていくと共に、子供たちの複雑な心情が浮かび上がってくる。

    印象的なのが第5話に収録されている「青い星の夜」
    母親の大事な指輪を保育園に無断で持ってきてなくしてしまった女の子の話なのですが、指輪の行方と共になぜこの女の子が、指輪を持ち出したのか。その動機がまた暖かくていい。

    話の内容を詳しく見ていくと、結構ドロドロしそうな展開になりそうなものが多いです。片親であるがゆえの孤独や、親の人間関係が話の背景にある話も多いし、隆平の周りの女性関係も、隆平に好意を抱く、シングルマザーがいたり、元奥さんが出てきて、
    その二人がバチバチに火花を散らし、そのせいで隆平の息子の旬太が動揺したりと、下手するとシリアスでドロドロの展開にもなりかねない。

    また美南も他の男性に好意を寄せられるのですが、その男もなかなかにくせ者。その男も話を引っかき回すから、なおのことドロドロ感がでてきそうになる。

    それでも、作品は軽やかにそのドロドロに陥りそうになるラインからは、ギリギリで踏みとどまっているように感じます。それでいて、そうした親の人間関係に動揺してしまう子供たちの様子はしっかりと描いていて、それが物語にいいアクセントや緊張感を生む。
    それがあるからこそ、その壁を越えたときの優しく、爽やかな読後感がより強まる。そこの描き方のバランス感覚が本当に上手かったと思います。

    大人たちだって迷い、不安になりながらも生きている。それはこの作品で何度も描かれていたと思います。でも、それを拭い去ってくれるのも、子供の言葉だったり行動だったりする。そういう暖かさも印象的。

    隆平のキャラも良かった。離婚する前までは特に子育てに熱心だった様子でもなく、保育園の先生たちも、なぜ母親が引き取らなかったのか、と疑問に思う人も多かったそう。
    でも美南とともに子供たちのために頭を使い、また、息子の旬太とのやりとりもとても優しさに満ちあふれていて、読んでいて好感が持てる。
    そして、彼が旬太を育てる決心をつけた理由が語られる場面も、とても良かった。やっぱり子供は、見るところはちゃんと見れるものなんだろうな、と思います。

    そして、美南の心情も見逃せない。業務上保護者の親にあまり近づきすぎてはならない、でも一方で心惹かれていく。そういう状況で、ママ友のライバルや元奥さんが出てきたり、別の男性に言い寄られたり、隆平が熱を出せば、自分は何も出来ない状況にもどかしさを感じたりと、揺れる心情が瑞々しく丁寧に描かれます。

    著者の大崎梢さんは元々名前は知っていたけど、今回が初読。物語であったり登場人物に対する暖かさや優しさが印象的で、他の作品もまた読みたくなりました。
    表紙のイラストは谷川史子さん。こちらは名前は初めて知ったけど、少女マンガや恋愛マンガを中心に作品を多数発表されているみたいなので、こちらもいずれ手に取ってみたい。

    気になる作家とマンガ家が同時に増える、個人的にお得な一冊になりました。

  • 25歳の保育士、美南。
    保育所を舞台にしたライトミステリー。
    25歳の保育士、美南。
    その一生懸命さ、園児の父に惹かれる姿も微笑ましい。
    さらさらと読めました。

  • 中堅どころの保育士さんが主人公。
    当然、舞台の中心は保育園である。

    一応「事件」が起きて、その解決をしていくので、
    ミステリにカテゴライズしてみましたが...
    「お仕事小説」でもあり「恋愛小説」の側面も。

    言ってしまうとハッピーエンドで、予定調和的だが、
    登場人物に素直に感情移入できて
    一緒にハラハラドキドキしつつ、最後まで一気読み。
    これがこの作者の「筆力」というものでしょう(^ ^

    子どもたちとの時間を丁寧に描写してるのが◎。
    基本、朝晩しか接点のない保護者たちも、
    とても「リアルな人間」として描かれていて、
    それぞれに抱えている事情もとてもありがちで。

    本当に上質な連続ドラマを通して見たような、
    そんな読後感の短編集(^ ^
    小さなお子様のいる方に、特にオススメかな(^ ^

  • とある保育園を舞台にした、保育士・美南が園児と保護者と関係者との間で揺れ動く日常の物語。
    大崎梢さんは、ミステリーで知られた作家さんですが、さまざまな物語を生み出しております。
    全部、読破しておりませんが、気になったものを読んでいます。

    今回の「ふたつめの庭」はミステリーとは違いますが、保育園での謎めいた出来事を解決している様子は、ミステリーテイストがありました。

    保育士と保護者との関係も、プライベートな部分まで踏み込み過ぎてはいけないとか、さまざまな親子関係もあるとか、知らない世界を教えてもらったような気がします。
    何よりも、文体が心地よく、すーっと入ってくる。
    語りかけるように、優しい。
    読後感が良かったです。

  • 何ともけなげな主人公たち。前半の謎解き主体の時のほうがほんわか読んでいられる。絵本にキーが隠れているのもいいチョイスだと思う。

  • 巣立つもの、最後まで手の中に残るもの、いずれも今きちんと大事にしていければ、と思わせてくれます。

  • エゴだとしても相手に通じて欲しいと願ってしまう。
    そしてそのことをほかの人に認めて欲しいと思う。
    どうしても相手が応えてくれることで安心することが出来る。
    それは家族だからこそ。
    マイナスの面がそのままプラスへと転じる。
    自分の努力以上にその垣根を越えてきてくれるのが家族だと思う。
    美南と隆平は家族になれると思う。

  • 思ったのと違った、っていうのが率直な感想かな。もう少し、子供に焦点を当ててるかなって思っていたので。読み始めたら、全然違いました。
    でも、グイグイ世界に引き込まれるし、主人公の恋も惹きつけられるし、一緒にモヤモヤしたりドキドキしたり、すごく読んでいて楽しかったです。
    ただ、もうちょっと子供たちのことを読みたかったなと思う気持ちもあるので星は4で。
    また機会があったら、大崎さんの本を手に取ってみようと思いました。

  • ほんわかした日常の謎系ミステリも含むお仕事小説……ではなく、大崎梢のいつもの絵本を絡めた小説。恋愛要素多めに入れてみましたという感じ。
    絵本好きには「ああ、これ知っている」「この話好き」と楽しめるのではないかと思える。

    ただ、ラストのまとめ方がおざなりすぎて納得いかない。
    子どもと相談して……と『日曜の童話』にあったのだから、美南と隆平のラストにもそうすべきと思うのだけど。
    ミステリでないにしても、これは伏線だと思って読んでいる身としては、単なる話の流れで出しただけというのは納得いかない。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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