新々百人一首〈上〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.85
  • (7)
  • (3)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 56
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101169095

作品紹介・あらすじ

王朝和歌の絢爛たる世界が蘇る!藤原定家の「小倉百人一首」、源義尚の「新百人一首」に続き、丸谷才一が新たに編んだ「新々百人一首」。定家と義尚が選んだ二百人を敬遠せず、かつ両人の取った二百首との重複は避けて厳選した百首と、それに付された滋味溢れる長短繁簡とりどりの注釈は、王朝和歌の楽しみを存分に与えてくれる。上巻は、「春」「夏」「秋」「冬」の部を収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あれ、『新・百人一首』を読み飛ばしちゃったのかな?と思ったら、それはは、足利義尚(室町幕府第9代将軍)撰による私撰和歌集のタイトルなんで、「新々」としたそう。うんうん。この調子で語り倒すと、むしろ上下2巻に収まるのかが心配ですー。

  • 雪のうちに春はきにけり 
    うぐいすの氷れる泪いまやとくらむ
                       二条后

    新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくご愛顧いただきたいと心から思っております。読者の皆さんにも元気な一年でありますようにお祈り申し上げて「週刊読書案内」2019年版を始めたいと思います。


    さて、今年はちょっと格調高く和歌からスタート。

    快晴の初日の出の便りがフェイスブックとかで届いた2019年の元旦ですが、雪の正月の歌です。高校生に案内を渡していたころから年の初めはこの歌。まあ、好きだからしようがありません。

    作家の丸谷才一が数々の名著を残して、この世を去ってもう何年たったのでしょう。過去の人なんていって忘れ去られるのは何といっても惜しい人。この案内では、今後、最多登場回数を記録するに違いない人ですが、今年の始まりは「新新百人一首(上・下)」(新潮文庫)。そのはじまりの三首目にのせられている二条の后の和歌です。

    二条の后といえば、高校時代の古典の教科書に出てきたに違いない「伊勢物語・芥川」で鬼に食われてしまった、あの女性のモデルということで名前ぐらいはみなさんご存知のことでしょうが、この女性、若い頃は平安朝きっての色好み在原業平との艶聞が世間を残してにぎわし(?)やがて伝説化され、その後、清和天皇の女御として入内し、陽成天皇の母となった人。ところが清和帝亡き後、善裕という坊さんとこともあろうに密通して后位を剥奪されるという波乱の生涯をおくった人で、その名を藤原高子、「たかいこ」と読むそうです。

    まぁこんなコトも丸谷さんのこの本にはみんな書いてあることなのですが。

    ところで、お正月といえば「百人一首」。中学校や、今では小学校でも「三学期にはカルタ会」が恒例行事になってきているようですが、ご家庭で「百人一首」をなさるなんてことはあるのでしょうか。

    江戸時代に始まった遊びらしいのですが、普通「百人一首」といえば「新古今和歌集」の選者のひとりで平安朝屈指の歌人、藤原定家が選んだもので彼の住まいの呼び名を取って「小倉百人一首」というのですが、今回案内しているのは「新新百人一首」。

    本書の前書きによれば、百人一首のような形式のオムニバス詩集は定家のものに限らないらしく、たとえば室町幕府九代将軍足利義尚による「新百人一首」というのもあるそうです。

    しかし、知名度と大衆的人気において問題にならないらしく、なによりもその後800年にわたる文化的影響力を考えると、やっぱり「小倉百人一首」しかないようなものなのだそうです。その向こうを張って現代の小説家丸谷才一が選んだのが「新新百人一首」。

    「新新」とついているのは、「藤原定家」と「足利義尚」とに敬意を払ってのことであるらしいのですが、万葉の歌人から平安末期・鎌倉の歌人までを対象とした王朝和歌秀歌集であるところは「小倉百人一首」と同じ体裁になっています。

    当然かさなる歌人は多いのですが、同じ和歌は多分ありません。日本文学史を独特の視点から書き直した文芸批評家としての自信と遊び心のなせる技でしょうね。

    この本のよさは一首ごとにつけられた詳細な解説。≪オモシロ国文学講義≫とでも言うべき綿密さで、これこそ読みどころですね。エッセイの達人の洒脱な文体で読み物として書かれている文章なので、どなたがお読みになっても、大丈夫だと思います。

    僕のように和歌なんて知らない、「源氏物語」は眠くなるという古典文学音痴にとっては、実に勉強になる本なのですが、欠点は、お調子者が読むと妙にわけしりの気分になって、やたら薀蓄を傾けたくなることですね。

    「うぐいすの泪ってわかる?うぐいすは鳴くでしょ、だから泪ということになるのが和歌的想像力なの。」

    「じゃア、泣かない魚を相手にして芭蕉にこういう句がありますね。」

    行く春や鳥啼き魚の目は泪

    「彼はこの句を詠んで奥の細道に出発したらしいけど、その句はどこがしゃれてるかわかりますか?」

     なんて調子で、際限がなくなる。もちろん本書に其の解説はありますから、「えっ?」と思われた方は、本書のほうでどうぞ。

     ところで、本家「小倉百人一首」について書かれた解説は、江戸の歌人の解説書から謎ときまで山のようにあります。

     その中でオススメは田辺聖子「田辺聖子の小倉百人一首」(角川文庫)。「かもかのおっちゃん」に講義している名調子の文体で、笑いながら読めます。しかし、内容は超一流、且つ、用意周到。彼女は古典文学の名ガイドのお一人、まだお元気だと思いますが、

    「なにっ?かもかのおっちゃんをご存じない?」

     そりゃ、こまった。(S)

  • 図書館で借りたものの、元々古文は不得手なこともあり、遅々として読み進まず。そうこうしているうちに返却期限になってしまったので、一度返却することに。春の部・平忠度までは読了。
    続きは借り直すのではなく、買ってじっくり腰を据えて読んだ方がいいかな、と思い始めています。電子版があるとよいのだが。

  • 9夜

  • 愁やくだる秋の夕ぐれ @千夜千冊 by 松岡 正剛

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

大正14年8月27日、山形県生まれ。昭和25年東京大学文学部英文学科卒。作家。日本芸術院会員。大学卒業後、昭和40年まで國學院大學に勤務。小説・評論・随筆・翻訳・対談と幅広く活躍。43年芥川賞を、47年谷崎賞を、49年谷崎賞・読売文学賞を、60年野間文芸賞を、63年川端賞を、平成3年インデペンデント外国文学賞を受賞するなど受賞多数。平成23年、文化勲章受章。著書に『笹まくら』(昭41 河出書房)『丸谷才一批評集』全6巻(平7〜8 文藝春秋)『耀く日の宮』(平15 講談社)『持ち重りする薔薇の花』(平24 新潮社)など。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

丸谷才一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×