兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦 (新潮文庫 す 10-5)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101190150

作品紹介・あらすじ

津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた! 自らの家族の安否も確認できないままでの救助活動、遺体と向き合う苛烈な日々……。そして非常事態に陥った福島第一原発では、世界が注視する中、全国からさまざまな部隊が召集されていた。自衛隊を追い続けた著者二十年の歳月が生み出した緊迫と感動のノンフィクション。兵士シリーズの最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 父は自衛官でした。私は今”フクシマ”に住んでいます。大きな災害の時は、たとえ自宅が被災していようと父は家にいませんでした。
    この本はかなりきれい事としてかっこよく書いてはいますが、おそらく事実として当時はこのとおりだったのだろうと思います。本来の任務は戦争での人殺しのはずの軍隊ですが、災害派遣とは「これ以上揺るぎなく正々堂々としていて誰からもうしろ指をさされることのない目的」であり「現場に立ったとき隊員たちは自衛官としての日頃の慎みと寡黙を打ち捨てるかのようにここぞとばかり人命救助という任務遂行に邁進」したのでしょう。
    ですが宮城や岩手はそのとおりでも、原発が爆発し放射能がばらまかれた福島の原発立地自治体の町々には軍隊である自衛隊ですら入り込めず、核専門部隊が原発対応を行うだけで、通常の自衛隊員による地域住民の救助活動は一切行われませんでした。原発のリスクを放置した東京電力と政府、経済産業省によって数多くの被災者全員が見殺しにされました。生きていた人たちも、福島県選出の議員が国会で言っていたように東電職員の家族だけはいち早く逃げ出しましたが、東電職員の家族以外の地域住民も自らの家族の救助はできませんでした。
    地震と津波は天災ですが原発の爆発は人災です。東日本大震災以降、戦後、自民党や官僚がついてきた嘘や悪事が次々と暴かれ、この国を全く信じられなくなりました。
    能登半島地震では東日本大震災などの教訓は全く生かされず、被災直後の72時間は陸路がだめなら海からでも空からでも大規模に人員を投入し救助を行うべきところを、新年会に浮かれたバカな自民党政府に邪魔され、犠牲者、被害者は増えたのではないでしょうか。
    国に対する不信感はこの13年間、今でもどんどん募るばかりです。

  • 何度も涙が出て来そうになった。
    自衛隊員の方々の『覚悟』には本当に頭が下がります。
    皆様のお陰で今もなんとか平穏に過ごせている日常に感謝致します。本当にありがとうございます!

  • 自衛隊個々人にまで教育された国のためという姿勢には頭が下がる。死体の収容の箇所などは涙なしには読めないし、鬼気迫る現場の凄まじさには読む手が止まることも。
    しかしその中でも略奪が起きていた事実には人の汚い部分に暗澹とした。
    原発で活動されていた隊員は訓練により、または防護服により安全に守られていたことが知れてそれは本当に心から安堵した。それだけ読めただけで良かった。
    有川浩の答え合わせ何様なんだろ

  • ほんまに、こんな風な気持ちで活動してくれとるんかと思うと、頭が上がらへん。しかも、それやのに感謝されることにそれでも葛藤しとるってのは、なんて報われへんことなんやろう。ほんまに。

  • 東日本大震災の時に実際に被災しつつも救助活動等にあたった隊員への取材結果をまとめた本。

    その他、普通に隊員に取材した結果をまとめた本もシリーズ化されている。
    彼らの「普段の生活」を知るには良いかも。

    「軍隊またはその他の実力組織」というのは何十万人、何百万人で構成される「自己完結型組織」だから、ある意味「運用要領がマニュアル化されている社会そのもの」なところがあって、それについての知識を得るというのは、ミリタリー関係なしに面白い。

  • 東日本大震災発生時とその後における、主に東北の自衛隊員の働きを追った記述。ありがとうございました。

  • 本当にお疲れ様でした

  • その存在の是非を常に問われてきた組織の中で、最前線に立って「戦う」人たちのノンフィクション。
    彼らの戦いは奪うことでなく救うことで、であればこそ未曾有の大災害の中、危険を省みず救命にあたった自衛隊の皆さんには本当に頭が下がる。
    彼らの仕事が「奪う」ことに変わらないよう願うばかりです。

  • 抑制された筆致が余計に津波の凄絶さを物語る。あまりにも凄惨すぎて何度か本を閉じた。果敢に救助活動に立ち向かうも、そこに存在するのは遺体累々。過酷過ぎる現場で幾度も嗚咽しながらも、これ以上傷まぬよう、細心に遺体を運ぶ自衛隊員。

    ひとりの自衛隊員が呟く。
    ◉「来るか来ないかわからない<いつか>のために備えている。その<いつか>が今日遭っても明日遭ってもいいように」
    ◉「自衛官は活躍しないまま退官することが一番いいんです」

    震災から5年。あの衝撃や記憶が薄れていく中、今日も明日も「有事」に備え、激しい訓練に励む自衛隊員がいる。どうか、その訓練が徒労に終わることを祈るのみ。

  • 自衛隊員に地道な取材活動している著者ならではの、自衛隊員が新聞報道されていない個々の活躍を描いたノンフィクション作品。
    安易な自衛隊批判の反証材料や大規模震災の描写資料としても価値がある作品。

    圧巻なのは、通勤途上の自衛隊員達が津波に罹災しながら、生命の危機にある救助を要する人達へのリミットである72時間を意識し、出せうる限りの救助活動をする描写は、感動させる。

    また、福島原発へ決死の冷却作業を冷静沈着な陸上自衛隊員の姿には、日頃の鍛錬や準備の重要性に気づかせてくれる。

    この作品を読んで思ったのは、
    将来、政治判断ミスで、国益がない国際紛争に巻き込まれ、自衛隊員を殉死させるのは、国家の重大な損失になるだろう。
    彼らは、最期の切り札として温存すべきであり、国民として愛すべき公務員であると断言しても言い過ぎではないと思います。

    時系列が分かりづらかったぐらいが難点で、何も言うことなしのノンフィクション。
    過去に、自衛隊批判した大作家殿って誰?と思わず調べたくなります。

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著者プロフィール

1952年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、

読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に

新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興

亡』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション

賞を受賞。1996年、『兵士に聞け』(小学館文

庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』

『兵士を追え』(共に小学館文庫)『兵士は起つ

 自衛隊史上最大の作戦』(扶桑社新書)と続く

「兵士シリーズ」を刊行。7作目『兵士に聞け 

最終章』(新潮文庫)で一旦完結。その後、2019

年より月刊『MAMOR』で、「兵士シリーズ令和

伝 女性自衛官たち」の連載を開始。ほかに小説

『汐留川』『言問橋』(共に文藝春秋)、『デルタ

 陸自「影」の兵士たち』(新潮社)、

『OKI囚われの国』(扶桑社)など著書多数。

「2022年 『私は自衛官 九つの彼女たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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