雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 159
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101199276

作品紹介・あらすじ

浅草は田原町で小さな古着屋を営む喜十は、北町奉行所隠密廻り同心の上遠野(かとの)のお勤めの手助けで、東奔西走の毎日。店先に捨てられていた赤ん坊の捨吉を養子にして一年、喜十の前に、捨吉のきょうだいが姿を現した。上遠野は四人の子どもも引き取ってしまえと無茶を言うが……。日々の暮らしの些細なことに、人生のほんとうが見えてくる。はらり涙の、心やすらぐ連作人情捕物帳六編。

感想・レビュー・書評

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  • どこで購入したか記憶していない…シリーズ2冊目だが、一冊目を持っているワケでもない。大好きな宇江佐真理の作品なので手にしたのだと思う。古手屋(古着屋)に同心が手先的な事をやらせている。その事件(?)簿的な短編集。とにかく宇江佐真理のストーリーテリングっぷりが素晴らし過ぎて、あっという間に江戸の生活が立ち上がり、連れて行かれる。古手屋の喜十は正義感などでこの仕事をしている訳では無い、駄賃も無くて嫌々だ。でも、心根が真っ当だから、見て見ぬふりが出来ない…という感じ。始めの一作で宇江佐真理の作品だったと思わされる。父親が亡くなり、母親一人で5人の子供を育てている貧乏長屋の親子。貝を剥いて具にして売ってカツカツの生活、14の長男が蜆を取って、売って助けている。14と言ったら今で言えば中学生だ、寺子屋で勉強出来ると言われていたが、父親が亡くなり、行けていない。現代の話かと思う。親の稼ぎが子の教育格差に繋がるわけだ。母親は12才の長女を吉原に売り飛ばし、更に末っ子の乳飲み子を捨ててくるように長男に言いつける。長男は歯を食いしばって、なるべく良いお家にと、浅草の喜十の家にたどり着く。しかし…すぐ下の弟を連れて様子見に行った事から母親に知れ、たかろうとする母親を手にかけてしまう。やり切れない筋だ。そして、川に身を投げる…、この後誰かが助けに…とか、運良くナントカ…と続きそうだが、そこは宇江佐真理だ。容赦ない、と言うかウソがない。彼は土左衛門となって発見される。リアルでシビアだ。江戸であれ、現代であれきっとどこかで起きていそうで本当に悲しくなる。彼の見た最後の景色が美しい星空で美しいと思えたのが救いだ。そこは決してクローズアップされることは無いのが宇江佐真理の本で、そこが本当にたまらない。この後に続く短編では少しづつ喜十が引き取った捨て子が大きくなり、絡んでくるのが面白い。そして、この子の生き別れた兄姉にも続いていく。同心は決して悪い人ではないが「こすっからい」ままだ。続きが読みたいシリーズだが、それもままならない。それが本当にやり切れない。

  • ちょうど物語が盛り上がりを見せたところなのに・・・。

    未来永劫続篇が出ないのかと思うと、なんとも寂しい。

    天国で続篇執筆してくれないでしょうか、宇江佐センセ。
    アレコレ続きが気になる作品がありやす。
    あっちからメールかFAXかなんかで原稿ビャーっと送ったりなんかして。

  • 同名の舞台を観たことがあったから手にとりました。
    が、違った…。
    それでも読み進めていくうちに面白くなり一気に読めました。
    江戸の庶民?の人情ある暮らしが描写されてていいですね。
    これ、作者が亡くなりもう続きが読めないんですね。残念。

  • このシリーズ、髪結い伊三次シリーズくらいエエ伸び方しそうなんだけどなぁ。キャラクターもたってるし、古着屋って舞台設定も応用の幅がありそうだし…。

    でも、これが最終巻。実に哀しい。

  • 浅草で小さな古着屋を営む喜十。店先に捨てられた赤子を養子にすることになり、新しい家族で新たな春夏秋冬の一年を過ごすことになる。ほんとうの人生が見えてくる連作人情シリーズの第二弾。
    昨年11月に亡くなった作者のシリーズ物の一作。残念ながら続きを知ることは出来ないが、恐らくレギュラーメンバーが増えて、賑やかで楽しいシリーズになったことだろう。宇江佐さんの作品は常に人間の『心のなかの鬼』をテーマにしている。本作のなかでも背筋が凍るようなエピソードがある。単純な人間讃歌でない人情ものが、もう新作がないと思うと寂しく感じる。

  • 著者自身としては、このシリーズ、まだまだ続けたい意向だったろう。
    しかし、最終話『再びの秋』の最終行、「冬の季節にも拘らず、喜十の気持ちは存外、温かく満たされていた。」などを読むと、これで完結かのような終わり方。
    著者は、予感していたのでは・・・邪推かな。合掌。

  •  古手屋喜十もの第二作。第一作でひょんなことから喜十おそで夫婦の養子になった捨吉の素性が明らかになる初編から離散した兄弟姉妹の行方をたどる最終編へと物語が展開する。うわべは計算高く情がないように見えて、その実困難に巻き込まれた人たちをほおっておけず、首を突っ込んでしまう喜十の屈折した性格がここへきてうまく描かれている。隠密回り同心上遠野も実は似た性格で喜十にとっては同族嫌悪のようでいながら妙にウマが合うところもおかしい。登場人物たちが生き生きと動き出し、魅力的な物語世界が展開しそうなだけに、ここへきての幕引きは再三惜しまれてならない。

  • 201605/優しいだけじゃなく、時にはハッとするほど容赦ない結末だったりするのも宇江佐さんのすごさ。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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