塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101181509

感想・レビュー・書評

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  • 引退したら…
    数か月間イタリアに滞在するのが密かな夢である
    (大変厚かましいがイタリアは妙にしっくりくるのだ)
    そしてその時までに「ローマ人の物語」を完読したい!
    なーんて思っていたが、とてもとても全巻読める気がしない…
    15年もの歳月をかけ、塩野七生氏が手掛けた壮大な書籍だ
    実家の本棚にも何冊か氏の本が並んでいる
    それぞれ各1~2冊しかない…
    父の挫折が目に見える(笑)
    私自身も塩野氏とはあまり相性がよろしくないので父を笑うことはできないけれど

    そんな中に紛れていたこの1冊
    「ローマ人の物語を100倍楽しく読むために」とある
    8割以上がカラー、そして写真の多いこと
    いいですねぇ
    トロイ戦役の勇者アエネアス(アイネイアス)の末裔
    ロムルスとレムスの双子の兄弟
    彼らがテヴェレ河に流され、母狼が乳を与え救った
    とローマの起源からはじまる…
    有名どころカエサルやオクタビアヌスはもちろん、ローマの衰退までローマの歴史がざっとわかる

    でもねぇ
    やっぱり歴史って人物を深追いすることで理解が深まる部分が多いんじゃないかなぁ
    そうなるとね、これだけじゃやはり物足りないわけですよ
    なのでやはりいつかは「ローマ人の物語」を読んでみたいなぁと思ってしまったわけでして…
    (そそられてしまった…)
    さてそんな日が来るのかはわかりませんが
    そんな曖昧な気持ちを胸に抱くのも悪くない
    読み切ったら何か自分の中で変わる気さえする


    他にも…いちいち各人の彫像があるので視覚的に覚えやすい
    ローマ人名言録もあるし、コラムも満載、各有名どころローマ人の紹介
    そしてローマ街並みの画像はもちろん、美術館の紹介、イタリア以外の遺跡や痕跡も紹介されており
    とにかく写真が豊富で楽しい!(モリモリ満載である)

    これはまさに「ローマ人の物語」を読み切った方へのご褒美ですね
    読んでいないので恐縮しながら…もしっかり楽しめた

    「ローマ人の物語」
    いつか…ね

  • 『ローマ人の物語』文庫本全43巻を読み終わり、最後にこのガイドブックを読んでみた。一気に総集編を見る思いで感慨深い。
    遺跡の写真があるのが素晴らしい。頭の中で今までのストーリーが蘇ってきて、現実のものとして、生き生きと動き出す。
    紀元前753年から紀元568年まで、1300年以上にもなる長い話だった。
    ローマ時代と現代とは、技術は進歩したかもしれないが、”人間”自体はなんら進歩していないことを痛感する。また、技術は進歩したとは言っても、いまだ、水道などのインフラあるいは教育施設も充分ではない国があることを思えば、1000年前におけるローマ世界は驚異的だ。
    そういうシステムを作り上げたローマ人の気質、そして、そのローマの興隆と衰退について、現代人も大いに学ぶべきだ。
    しかし、これだけの話を書いた塩野七生はすごいものだ。
    ローマの遺跡巡り、いつか少しずつしてみたいな。

  • 以前「ローマ人の物語」を読もうと試みたけど挫折。その後もイタリアに対する興味が薄れず、いつか読もうと思っていたところガイドブックなるものがあることを知り読みました。
    漠然としたイメージしか出来なかったローマ史でしたが、概要を掴むことができました。ただしローマ史研究の専門家からは批評もあるようで、歴史小説として捉え、筆者の見解に偏ることなく「ローマ人の物語」を楽しめれば良いのでしょう。
    とは言え、ここまでの大作を書きローマ史を身近に感じられ、現代の日本の政治や生活を考察するきっかけにもなる良書をまとめた著者の熱意に脱帽です。
    著書インタビューもとても興味深く読めました。

  • 「すべての道はローマに通ず」この言葉が象徴するようにローマ帝国は常に軍事と向かいあっており、帝国を拡張するためのひとつのネットワークであった。

  • カラー写真が充実した「ローマ人の物語」愛読者のための地中海世界ガイドブック。

  • 1. 全巻を通じて考えたこと
    全15巻(文庫本にして全43巻)を読みながら考えていたのは以下のようなことだ。

    (1)作者塩野七生の姿勢
    人を理解しようとする姿勢。
    特に歴史的決断とも言うべき重要な決断を、人の精神構造にまで遡って理解しようとする姿勢。
    人間を理解しよう、理解し得ると考える姿勢が、古代の人々の決断を現代人でも理解させてくれる。

