獅子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156897

作品紹介・あらすじ

真田幸村の兄にして、“信濃の獅子”と謳われた真田信之。松代藩に善政を敷いた老雄は、九十歳を超えすでに隠居していたが、当主を譲った息子の突然の死をきっかけに、家督相続に頭を悩ませることに。その内紛に乗じ、“下馬将軍”と呼ばれた老中、酒井忠清は隠密を使い陰謀をめぐらすが、信之には藩を守るための秘策があった――。巨編『真田太平記』の後日譚にあたる、爽快なる傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 真田太平記の後日談なのにこれを書いてから真田太平記に取り掛かってたのか…

    確か右近のエピソードの辺りに真田太平記との齟齬を感じたような気はするけど、真田太平記最終巻と同じく信之の大活躍のエピソード。

    まず90歳超えたからと隠居して半年でマジかよ案件続出って言う、「後3日で定年退職する刑事が大きな事件に巻き込まれる」スキームみたいな事がまず興味をひくよね。

    若い恋を微笑ましく見守るのもこっちまでニタニタしてくるし、密書の処分も豪気。

    そして、最後は文章ではあるが、色や匂いを感じさせるラストで読後感を爽やかにしてくれる。

  • 2016年の大河ドラマ、真田もの放送中に間に合った。
    ニュースで「2016年の大河ドラマの人物は真田幸村」と聞いたときには
    「幸村は大坂の陣の瞬間芸だし今までも映像化されてるし、脚本家三谷さんも主演俳優堺さんでも信之の方が合ってそうじゃないか。後半生は家を守って、ラストでバレたら取潰されるかもしれないのに石田三成からの手紙を隠し持ち続けた手紙出せば面白いじゃないかい」などと思ったけれど、幕府との知略戦や藩主物語、そして93歳のおじいちゃんによるお家騒動収束物語ではやっぱり見る人少ないかな?(笑)

    真田信之のドラマは「真田太平記」で渡哲也さん、「真田丸」では大泉洋さんが演じていますが、寿命に触れた場面は信之長寿を分かった上で書いてるんだろうか思ったり。
     渡さん(亡くなった正妻に)「ワシが行くまでもうしばらく待っておれ」
      ⇒あと40年くらい先ですね。
     大泉さん(老いても矍鑠たる親族に)「100歳まで生きられる者などいるものか」
      ⇒あなた100近くまで生きるじゃないですか。
     大泉さん(波乱の人生を愚痴り)「いつになったら私にも安らぎが訪れるのか…」
      ⇒まだ50年くらいは大変ですね。

    ★★★

    松代十万石の元藩主真田信之は信濃の黄斑(コウハン。虎のこと)と呼ばれた真田昌幸の嫡男。
    徳川に逆らった父昌幸と弟幸村の死後、幕府に睨まれながら真田の家を守り続けていた。

    すでに将軍は四代目の家綱の時代。
    戦国を知る唯一の大名で「天下の名物」と言われた信之も93歳。家督を次男の信政に譲り隠居生活に入っていた。

    しかしある日藩主信政が死んだという知らせが入る。
    信政の次の藩主の候補は二人。
    まずは信之の次男筋の孫、信政唯一の男児右衛門佐(ウエモンノスケ)。1歳になったばかりの庶子、しかもその出生をまだ幕府に届けられていなかった。
    そして信之の長男筋の孫の信利。すでに真田分家沼田の城主で、将軍家綱の老中酒井忠清を舅としているが、享楽を好み領主としては性格に難がある。

    幕府に睨まれている真田家に家騒動が起これば取潰しの危険もある。

    老いたりと言えでも信濃の獅子と言われる信之は幕府を相手に最後の知略を尽くす。

    ★★★

    93歳と85歳の70年に渡る主従関係、数代に渡って入り込ませる忍びの暗躍、相手を揺さぶる諜報戦、領主の心得、名君とは、家臣と領民に全幅の信頼を寄せられる信之の存在感。

    そして信之の見る夢、60年も前に分かれた父昌幸の「信之の血は冷えておる」という言葉。

    まあこの小説のあともまだまだ信之の孫たちは騒動を起こすわけですが、「そこまではもはや我らに面倒が見きれぬことよ」

    • 淳水堂さん
      コメントありがとうございます!

      大河放送中によみおわりました。(^^)

      信之さんは登場人物ほぼ全員より長生きして、自分の息子より...
      コメントありがとうございます!

