十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181448

作品紹介・あらすじ

ローマ帝国が滅亡し、「暗黒」と呼ぶ者さえいる中世──。カトリ ック教会は、イエスが受難した聖地であるにもかかわらず、長くイスラム教徒の支配下にあるイェルサレムを奪還すべく、「十字軍」結成を提唱する。これに呼応した七人の諸侯たちは、それぞれの思惑を抱え、時に激しく対立しながら異国の地を進むのだが……。中世最大の事件、現代まで残響とどろく真相に迫る、歴史大作の開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 塩野七生先生の本を読んでみたいと思いつつ、ローマ人の物語は長大過ぎて手を出せず、こちらをまず読んでみることにしました。
    高校では世界史選択だったにも関わらず、十字軍と言えば「十字を背負って苦労する」という1096年の語呂合わせと、教皇の呼びかけに応じて始まったもので何回かに分かれて行われた。この2点しか把握してなかった私ですが、そんな私でも面白く読めました。

    結局のところは戦争が行われた訳で罪もなき死ななくても良かった人たちがたくさん殺されたのですが、宗教という旗の下に何年かかるか、そもそも成功するかも分からない行軍に出た諸侯たちのパワーに圧倒されました。最初は耳慣れない名前が多くて読み進めるのに四苦八苦しましたがメモに誰が何をした人かまとめてからは読みやすかったです。

    塩野先生の文才なのでしょうが諸侯の一人ひとりが個性豊かに書かれていて惹きつけられます。わたしの贔屓は、自分の責務を淡々とこなしていくゴドフロアと、年齢そのままのキレやすいタンクレディです。ただ最初の頃は鼻についていたサン・ジルでさえも最後の方は憎めなく思えてくるので先生の書き方には圧倒されます。

    第一次十字軍は奇襲に近く、キリスト教側も勢いのあった時代の頃のことなので、この先2巻以降どのように話が進んで行くのか歴史自体は知っているにしても気になります。

  • イスラム教徒の支配下にあるエルサレムを奪還すべく結成された十字軍の活躍を描く。一人一人の登場人物を生き生きと描き、当時の雰囲気までも伝わって来る。

  • 1095年のフランス・クレルモン公会議の場において、ロ-マ法王ウルバン二世の「神がそれを望んでおられる」の大義名分の掛け声により、イスラム教徒の支配下にあるイエス受難の地イェルサレムを奪還すべく中世ヨーロッパの各地に領土をもつ諸侯や騎士たちが団結し(時には仲間割れをしながら)、シリア、パレスティ-ナの地に打ち出した第一次十字軍の華々しい歴史を追った歴史長編小説の開幕篇。

  • 塩野氏のするどい視点が、時の権力者の愚かさを暴いていく

  • 十字軍第一世代、キャラがたっておもしれえ!
    しかし、聖職者と騎士と商人では三位一体とは成れない。よって、この十字軍諸国の寿命は・・・

  •  神がそれを望んでおられる。

     後世で悪名高き十字軍、キリスト教によるイスラム教への宗教戦争とは何だったのか。
     11世紀ヨーロッパは東ローマ帝国、西ローマ帝国に分かれ、それぞれギリシア正教、カトリックと内紛を起こしていた。
     西ローマ帝国皇帝ハインリヒ4世のカノッサの屈辱から、ローマを追われたローマ法王グレゴリウス7世の後任、法王ウルバン2世は自らの権威を示すため、キリスト教の共通的を作り出す。

     聖地イェルサレムを解放せよ。

     この言葉に共鳴したキリスト教徒は十字軍編成を待たずしてオリエントへと旅立ち、そして斃れていった。
     その後構成された第一次十字軍はわずか5年弱で地中海沿岸にイェルサレムを中心とした十字軍国家を設立する。

     それが残虐であったにせよ、第一次十字軍にはキリスト教側には英雄が誕生し、イスラム教側に傑出した人物がいなかったことが勝敗を分けた。
     そして、イスラム教側にとっては、十字軍は単なるキリスト教側の領土拡大の争いだとしか認識していなかったことも災いした。
     領土拡大とあれば、領主同士は決して連携しなかったのだ。

     第一次十字軍、聖地を目指して戦いを挑んだ第一世代の英雄たちの物語。

  • 突出した主人公が描かれるのではなく、多くのキャラクターが多彩に生き生き描かれている。その中でもやはり、イェルサレムの初代王になったボードワンの懐の大きさと、若き英雄タンクレディの活躍が目を引く。塩野さんに「チンピラ」「十字軍のチンピラ」と何度も書かれているが、チンピラも成長する、すごい。塩野さんの筆には、ボードワンとタンクレディへの愛があふれている。
    殺戮と破壊の嵐ではある。戦争なのだから当たり前なのかもしれないが勝った方のやることが苛烈。
    まえがきで著者が投げかけているテーマが気になる。今後読み進めると明らかになっていくのか、ぜひ続きを読む予定。
    1.200年続いた十字軍時代で勝ったのはイスラム側であり敗れたのはキリスト教側なのに、なぜその後からは両者の立場は逆転したのか。なぜ最終的な勝者はキリスト教側になったのか。
    2.十三世紀当時にはイスラムとキリスト教の間で解決できたいわゆる「パレスティーナ問題」が、なぜ七百年が過ぎた現代のイスラムとユダヤの間では解決できないのか。

  • ローマ帝国が滅亡し、暗黒と呼ぶ者さえいる中世、カトリック協会は、イエスが受難した聖地にもかかわらず、長くイスラム教徒の支配下にあるイェルサレムを奪還すべく、十字軍結成を提唱した。
    今のエルサレムをどう考えるか。

  • 2019/5/4読了
    令和になって、最初に読んだ本であった。
    十字軍は、聖都エルサレム奪還を目的とした、武力を伴う巡礼という扱いだったとの事。とは言え、200年くらいの十字軍の歴史の中で、エルサレムに近付けもしなかった事(第2次)もあれば、お付きの枢機卿がエルサレム再復のチャンスをブチ壊したり(第5次)、フリードリッヒ2世が外交交渉のみでエルサレム再復した(第6次)のを一切認めず、ルイ9世を送り込んでブチ壊したり(第7次)――そもそも、戦争はロクでもない事だが、神の名を借りて行われると、更にロクでもない事になるのだな、と思わざるを得ない。

  • 1000年も前の人達の考え方を、現代の私が「なるほど」と理解できること。時代だけでなく遠い異国の地で、自分と全く違う社会を生きた人々だけれど、同じ人間であるという繋がりを感じた。そして、人間の思考というものはどの時代であってもそんなに変わらないんだな、とも。
    彼らの動き、策略、性格に至るまでをここまで途切れる事なくみっちり調べ上げた著者は間違いなく素晴らしい。まるで小説を読んでいるかのように情景が頭に浮かんできた。

    ノートの赤字を無理矢理頭に叩き込むより、その時人がこうやって生きていたんだと噛み締めた方がスッと入ってくるし面白い。暗記に苦戦し謎の語呂合わせを唱えていた過去の自分に読ませたい。

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