    (2)皇帝というポジション
    皇帝という責任重き、激務ポジションを理解させてくれる。
    歴史上大バッテンを付けられているカリグラやネロにしても、良い点は正当に評価する。
    皇帝の責務は内外の安全保障と食糧の確保にあった。
    そのため当初は文武両道の者が皇帝となるシステムが出来上がっていた。
    そのキャリア•パスが軍人と文民に分断されたことが、帝国の崩壊の一要因となった。

    (3)帝政の積極評価
    共和制=善、帝政=悪というマルクス主義的ステレオタイプの歴史評価を覆す。
    帝政が成立して機能したからこそ、400年にも渉る平和(パクス•ロマーナ)が達成できたことを積極的に評価する。

    (4)帝政への移行の必然性
    ローマの侵略による領土拡大は、共和制政治の限界、寡頭制=元老院制の機能不全を露呈させた。
    それを理解し、解決策を構想したカエサルは、独裁制=帝政に舵を切ろうとする。
    帝政に対する元老院の拒否反応からカエサルが暗殺されたことを踏まえて、カエサルの後継者オクタヴィアヌスは、表向きは元老院制、実質は帝政というフィクションとしての共和制(実は帝政)を生み出し、ローマ帝国を建国してみせる。

    (5)皇帝たちの再評価
    <暴君>の代名詞となったネロは、実は<明君>だった。有能な助言者を失ったことから多くの失政を重ねたことは事実だが、<暴君>という評価は、初めてキリスト教徒を弾圧した皇帝として、後のキリスト教社会が付与した評価だったのだ。それを間に受ける現代人に、塩野は正当なる評価を要求する。
    キリスト教、マルクス主義世界観によるバイアスを極力排して、<どれだけ国民を幸福にしたか>の尺度だけを徹底的に使用する塩野は、多くの悪名高き皇帝たちを再評価してみせた。

    (6)一神教という異物(または、信仰と寛容さ)
    ユダヤ教という<一神教>は、多民族を寛容という精神で統合したローマ帝国にとって躓きの石だった。
    ユダヤ教よりも更に一神教の普遍化(精神のみならず世俗世界の支配)を推し進めたキリスト教が帝国の各地に蔓延していくことで、帝国は白蟻に食われた建築のように内部から崩壊していく。
    ローマ帝国はキリスト教の支配を受け入れることで、根幹思想の<寛容さ>を失っていく。
    キリスト教を支配の手段として採用して自己絶対化を図った(神に選ばれし皇帝)コンスタンティヌス以降、皇帝はキリスト教の軍門に下り、皇帝は牧人である司祭に支配される羊と化した。
    ローマ帝国のキリスト教公認、国教化の意味をこれだけで辛辣に描いたのは本書が初めてだろう。
    <カノッサの屈辱>の淵源は、ローマ帝国にあったのだ。
    キリスト教の不思議さは、異教よりも異端を許容しないことだ。
    異端は同じキリスト教ではないかと思うが、少しでも差異があると、その存在そのものを決して許さない、<不寛容>を発揮させる。
    カトリックの異端排斥は、寛容のかけらもない。
    そして、遂には異教をも許さなくなった帝国では、古代からのギリシアとローマの神々も、つまりギリシア•ローマ文化は徹底的に破壊される。
    こうして、1000年に及ぶ、ヨーロッパ中世世界が生まれたのだ。

    (7)権力に溺れたり女たち
    塩野七生は自身が女性だからか、女性政治家への評価は厳しい。
    権力な溺れた女たちは必ず自滅していくことを辛辣に描く。

    (8) 暗殺される皇帝たち
    最初に暗殺された皇帝は、幼少期、軍団の兵隊たちに愛された第3代皇帝カリグラだった。
    第四代クラウディウス帝も、妃であるアグリッピーナ(ネロの娘)に暗殺されたという噂がある。
    それが事実であれば、ローマ帝国はその初期に、三代、四代と二代続けて暗殺されたことになる。
    キリスト教徒が<暴君>とレッテルを貼った五代ネロは自殺に追い込まれ、カエサル=オクタヴィアヌス系統の王朝は、ここで途絶えることになる。
    軍人皇帝時代に入ると、目まぐるしく皇帝が暗殺されていき、そのほとんどの名を我々は知りもしない。
    何故、多くの皇帝暗殺が発生したのか?
    それは、終身独裁の皇帝を置き換えるためには、暗殺というテロより他に手段がなかったからだ。

    (9) インフラの重要性
    ローマ帝国の維持にはインフラの整備が不可欠だった。
    道路網、水道網、川の浚渫、軍団基地の建設維持、港湾の整備維持に関してこの本ではかなりの紙幅を割いている。その整備を行なったのは、帝国という国家だけではないことが重要だ。
    帝国、地方、個人の三者が分担して、整備•維持を行ったことに、ローマ帝国の特徴がある。

