死ぬことと見つけたり(上) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174181

作品紹介・あらすじ

常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求波と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。

感想・レビュー・書評

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  • ジャンプに『花の慶次』が連載されていた頃、原作は『一夢庵風流記』だと知って読んでみたのが、作者・隆慶一郎さんとの出会い。
    胸の中に爽やかな風が吹き抜けるような読後感に、もう痺れた。
    こんなに面白い本がこの世にあったのに、どうして読まずに生きて来れたんだろうと、本気でそう思った。今また、同じ思いに浸っている。

    タイトルの意味するところは、ご存じ『葉隠』の一節。
    江戸時代の中期(1716年頃)、肥前の国佐賀鍋島藩の藩士・山本常朝が口述した武士としての心得をまとめたもの。ところがこの一節のために戦時中悪用されて、まるで死をやみくもに美化して、率先して死ぬことを奨励する書であるかのような誤解を受けていたらしい。
    ところが隆さんはその『葉隠』を、戦地に赴くのにこっそり持参したのだ。
    それも、『葉隠』の中身をくりぬいてランボーの詩集を隠すために!
    詩集などという「軟派」な読み物は見つかれば撤収されてしまうからと必死で考え抜いた策だったらしいが、まるで中学生がエッチ本を隠すかのようで、この序章だけで笑ってしまう。

    そして活字に飢えた状況の中で初めて『葉隠』を読み、その面白さに目覚めていく。
    まるで『レ・ミゼラブル』を読むように何度も何度も読んでは、その面白さを確認したという。
    曰く、『葉隠』が面白くてはいけないのか?

    この前置きがあって、本編の面白さが生きる。
    隆さんの描く登場人物たちの、なんとまあ魅力的なこと。
    奔放苛烈な「いくさ人」なのだが、しばしば世間の価値観とのズレを生じ、そこは思わずニヤつくツボ。
    昭和62年8月号から平成元年8月号までの「小説新潮」に連載されていた作品たちを一冊にまとめたのがこの本で、中途で隆さんが急逝されたため未完に終わっているが、そんなことはまるで気にならない。
    「血沸き肉躍る」という古い表現を、久々に思い出した。
    前田慶次と、こちらの斎藤杢之助と、一体どちらが強いんだろう?
    ああふたりの決戦の場面を見たかった・・と、アホなことをぼんやり考えている・笑
    スタートは島原の乱からである。以下、下巻に。

  • 葉隠武士道を貫く杢之助らの生き方が粋で清々しい気持ちになる。
    随所にマネジメントの至言も散りばめられ、思わず唸る...。10数年前に読んだ時には気づけなかったことが多々あり、読み返す価値を改めて実感。
    さあ下巻に参ろう。

  • とあるレビューに共感して読んだが、想像をはるかに超える衝撃的時代小説だった。
    人物はみな個性的で、特に主役の三人がいい。陰湿なのに、笑ってしまうほど爽快で豪快な話の数々。こんな堂々とした主人公、今まで見たことがない。
    『葉隠』は書かれた当初あまり流行らなかったらしいから、実際鍋島藩士がこうだったのか謎な上、個人的に史実重視の小説が好みというのに、これはエンターテイメントとしてとっても面白く楽しく読めた。
    未完なのが非常に悔やまれる。最後まで読みたかったなー。

  • 死を畏れぬ心の鍛錬とは、人を一体どこに辿り着かせるのか。葉隠が教える生き様。死が恐ろしくないならば、人は自暴自棄に生きてしまわないものか。そこに眠る信念を歴史小説が解き明かす。清々しく気持ちの良い、痛快な物語だ。それでいて葉隠の真髄が随所に散りばめられる傑作。今まで読んだ事が無かった事、本作を手に取った邂逅を嬉しく思う。

    何より、作者の原体験。死は必定。戦時中の回想から始まるのである。徴兵検査を受けさせられ、兵役を課せられることになった作者は、その当時アルチュール・ランボーと中原中也が愛読書だった。ランボー作『地獄の季節』をどうしても戦場に持っていきたかった。考え抜いたあげく戦場でも許される『葉隠』をくりぬいて『地獄の季節』を持っていく。活字に飢え、だから、出会った。

    毎朝、自分の死を思い描いてから1日を始めるという習慣。死を畏れぬ事と自棄になる事は違う。読みながら、自らを顧みて学ぶ。

  • 感想などは下巻にて。

  • 太平洋戦争で徴兵された若者が、ランボオの詩集を持ち込みたくて「葉隠」の中に潜ませて行く。活字に飢え、やむなく葉隠を読み出して、その魅力に引き込まれ、独自の解釈を展開していく。ここから時代は江戸初期に移る。鍋島藩(現在の佐賀)の葉隠武士3人衆が、藩のため、主君のために躍動する。その生き方は、武士の本分そのままであり、常に自分は死人(しびと)として生に執着せず、故に立場にも金にも執着しない。義や孝に反するものは許さないが、それが主君であっても、不法を諌めて切腹を賜るのが最上とするもの。なんとも爽やかで潔い生き方。家族も友人も、吉原の顔役すら、皆彼らに惹かれる。まっすぐなだけに、命懸けで付き従うものも多いが、敵も多く、常に命のやり取りをする。一見、付いていけない奇人ばかりだが、三人の中にややまともな者があって読者としても理解しやすいバランスになっている。著者の急逝により、未完となっているのが残念だが、読後感すっきり。

  • 既に死人が故にできること、無駄に生にこだわるからできないこと。
    杢之助の現代にも通じる生き様に感服。

  • 下巻が届くのが楽しみ。司馬遼太郎の『峠』に近い興奮度。

  • 感想は下巻で。

  • 読了

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