      大河放送中によみおわりました。(^^)

      信之さんは登場人物ほぼ全員より長生きして、自分の息子より長生きして、まだ生まれていない将軍の代まで現役で、ってすごいのか大変過ぎるのか…。
      大河は大坂の陣で、終わりましたが、妻の弟(忠勝息子)討死、実弟敵将として討死、幕府に内通疑われ、ってまだまだこれからが大変じゃないですか!

      2016/12/29
    • よぴ吉さん
      淳水堂さん,はじめまして。
      いつもこっそり読ませていただいています。

      信之が主人公の小説があったのですね。
      大河ドラマにはどっぷり...
      淳水堂さん,はじめまして。
      いつもこっそり読ませていただいています。

      信之が主人公の小説があったのですね。
      大河ドラマにはどっぷりはまっていたので,
      脳内で大泉洋さんを思いうかべながら読んでみたいと思います。
      2017/01/01
    • 淳水堂さん
      よぴ吉さん

      コメントありがとうございます!
      私も他の方の登録で知り、放送中に読みました!

      池波正太郎は他にも真田ものが長編では...
      よぴ吉さん

      コメントありがとうございます!
      私も他の方の登録で知り、放送中に読みました!

      池波正太郎は他にも真田ものが長編では真田太平記、短編もいくつかあるようなので、大河の記憶があるうちに読んでいこうかなと思っています。(^^)
      2017/01/01
  • これが30年前に読んだ「真田太平記」の前に書かれたものと知って驚かされた。
    古臭さは全くなく、大往生した真田信之の晩年を楽しく感じられた。
    最大の謎として、信之が関ヶ原で昌幸、幸村と袂を分かったのは、この本では、従来のお家存続を考え、親子、兄弟でコンセンサスをとっていたという説に反して、あくまで信之の冷徹な判断によるものという点。信憑性のある古文書でも見つからないかぎり、謎は解決しないが、池波正太郎の話にも納得。

  • 「真田太平記」の後日譚…とのあらすじを読んで思わず購入。長く読んできたシリーズだからこそ、信之の最期にグッとくる。と、しみじみしていたら、なんとこちらの方が書かれたのは先だとか。これもまた面白いところです。
    派手な戦ではなくても、命懸けの戦いは続いていく。信之派(?)としては、老いた姿もまた格好良くて、「真田太平記」のその後の彼を見れて嬉しかった。

  • 真田太平記は老後の楽しみにとってあります。

  • 真田信之の信州松代十万石の家督相続をめぐる騒動を描く。徳川家康に仕え、信之の血は冷えていると、別れた父や兄から言われた信之。
    冷静で、時代を見る目に優れ、たしかに見た目だけでは熱い武将ではなかった。しかし、この小説をよみ、わかったことは、表面的にどうであれ、智略をつくし、とことん生き抜く真田な熱い漢であることには、かわりはなかった。

  • 『真田太平記』後、齢九十の真田信之。
    信之最後の、幕府との闘い。
    決して、信之の血は冷えていなかった。
    信之の中には、熱い血が滾っていた。
    これで、『真田太平記』の真の終わりを迎える。

  • 真田信之というのは真田家の面々からいうと、一般人から見ると地味めな印象だけど、そういうのを拾って読ませるのはさすがの大御所感。すらすら読めるし。
    でもってあっちゃこっちゃで内偵やら隠密やらで忙しい時代なんで、まぁ大変。最終的には地味に頑張ってる末端が責めを負うという、いつもの展開なわけで、でも好きになるのはやはり我らがサラリーマン、通じるものがあるのか。
    とは言えサクサク腹を切ろうという気持ちは理解できぬ。痛いし。おはるちゃんも、ねぇ、アンタ生きていれば良いこともきっとある、とかいう次元じゃない。

  • 真田昌幸、幸村親子没後、信之が幕府の陰惨な攻めから領国を、真田家を守り抜く。跳梁する隠密、宿直の若者の恋、複雑に絡む構図をわかりやすく展開する。信之を慕う農民の田植え唄、彦六の姿にも臭み無く爽やか。2020.3.7

  • 直木賞受賞の「錯乱」と同題材を扱う長編。

    「錯乱」は堀平五郎を主眼に置くが、こちらはタイトルの通り、信濃の獅子と謳われた真田信之が主人公である。

    90歳を過ぎて隠居の信之が家督相続における真田家の内紛に「むずかしいことじゃが、わしも、ちからを貸そう」の言葉に胸が熱くなる。

    また、分家使者中村主水と玉川左門のやりとりもスジを通す爽快感を覚える。

    信之の家臣や領民から慕われつつ、幕府をいなせる懐の深さが獅子と言われる所以なのだろうと感じた。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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