    (10)蛮族の侵入の意味
    リメスが崩壊して、蛮族の侵入を止められなくなった時、巨大帝国は崩壊する。
    帝国の後期は、蛮族であったゲルマン民族がローマ軍団の主軸を務めるようになり、蛮族同士の戦いという様相を強めていく。
    そこに蛮族中の蛮族、ゲルマン民族も震え上がるフン族が登場して、長らく維持してきたリメスは一気に崩壊する。
    キリスト教の支配という要因がなければ、<パクス•ロマーナ>に次ぐ<パクス•ゲルマニカ>の時代があり得たかも知れない。
    <パクス•ブリタニカ>も<パクス•アメリカーナ>も存在しない現在、<帝国>の存在意義が問われる。

    2. 帝国とは
    古代ローマの歴史は、<共和制>時代が善で、<帝国>時代が悪という史観が根強く存在した。
    その史観を無視して、帝国に住む人々にとって善政であったのかどうかという尺度でローマの歴史を描いたのが、この<ローマの物語>だ。
    その意味で本書は、ローマ<帝国>に対する新たな視点による評価を行った作品であると言える。
    帝国=悪、皇帝=酒池肉林、という思い込みは完全に粉砕された。
    その<帝国>という思想を生み出したカエサルの偉大さ、<帝国>の安全保障と食料確保に粉骨砕身した<皇帝>たちの涙ぐましい努力に、襟を正される思いがした。

    <帝国>と、<帝国主義>は、違うということだ。
    帝国主義の国家が覇権を争った時代は、実は<帝国>無き時代だったのだ。
    <帝国主義>には、生き残りをかけた弱肉強食思想と、勝ち組•負け組を齎す<新自由主義>という名の不自由しか存在しない。

    一方、古代ローマ<帝国>はどうだろうか?
    ローマ帝国というヘゲモニーが確立されているが、征服されて帝国の一員となった地域には、その後地域•民族固有の文化•言語のみならず、固有の支配体制まで残しているのだ。

    帝国主義時代はどうであったか?
    帝国主義時代に征服された植民地は、文化•言語が否定され、帝国主義国家との<同化>が求められた。
    これを以ても、ローマ<帝国>と、<帝国主義>国家が真逆の存在であったことが分かるだろう。
    日韓問題の解き難い問題は、日本の<帝国主義>思想とその後行動に淵源していることは間違いない。
    大日本<帝国>とは、ローマ<帝国>とは180度違った場所にある<帝国主義>国家だったのだ。

    帝国主義がもたらした戦争は、<帝国>思想を復活させた。
    第一次世界大戦の反省を踏まえて作られた<国際連盟>(League of Nations)は、カント思想に基づいて、<帝国>思想の復活を目指して設立された。
    しかし、提唱者であるアメリカが参加せず、運営は個人のノブリス•オブリージュ(貴族に要請される義務)に委ねられた組織が機能する筈もない。
    第二次世界大戦という惨禍を踏まえて<国際連合>が設立されだが、これも常任理事国のロシアがウクライナに侵攻することで、存続そのものが問われる状況になっている。
    第三次世界大戦という核による破局を経験しなければ、<世界共和国>は生まれないのだろうか?
    若しくは、<世界共和国>とは、人類学滅亡するまで見続ける見果てぬ夢なのであろうか?

    <ローマ人の物語>を通じて考えさせられたのは、<世界共和国>と呼ぶべきローマ<帝国>がかつて存在し、400年にもわたって平和(パクス)を、維持してきたという事実だ。
    それぞれのかけがえのない文化•言語を尊重しながら、平和的共存の出来る社会を築き、維持したローマ人の知恵を、我々が学び直す意味はそこにある。
    塩野七海の問題意識もそこにあったのだと思う。

    以下の巻に感想メモを記した。

    I巻  ローマは一日にして成らず 
    VI巻 パクスロマーナ 
    24巻 賢帝の世紀(上)
    26巻 賢帝の世紀(下)
    36巻 最後の努力(中)
    40巻 キリストの勝利(下)
    42巻 ローマ世界の終焉(中)
    43巻 ローマ世界の終焉(下)
    ローマ人の物語スペシャルガイドブック

  • 紀伊國屋書店で購入。

  • 本編読み終える前にこちら読んでしまったけど、短期に全体像抑えたから本編読むのもイメージはっきりして楽しめそう。
    いろんな現実的なことに頭が占領されてて本に集中して読めない時だったこともあって、このガイドブックは写真がたくさんあって、旅行しているような気軽気分で、ちょっとの合間時間に読むのも楽しかった。

  • 2021年12月24日 夫からのプレゼント。

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